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決勝戦と、結界崩壊

図書館での密かな邂逅から数日。

王立ルミナス魔法学園の学内ランキング戦は、ついに最終日――決勝戦の舞台を迎えていた。


闘技場の観客席は、超満員の熱気に包まれていた。

かつては「Fランクの落ちこぼれ」と嘲笑されていたハヤトだが、今や誰も彼を馬鹿にする者はいない。Cランク、Bランク、そして準々決勝で風の天才シルフィをも打ち破った彼の圧倒的な実力は、完全に学園の伝説となっていた。


「いけーっ、ハヤト! 優勝しちゃえ!」

「ハヤト君……っ、頑張って……!」


貴賓席からテラが身を乗り出して大声を上げ、アクアが祈るように両手を握りしめている。シルフィは腕を組みながら「ふん、私に勝ったんだから、優勝して当然よ」とツンケンしているが、その目はハヤトに釘付けだ。


そして闘技場の中央。

ハヤトに対する決勝の相手は、学園最強のAランク生徒である三年生の貴族だった。しかし、彼の顔には明らかな焦りと恐怖が浮かんでいた。ハヤトの放つ、底知れない静かな魔力の威圧感に飲まれているのだ。


「……行くぞ」


ハヤトが背中の大盾――『キャパシタシールド』を左腕に構え、静かに右手を突き出した。

審判の教師が、試合開始の合図のために右手を高く掲げる。


「両者、構え! ――試合、開……っ!?」


審判が腕を振り下ろそうとした、その瞬間だった。


ズドォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!


突如として、大地を根底からひっくり返すような凄まじい地響きがコロシアム全体を襲った。

「な、なんだ!?」

「地震か!?」


パニックになる観客たち。

だが、それは自然現象などではなかった。


バキィィィィィィッ!!

空が割れるような甲高い音が響き渡る。見上げると、学園全体をドーム状に覆っていた強力な防衛結界が、まるでガラス細工のように内側から粉々に砕け散っていくところだった。


「防衛結界が……破られただと!?」

「馬鹿な、外からの攻撃ではない! 学園の地下からだ!」


教師たちが顔面を蒼白にして叫ぶ。

その直後、闘技場の中心の石畳が爆発するように吹き飛び、漆黒の瘴気の柱が天を貫いた。

そのドス黒い魔力の渦の中から、巨大な影がゆっくりと姿を現す。


『グルルルルルルル……ォォォォォォォ……ッ!!!』


空気を震わせ、内臓を直接握り潰されるようなおぞましい咆哮。

姿を現したのは、見上げるほど巨大な体躯を持ち、黒い鱗と腐臭を放つ瘴気を纏った『古の魔竜』だった。


「ひぃっ……!」

「ま、魔物!? なんでこんな街のど真ん中に!」


「ククク……ハハハハハッ! ついに、ついに復活したぞ!」


魔竜の頭上に、黒いローブを深々と被った数十人の集団――闇ギルドの魔術師たちが空間転移で姿を現した。


「貴様ら、何者だ! ここは王立ルミナス学園だぞ!」

警備に当たっていた魔導騎士や教師たちが一斉に杖を構え、火球や氷の矢を放つ。


しかし。


『ゴォォォォォォォォッ!!!』


魔竜がただ一吠えしただけで、放たれた魔法はすべて瘴気にかき消され、教師たちは暴風のような衝撃波を浴びて闘技場の壁へと叩きつけられた。


「ああっ!? 先生たちが、一撃で……!」

「逃げろッ! 殺されるぞ!」


コロシアムは一瞬にして、阿鼻叫喚の地獄へと変貌した。

数万人の観客と生徒たちが、パニックを起こして出口へと殺到する。しかし、闇ギルドの魔術師たちがコロシアムの出入り口を炎の壁で塞ぎ、彼らを完全に包囲してしまった。


「逃がさんよ。魔竜様が完全な力を取り戻すには、まだ若く新鮮な魔力が足りない。貴様ら生徒の命と魔力を、すべて喰らわせてやる!」


絶望的な状況に、生徒たちが悲鳴を上げて座り込む。

ハヤトは闘技場の中央で、巨大な魔竜の瘴気を肌で感じながら盾を強く握りしめた。

(なんて魔力だ……。今までのどんな魔物とも比較にならない。俺一人で、あいつを止められるか……?)


だが、ハヤトが動くより早く。

逃げ惑う生徒たちの前に、四つの美しい影が舞い降りた。


「みんな、落ち着いて! 炎の壁は私が消すわ!」

アクアが両手を掲げ、清らかな水の防壁を展開して生徒たちを炎から守る。


「下っ端の雑魚どもは、アタシがまとめて土に埋めてやるよッ!」

テラが地面を殴りつけ、闇ギルドの魔術師たちの足元を次々と陥没させていく。


「生徒を喰うですって? ……身の程を知りなさい、三流ども」

シルフィが空中に舞い上がり、鋭い風の刃で魔竜の瘴気を切り裂きながら牽制する。


「……ハヤトが守ろうとしている場所を、壊させはしない」

ノクスが深淵の闇を展開し、魔竜の影から無数の触手を生み出してその巨大な足止めをする。


水、土、風、闇。

学園の頂点に君臨する四人の天才美少女が、生徒たちを守るため、そしてハヤトの背中を守るために集結したのだ。


「ハヤト君! ここは私たちが抑えるから!」

「アンタはあのでかいトカゲの隙を突いてくれ!」


彼女たちの言葉に、ハヤトは強く頷いた。


「ありがとう……頼むッ!」


絶望的な結界崩壊の中、ハヤトと四人の天才たちによる、学園防衛のための総力戦が今、幕を開けた。

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