表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
REFLECTOR  作者: GenerativeWorks
Ritual

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/42

第16話「視られる者(後篇)」

「顧問! 応答してください!」


通信回線の向こうで、技術員の声が響く。

だが応答はない。


モニターに映る黒瀬は、すでに背を向けていた。

カメラの前に立つ彼の姿が、徐々に透けていく。


肩、腕、そして顔。

最後に残ったのは“瞳”だけだった。


「主任……これ、映像が消えてるんじゃなくて……」


「――見られてる。」


久保の声が震える。


「外の私たちが、観察されてる側になってるんだ。」


そのとき、室内の全員が一斉に顔を上げた。

何の合図もなかったのに。


まるで一本の糸に引かれるように――全員の視線が鏡へ向いた。


伊庭の声が再び響く。

 

> 「もう外には、誰もいません!」


モニターの中の黒瀬が、ゆっくりと振り返る。

彼の唇が動く。


> 「見られることが、存在の証明だ。

> ならば、私が“視られる者”になろう。」


次の瞬間、黒瀬の姿が完全に消えた。

光が弾け、鏡面の中心に渦が生まれる。


周囲の温度が急激に下がり、照明が一つずつ落ちていく。

久保が叫ぶ。


「装置を止めろ!」


だが、誰も動かない。

彼らの瞳は鏡に釘付けになっていた。


その瞳が、鏡の中の光と完全に同期している。


「やめろ、見るな!」


久保が叫ぶ。

しかしその声も遅れて反響する。


反射する音が増え、どれが本物の声か分からなくなる。


――ぴちゃん。


波紋が大きくなり、鏡の奥から無数の“瞳”が覗いた。

それは人の数と同じだけあった。


全員の“内側の目”が、外を見ている。

伊庭の声が最後に囁く。


> 「もう、誰も観察していない。

> だから、世界は止まったの。」


時計が静かに音を立てて砕ける。

針は落ち、モニターには最後の記録が残った。


FROM INSIDE

SUBJECT: ALL

STATUS: OBSERVED


――ぴちゃん。


音が止む。

部屋には誰の姿もなかった。


ただ鏡面だけが、微かに呼吸していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ