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古代の蓄電器(キャパシタ)と、愚者たちの火傷

鋼鉄のゴーレムを粉砕したハヤトたちは、遺跡の最深部にある広間へと足を踏み入れた。

そこは、魔法使いが想像するような神秘的な儀式の間ではなかった。

壁一面に無数の太い金属線が這い、中央には巨大なガラス状の円筒が鎮座している。




「なんだか、不思議な場所ね。魔力を高める祭壇も、神像もないわ」




セレスティアが拍子抜けしたように周囲を見渡す。

だが、ハヤトの《荷電感知チャージ・センス》には、その部屋がまったく違った形で見えていた。




「いや……ここは、神殿なんかじゃない。巨大な『蓄電器』だ」




「ちくでんき?」




首を傾げるリアナをよそに、ハヤトは中央の円筒形装置に近づいた。




『うむ。電力を蓄え、必要な時に引き出すための“キャパシタ(コンデンサ)”じゃな。古代の人間は、魔法という曖昧な力ではなく、電気という物理エネルギーを体系的に制御していた証拠じゃ』




教授の言葉に、ハヤトは静かに頷いた。

かつての文明は、今の魔法使いのようにエネルギーを無駄に垂れ流すのではなく、効率的な『回路』として世界を構築していたのだ。

ハヤトは円筒の基部から、青白く発光する手のひらサイズの結晶石を取り出した。




「セレスティア様、これがこの遺跡の『コア』です。とてつもなく純度の高い魔力……いや、エネルギーの結晶体ですよ」




「……ありがとう。これを持ち帰れば、アルバーン家の功績は絶対的なものになるわ」




セレスティアは結晶石を大切に小箱に収め、深く息を吐いた。




「ハヤト、あなたのおかげよ。平民であるあなたを信じて本当に良かった」




「俺たち『エレキ・ストライド』の仕事が評価されたなら、何よりです。……ガルドさん、これで報酬は弾みますよね」




「ガハハッ! 当分は遊んで暮らせるほどの額をふんだくってやるさ!」




遺跡にガルドの豪快な笑い声が響く。

彼らの間には、身分や魔法の才能を超えた、確かな信頼関係チームワークが築かれていた。











一方その頃。

王都から遠く離れた、とある高難度の迷宮。

かつてハヤトを追放した勇者パーティは、かつてないほどの苦戦と混乱の最中にいた。




「痛ぁぁっ!? 熱い、また手が焦げたわ!」




高位の雷魔術師である少女が、悲鳴を上げて杖を取り落とした。

彼女の両手は酷い火傷を負い、皮膚が赤く爛れている。

目の前には、倒しきれなかった大型の魔物が咆哮を上げている。




「チッ、どうなってんだ! 魔法の威力が落ちてる上に、お前自身がダメージを受けてどうする!」




勇者が苛立ちながら剣を振り回し、魔物を牽制する。




「仕方ないじゃない! 魔法を撃つたびに、杖から凄まじい熱と痺れが逆流してくるのよ!」




「言い訳するな! 治癒士、早くあいつの手を治せ!」




「む、無理です! 魔力切れで、これ以上は……!」




パーティ全体が、完全に機能不全に陥っていた。

彼らは理解していなかったのだ。

魔法という強大なエネルギーを無造作に振り回せば、必ず『熱(ジュール熱)』や『余剰なノイズ』が発生するという物理法則を。

今までは、そのすべての反動を、ハヤトという「都合の良い避雷針アース」に無意識のうちに押し付けていたに過ぎない。




「くそっ、なんでだ……! あんなゴミみたいな静電気使い、一人いなくなっただけなのに……!」




勇者は歯を食いしばりながら、徐々に押し込まれていく戦線に絶望の表情を浮かべた。

最強の魔力を持つ自分たちが、なぜこんなにも消耗し、ボロボロになっているのか。

彼らが「無能」と切り捨てた『安全装置』の真の価値に気づくには、すでに遅すぎた。




最適化を放棄し、力任せに暴走するだけの愚者たちを待ち受けるのは、自らが引き起こした過負荷オーバーロードによる自滅の道だけであった。

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