ティームの決断
沈黙が続いていた。
王龍の里長になるのか、それとも断るか。
ルパートとアリアは見守る事しか出来なかった。
全ては、ティームの判断。
彼が少しでも地位に興味があるなら、今この瞬間は紛れもないチャンスであろう。
ただし、その道を選んでしまえば仲間が消えてしまう。
そんな不安と消失感に駆られてしまう二人。
だが、その様子に気づいたのか、ティームはルパートとアリアの顔をちらりと見た。
瞳は、曇ることなく真っ直ぐであった。
「・・俺は里長にはならない。いや、なれない。」
答えをドルトンに伝える。
「まだ、旅が始まったばかりなんだ。それに、俺はこのパーティーでやらなければいけない事もある。」
そう言い終えると、ティームはドルトンの座っている方に向かい歩き始めた。
「無礼者!下がらんか!」
周りの取り巻きが里長に近づくティームを遮ろうとする。
「下がるのはお主らだ。」
言葉の圧に押されて取り巻きが下がり始める。
「小僧よ。」
里長の隣にいた黒い布で顔を隠した人間がティームに声をかけてくる。
上背で黒い毛皮のコートを羽織っている。
「マーレイン、お主も下がるのだ。」
「長、あなたは甘い。」
マーレインと呼ばれる男はドルトンの前に立つ。
その様子を見て立ち止まるティーム。
「お前は、外部の者だ。王龍の子に選ばれ、里長になれる権利を持っている。それを放棄すると言うならば容赦はせん。子龍をこちらによこすのだ。」
「・・分かってる、そんな気がしていた。」
ウズタマを一度見つめて再び歩き出す。
「ふむ・・。」
「長・・?」
里長が立ち上がりマーレインを通り越してティームの元へ歩き出す。
そうして、二人は対面し合った。
「短い時間だったけど、ありがとな。」
「キュル?」
「・・ウズタマの事を頼んだ。」
抱きかかえているウズタマを里長に引き渡そうとする。
その姿を静かに見つめる里長。
そして、ゆっくりと口を開く。
「・・その子は君の事を親だと思っている。」
「え?」
「親と子が別れるのは辛いものだ、里長の地位は別の者に引き継げばいい。生まれてきた子に直ぐ選ばせるなど無理があると思っていたのだ。」
周りが騒然とし始める。
「・・・。」
里長の発言をどう受け止めたのか、マーレインは沈黙を続けている。
「お、長!引継ぎは今後どうするのです!?」
「選ぶ方法など色々あるであろう。あとで考えればよい。」
「し、しかし!聖龍の伝承は!?」
「子が里の以外の人間を親として選んだのだ。その時点で意味は持たないであろう。」
周りの意見をバッサリと切っていく里長。
「ティーム!」
ルパートとアリアがティームの元に駆け寄ってくる。
「お前は断ると思ってた!いや、よかったよかった!」
「なんだ、その言い方は。俺は、ただ目的のために断っただけだ。」
「ミズキの件は、もういいだろ。ねちっこいぞ。」
「うるさい!」
「ティームくん、安心しました。」
「アリアさん!僕を心配してくれたんですね!僕があなたを置いていくわけがないのです!」
「はいはい。」
アリアの安堵に喜ぶティーム。
場が和み始めていく。
その様子をマーサが微笑ましく見ていた。
「・・クロノス・クロスの皆さん、遥々来てくれたのだ。ここに泊まっていくといい、食事も出しましょう。」
「え!?いいんですか!?」
「なにを言うか。あなた達は、王龍の子を救ってくれたのです。このくらいの待遇は当然。」
「そうだよ、是非ゆっくりしていきな。」
マーサが歩み寄ってくる。
「長がここまで言っているのも珍しいからね。」
満面の笑顔。
その表情を見てルパート一行はお互いの顔を見合い確認し合う。
「では、お言葉に甘えてお願いします。」
「うむ。マーサよ、お部屋に案内してあげなさい。」
「分かった、皆ついてきて。」
ルパート達は、里長のいる場所を後にする。
「時間があるんだ、里を案内しよう。繫華街に行ってみるか?」
「ぜひお願いしたいです。アリアさんとティームはどうする?」
「私も行きたいと思っていました。」
「俺は少し疲れた。部屋で休む事にする。な?」
「キュル!」
ティームの声に元気よく反応するウズタマ。
「なら、ルパートさんとアリアさんが来るのか・・よし、色々連れていってやるよ。」
「ありがとうございます、マーサさん。」
話しながら歩いていると客室の様な場所に辿り着いた。
「下の部屋は男子部屋。上は女子部屋だ。ここで自由にくつろいで構わない。」
「じゃあ、ありがたく休ませていただくとするか。」
疲れた、疲れたと言いながら奥の部屋へ入っていくティーム。
「じゃあ、二人とも必要な荷物を持ってくれ。」
「このままでいいよ、アリアさんは?」
「私もこのままで。」
「よし、じゃあ行くか!さっきのハウドラゴンがここにもいるから、彼らを使うぞ!」
「えっ!もしかして、ここの移動手段ってあいつらだけか!?」
「そうだ、飛龍が飛んでいたら色々と事故が起きやすくてな。地龍であるハウドラゴンに乗せてもらうのがいいんだ。」
「また、あの絶叫体験しないといけないのか・・。」
虚ろになるルパート。
こうなるのも無理はない。
彼はジェットコースターなど絶叫マシンが苦手なのだ。
故に、大きく動き回る龍に乗る事に躊躇いを隠し切れないでいる。
「また、ハウドラちゃんに乗れるんですね!嬉しいです!」
ドラゴンが大好きなアリアは、そんなルパートの心情など知らずに喜びを露にする。
勘弁してくれ・・そう思うルパートであった。
お読みいただき、ありがとうございました!
王龍の里はどうなっているのか、次の話もお楽しみに!
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