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ANZA-アンザ- 次元放浪者  作者: 有裏 杉
第一章 超大陸グラード編

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ティームの決断

沈黙が続いていた。

王龍の里長になるのか、それとも断るか。

ルパートとアリアは見守る事しか出来なかった。

全ては、ティームの判断。

彼が少しでも地位に興味があるなら、今この瞬間は紛れもないチャンスであろう。

ただし、その道を選んでしまえば仲間が消えてしまう。

そんな不安と消失感に駆られてしまう二人。

だが、その様子に気づいたのか、ティームはルパートとアリアの顔をちらりと見た。

瞳は、曇ることなく真っ直ぐであった。


「・・俺は里長にはならない。いや、なれない。」


答えをドルトンに伝える。


「まだ、旅が始まったばかりなんだ。それに、俺はこのパーティーでやらなければいけない事もある。」


そう言い終えると、ティームはドルトンの座っている方に向かい歩き始めた。


「無礼者!下がらんか!」


周りの取り巻きが里長に近づくティームを遮ろうとする。


「下がるのはお主らだ。」


言葉の圧に押されて取り巻きが下がり始める。


「小僧よ。」


里長の隣にいた黒い布で顔を隠した人間がティームに声をかけてくる。

上背で黒い毛皮のコートを羽織っている。


「マーレイン、お主も下がるのだ。」

「長、あなたは甘い。」


マーレインと呼ばれる男はドルトンの前に立つ。

その様子を見て立ち止まるティーム。


「お前は、外部の者だ。王龍の子に選ばれ、里長になれる権利を持っている。それを放棄すると言うならば容赦はせん。子龍をこちらによこすのだ。」

「・・分かってる、そんな気がしていた。」


ウズタマを一度見つめて再び歩き出す。


「ふむ・・。」

「長・・?」


里長が立ち上がりマーレインを通り越してティームの元へ歩き出す。

そうして、二人は対面し合った。


「短い時間だったけど、ありがとな。」

「キュル?」

「・・ウズタマの事を頼んだ。」


抱きかかえているウズタマを里長に引き渡そうとする。

その姿を静かに見つめる里長。

そして、ゆっくりと口を開く。


「・・その子は君の事を親だと思っている。」

「え?」

「親と子が別れるのは辛いものだ、里長の地位は別の者に引き継げばいい。生まれてきた子に直ぐ選ばせるなど無理があると思っていたのだ。」


周りが騒然とし始める。


「・・・。」


里長の発言をどう受け止めたのか、マーレインは沈黙を続けている。


「お、長!引継ぎは今後どうするのです!?」

「選ぶ方法など色々あるであろう。あとで考えればよい。」

「し、しかし!聖龍の伝承は!?」

「子が里の以外の人間を親として選んだのだ。その時点で意味は持たないであろう。」


周りの意見をバッサリと切っていく里長。


「ティーム!」


ルパートとアリアがティームの元に駆け寄ってくる。


「お前は断ると思ってた!いや、よかったよかった!」

「なんだ、その言い方は。俺は、ただ目的のために断っただけだ。」

「ミズキの件は、もういいだろ。ねちっこいぞ。」

「うるさい!」

「ティームくん、安心しました。」

「アリアさん!僕を心配してくれたんですね!僕があなたを置いていくわけがないのです!」

「はいはい。」


アリアの安堵に喜ぶティーム。

場が和み始めていく。

その様子をマーサが微笑ましく見ていた。


「・・クロノス・クロスの皆さん、遥々来てくれたのだ。ここに泊まっていくといい、食事も出しましょう。」

「え!?いいんですか!?」

「なにを言うか。あなた達は、王龍の子を救ってくれたのです。このくらいの待遇は当然。」

「そうだよ、是非ゆっくりしていきな。」


マーサが歩み寄ってくる。


「長がここまで言っているのも珍しいからね。」


満面の笑顔。

その表情を見てルパート一行はお互いの顔を見合い確認し合う。


「では、お言葉に甘えてお願いします。」

「うむ。マーサよ、お部屋に案内してあげなさい。」

「分かった、皆ついてきて。」


ルパート達は、里長のいる場所を後にする。


「時間があるんだ、里を案内しよう。繫華街に行ってみるか?」

「ぜひお願いしたいです。アリアさんとティームはどうする?」

「私も行きたいと思っていました。」

「俺は少し疲れた。部屋で休む事にする。な?」

「キュル!」


ティームの声に元気よく反応するウズタマ。


「なら、ルパートさんとアリアさんが来るのか・・よし、色々連れていってやるよ。」

「ありがとうございます、マーサさん。」


話しながら歩いていると客室の様な場所に辿り着いた。


「下の部屋は男子部屋。上は女子部屋だ。ここで自由にくつろいで構わない。」

「じゃあ、ありがたく休ませていただくとするか。」


疲れた、疲れたと言いながら奥の部屋へ入っていくティーム。


「じゃあ、二人とも必要な荷物を持ってくれ。」

「このままでいいよ、アリアさんは?」

「私もこのままで。」

「よし、じゃあ行くか!さっきのハウドラゴンがここにもいるから、彼らを使うぞ!」

「えっ!もしかして、ここの移動手段ってあいつらだけか!?」

「そうだ、飛龍が飛んでいたら色々と事故が起きやすくてな。地龍であるハウドラゴンに乗せてもらうのがいいんだ。」

「また、あの絶叫体験しないといけないのか・・。」


虚ろになるルパート。

こうなるのも無理はない。

彼はジェットコースターなど絶叫マシンが苦手なのだ。

故に、大きく動き回る龍に乗る事に躊躇いを隠し切れないでいる。


「また、ハウドラちゃんに乗れるんですね!嬉しいです!」


ドラゴンが大好きなアリアは、そんなルパートの心情など知らずに喜びを露にする。

勘弁してくれ・・そう思うルパートであった。

お読みいただき、ありがとうございました!

王龍の里はどうなっているのか、次の話もお楽しみに!

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