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ANZA-アンザ- 次元放浪者  作者: 有裏 杉
第一章 超大陸グラード編

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里長

岩窟の中を歩いていく。

中は思っていたよりも明るく、ライトの様なもので照らされている。

おそらく魔道具の一種だろう。

おかげで凸凹した地面に躓く事もない。


「里長は、どこにいるんですか?」


ルパートがマーサに話しかける。


「里長は、この里の最上層にいるんだ。」

「さ、最上層・・もしかして、このまま歩きで・・?」

「いや、ドラゴンが連れていってくれる。」

「え、ドラゴンがこの中を飛ぶのか!?」


想像を膨らませたティームが、飛びながら岩壁に当たりまくるドラゴンの姿を思い浮かべる。


「そこまで大きくない。ハウドラゴンと言う小さなドラゴンが背中に乗せてくれる。」


ハウドラゴン、また違う種類のドラゴンがいる様だ。

少し歩いていくと広々とした空間に出た。

上を見上げると真ん中は大きな空間となっていた。

壁際には階段が上へと渦を巻く様に延びていた。

申し訳ない程度に手すりはあるが、飛び越えると間違いなく意識を失うであろう空間が広がっている。


「す、凄い。」

「ほら、噂をすれば見えてきた。」


小柄な茶色いドラゴンが五匹ほどいた。

大人の人間くらいの身長があり、四足歩行をしている。

その近くには、ふくよかな体型をした男性がいた。


「ん?マーサか、上に行くのか?」

「ああ、ご客人を案内しないといけないんだ。」

「客人とは珍しいな。それなら、ハウドラに乗っていけ。ただし、一人乗りだからな。」


男性に促され、ハウドラゴンに各々一人ずつ乗る。

シートベルトの様な物を腰回りに巻く。

さすがに重いのではないかと思ったが、人の体重なぞ軽いと言わんばかりに堂々と四足立ちしている。


「か、かわいい!!」


アリアがハウドラゴンの頭を撫でている。

ハウドラゴンは、気持ち良さそうな鳴き声を出している。


「あ、あの、ドラゴン!羨ましい!」


ティームが、その光景を見て羨ましがっている。

動物に嫉妬するな。


「よし、行くぞ!しっかり手綱を握っておけよ!」


マーサが掛け声をかける。

すると、ハウドラゴンが前に歩き出した。

最初はゆっくりと歩き始めたが、徐々に歩くのが速まる。

そして、階段を猛ダッシュで駆け上がり始めた。


「うおおおっ!!早えええ!!」


ハウドラゴンに乗る全員の髪型が強制的にオールバックとなる。

身体に触れる空気が肌寒い。

間違いなく、とんでもないスピードが出ている事は分かった。

そのため喋ると舌を噛みそうなので黙る事にした。

そんな状態で乗り続けると、程なくして頂上と思わしき場所に辿り着いた。


「よし!到着だ!」


中の岩窟と比べると、明るさは一目瞭然であった。

暖かい陽の光が注ぎ込まれており、心地良い風が吹いている。

里の家屋の大群や広大な平地が見渡せた。

そして、見るからに「里長が住んでいます。」と言わんばかりの大きな建物がある。


「ここが最上層か。」

「その通り、眺めも良いだろう?この地一帯は見回せるぞ。」


遠くでドラゴンが飛んでいる姿や地面を歩いている姿も見えた。

下にある里の家屋の方を見ると市場の様な場所が見える。

人々が多く行き来している。


「綺麗な景色ですね!あ!ルパートさん!あそこにドラゴンが!」

「え、ど、どこに?」


アリアのはしゃぎ様につられるルパート。

それを見て不機嫌そうにしているティーム。


「さて、お三方。そろそろ里長に会いに行くとしよう。ついてきてくれ。」


マーサの後ろについて行く。

建物の大きな入口を通り抜けて中に入っていく。

真っ直ぐに歩いていくと、石像が並び立つ大きな広間があった。

そこには老人から若者まで様々な年齢層の人達が座っていた。

見たところ里の重鎮であろうか。


「マーサ、戻ってきたか。」


真ん中に大柄でずっしりとした体型をしている男性がいた。

おそらく、あの男性が里長であろう。


「戻りました、里長。」

「その者達は何者だ。」


鋭い眼が真っ直ぐにルパート達を見つめてくる。


「この者達は、フレア協会のクロノス・クロスと呼ばれる冒険者達です。」

「ほう、フレア協会。」

「そうです。そして、私達が追いかけていた王龍の卵の奪還をしてくれたのです。」


・・・あの曲者達から!・・・

・・・さすが、フレア協会・・・


周囲の人間が騒ぎ始める。


「静まれ。」


里長の静かで重い声が空間に響く。

周囲が落ち着きを取り戻す。


「クロノス・クロスと言ったか。私はドルトン・ドラン、この王龍の里の里長である。先ずは、我が娘の手助けをいただき感謝を述べる。」

「ど、どうも・・えっ!娘!?」

「そうだ。私は、里長の嫡子であるマーサ・ドランだ。」


唐突な事実にルパート達は驚きの表情を見せる。

確かに顔立ちがどこか似ている雰囲気を感じた。


「それで、マーサよ。卵はどこにある。」

「それについて報告をする事があります。」


マーサがちらりとティームの方を見る。

ティームが背中に抱えている袋を開ける。


「ピュウ!」


すると、袋の中から頭を出したウズタマが現れた。


「・・なるほど、そういう事か。」

「ええ。この子龍は、王龍の卵から孵った子龍なのです。」


・・・な、なんと!・・・

・・・生まれてしまったのか・・・


再び周囲が騒ぎ始める。

それもそのはず、里で大事にしていた卵が盗まれた上に戻ってきたら孵ってしまっていたのだ。

混乱するのも無理はない。


「静まれ!」


重く強い声が響き渡る。


「・・生まれてしまったものは致し方ない。本来ならば、子龍の誕生は喜びたいところであるが、王龍の子であるなら話は別になってくる。」


瞳を閉じて考え込む里長。

その様子を周囲の人間が不安げな表情で見つめている。


「察するに、お三方の中で王龍の子が親として見ている方がおられるはずだ。その方は、どちらかな。」

「たぶん、俺だ。」

「お名前を聞いてもよろしいか。」

「ティームだ。」

「ティーム殿。この里の掟はお聞きしているか?」

「さっき聞いた。王龍の子に選ばれた人間が、この里の里長になるって。」

「左様。それを踏まえてお聞きする・・あなたは、この王龍の里の里長になりたいか?」


黙り込むティーム。

そんなティームの様子を心配そうに見るルパートとアリア。


「・・ティーム君。」

「・・ティーム。」


彼らの言葉からは、不安と恐れが漏れていた。

仲間がいなくなるかもしれない、そんな恐れを。

お読みいただき、ありがとうございました!

ティームの決断は果たしてどうなるか・・。

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