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最強の土台と、逆転のシールドバッシュ

それからの三日間、ハヤトの特訓は狂気を帯びていた。

ガルドの攻撃を受けるたびに、電気刺激で筋肉を強制収縮させて防ぐ。直後に筋繊維が破壊され、激痛にのたうち回る。そして、宿屋に戻って大量の肉を食らい、泥のように眠って超回復を促す。


その異常なサイクルを繰り返すうちに、ハヤトの身体には劇的な変化が現れ始めていた。


「……ねえ。ハヤトのやつ、なんか大きくない?」


訓練場のベンチから見学を続けていたリアナが、目を丸くして呟いた。

隣に座るセレスティアとミナも、呆然として頷く。


「ええ……。冒険者服の肩のあたりがパツパツになってるわ。腕の太さなんて、この数日で一回り以上太くなってるんじゃないかしら」

「ハヤト君、すごく痛そうに倒れては、また立ち上がって……。私、回復魔法をかけてあげた方が……」

「駄目よミナ! あいつが自分から助けを求めてくるまでは手を出さないって決めたでしょ!」


ミナが心配そうに立ち上がりかけるのを、リアナが慌てて引き留める。

乙女たちのボイコットが続く中、ハヤトはただひたすらに、己の肉体という土台を『物理的』に作り替え続けていた。







そして、特訓最終日となる五日目。

訓練場に向かい合って立つ二人の姿は、初日とは全く違う空気を纏っていた。

ハヤトの身体は、以前のひょろりとした少年兵のようなシルエットからは想像もつかないほど、分厚く、逞しい筋肉の鎧へと変貌を遂げていた。重大な負荷と超回復の反復が、彼を真のタンクとしての体格へと押し上げていたのだ。


「……まさか、たった五日でここまで仕上がるとはな。お前のその執念には恐れ入るぜ」

「おかげさまで、この蓄電大盾が随分と軽く感じるようになりましたよ」


ハヤトは黒い大盾を、まるで羽のように軽々と左腕で構えてみせた。


「いくぞ、ハヤト。これが最後の模擬戦だ。俺の全力のシールドバッシュ、受け止めてみろ!」

「来いッ、ガルドさん!」


ガルドが咆哮を上げ、大地を砕くような勢いで突進してくる。

初日とは比べ物にならない、本物の殺気すら混じった必殺の一撃。


激突のコンマ一秒前。

ハヤトは分厚く成長した自身の両足と左腕の筋肉に、再び電撃を走らせた。


(電気刺激(EMS)……フル・オーバーライド!)


バチィィッ!!

すでに常人離れしたレベルまで肥大化した筋肉が、電気の命令によってさらに100%の限界収縮を果たす。

ハヤトは盾を構えて防御するのではなく、自らも前傾姿勢となり、ガルドの突進に向かって渾身の力で盾を押し出した。


ドガァァァァァァァァァァンッ!!!


訓練場の中央で、爆弾が弾けたような衝撃音と土煙が巻き上がった。

ベンチにいた少女たちが思わず耳を塞ぎ、目を閉じる。

やがて土煙が晴れた後、そこに立っていたのは――。


「……嘘、でしょ」


セレスティアが震える声で呟いた。

訓練場の地面に背中から倒れ込み、呆然と空を見上げていたのは、最強の戦士であるはずのガルドだった。

そしてそのガルドを見下ろすように、黒い蓄電大盾を構えたハヤトが、揺るぎない巨木のように仁王立ちしていたのだ。


純粋な筋力と質量のぶつかり合い。

ハヤトの超回復した筋肉と、電気信号による強制出力の掛け合わせが、ついにガルドの筋力をわずかに上回り、力負けさせて弾き飛ばしたのである。


「はぁっ、はぁっ……。俺の、勝ちですね。ガルドさん」


ハヤトが息を切らしながら大盾を下ろすと、ガルドは数秒の沈黙の後、腹の底から愉快そうに大笑いし始めた。


「ガハハハハッ! 完敗だ! まさか力比べで俺が押し負ける日が来るとはな!」


ガルドは身を起こし、ハヤトの差し出した分厚い手を取って立ち上がった。

彼はハヤトの肩を誇らしげに叩く。


「合格だ、ハヤト。お前はもう、ただの理屈っぽい魔法使いじゃねえ。……立派な、一番前に立つべき『盾役タンク』だ」

「ありがとうございます。全部、ガルドさんが基礎から叩き込んでくれたおかげです」


ハヤトが充実した笑顔を見せる。

己の肉体を鍛え上げ、古代のシステム(蓄電器)を完璧に制御する筋力を手に入れたハヤト。彼が名実ともにアタッカー兼タンクとしての絶対的な力を手に入れた瞬間を、三人の少女たちはただ無言で、複雑な感情を抱きながら見つめ続けることしかできなかった。

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