第2話 伝説の幕開け
「おいおい…まじかよ」
意識が薄れる中、エンロードが呆れる仕草をしていたのを視界の片隅で確認出来た。
〜〜〜
「お兄ちゃん!」
遊園地の真ん中で、はしゃぐ夢香の姿。
「迷子になっちゃうぞ!」
「えへへ、あ!あれに乗りたい!!」
そう言い指差したのはメリーゴーランドだ。
「昔からメリーゴーランド好きだもんな」
「そ〜?初めて乗るけど?」
初めて?
「お兄ちゃんはここで見てるから」
「え〜!お兄ちゃんも乗ってよ!」
腕を引っ張られ反抗するまもなくついていく。
次第にその力は増していく。
「いてて、乗るよ乗る!」
しかし、その力は増すばかり。
「……!」
皮膚が裂け痛みが後から襲う。
「ぐぁ…!!」
やがて、その右腕は引き抜かれ【夢香?】は俺の右手を頬まで持ち上げ後ろを振り返る。
「楽しい?お兄ちゃん?」
その顔はノイズのようなものが走っている。
夢香であるがまた別の顔が重なって見えた。
〜〜〜〜
「あ゛あぁ!!」
跳ね起きるとまたベッドの上だった。
急いで俺は右手を確認する。
「あ…ある」
「起きたと思ったら、喧しい野郎だな」
横で椅子に座っているエンロードがいた。
「あぁ…悪いな」
Kが病室に入ってくる。
「まだ適応したばかりで、無茶しすぎだ」
「だが時間は待ってくれない」
Kは紙を1枚こちらに渡した。
「この紙を破いたら拠点まで帰ってこれる、緊急事態用のモノだ」
「そして政府に拠点を探知される可能性が高まるハイリスクな物でもある」
Kは去り際に言う。
「今回の神の雫奪還、どうやらエンヨウが大元らしい……因縁の相手だろう?」
「君の活躍に期待している」
Kは病室を後にした。
「何ぼぉーとしてんだよ、やる事は決まってるだろ?」
そう言いエンロードがニヤリと笑う。
「そうだな…エンヨウに挨拶しに行こう」
〜〜〜
リベルが手配した車に乗りながら任務内容を聞かされる。
「あ〜あ〜聞こえる?」
無線から聞き覚えのない気が抜けるような女の声を聞き入れる。
「君の〜任務指示を担当する【C】だよ」
「最初に今後、本名をバラしてはいけないよ、理由は聞かなくていいから〜」
「だから今度は【レシェン】と名乗るように」
偽名?レシェンか……。
「【神の雫】はエンヨウが運営している炎陽研究ビルで大切に保管されてる」
「今回、もう一人リベルから協力者【キュール】がいる、仲良くしろよ?」
「キュールには先に潜入してもらってる」
「ぼちぼち合流するように」
「後は君のセンス次第…頑張ってね〜!」
無線が切れ、鼓舞するようなカッコいい音楽に変わる。
今から、エンヨウと敵対する。
世界を敵に回す。
「何だ…?ビビってんのか?」
エンロードに言われ、手が震えているのに気付かされる。
「まぁ…ビビって当然だ、エンヨウを敵に回すんだからな」
「未来に待っているのは確実に悲惨な結末だ、決して楽には死ねない」
エンロードはタバコに火をつける。
「だがそれは敵に回す前から…元々だろう?」
「抵抗して名誉の死か、抵抗せずに犬死か」
幻のクセにタバコを咥える。
「野良犬にリードを付けたつもりはないぞ?」
幻の煙を五感で煙たく感じている……。
「最後まで離さずに持っとけよ、そのリード」
震えは止まらないが…エンヨウは怖くない。
〜〜〜
炎陽研究ビル前
エンヨウが前に立ちはだかる。
「さて、どう攻める?」
「もちろん、正面突破だ」
そう言いレシェンは正面入口からエントランスに入る。
そしてアナウンスが響き渡る。
「カードを提示してください」
「カードを提示してください」
「警告!直ちにカードを提示しなければ警備員が向かいます」
3度目の警告を無視した瞬間、ビル全体で警報がなり、赤く染め上げられる。
「侵入者を検知!直ちに警備員はエントランスへ」
次々と銃を武装した警備員が集まる。
「これでお前も犯罪者だ!」
エンロードの目が完全にキマッている。
「同じ土俵に立てたってことか?」
「は!バカ言え、まずはこいつらを潰してからだ」
数十もの警備員が銃をこちらに向ける。
「直ちに腕を後に組みその場で伏せろ!さもないと……」
警備員が話し終える前にレシェンは一人の警備員を壁に叩きつける。
壁には血が齧り付き肉片が散らかる。
「全ては、妹の為だ」
「っ!!発砲せよ!!」
発射された弾丸はレシェンには止まって見えた。
レシェンは容易く弾丸を避ける。
「ば、化け物が!!!」
乱射される弾丸を避け、警備員に近づき肉片に変える。
今のレシェンは一振りだけでも人を殺せる。
レシェンはエンロードとの会話を思い出す。
〜〜〜
まだ病室のベットで休んでいた時。
「エンロードの能力は何なんだ?」
「あ?時が来たら教えてやるよ」
「能力が分からないんじゃどう戦えばいい?」
「そうなに焦んなよ…戦ったら分かる」
「まぁ、今言えることはそうだな」
「【最強】になれるか?」
〜〜〜
「応援を求む!至急応援を……」
既にほとんどの警備員は死んでいた。
「馬鹿が!!エンヨウに手を出したな!」
「もうじきお前は死ぬ!それも苦痛の中な!」
その場に這いつくばいながら警備員はレシェンを脅す。
「先に手を出したのはそっちだ」
「上げた拳を下げるつもりは、ない」
グシャ!
最後の警備員が肉片へと変わった。
「ここまでは前座だ、早くブツを手に入れろ」
「あぁ…」
これも全て妹の為だ、妹の為ならば…何だって犠牲にしてやる。
〜〜〜
「約束通り、保管場所まで案内したぞ!」
「教えただろ!命だけは助けてくれよ!」
グシャ…
その言葉も無慈悲に儚い命は散った。
「これが神の雫なのか?」
予想に反して簡単に神の雫を目視することができた。
これもエンヨウの怠慢、傲りなのか?
「瓶に水が入ってるだけのようにみえる…」
「心配するな、それは間違いなく神の雫だ」
エンロードが後ろを指差す。
「悪い事は言わねぇ今すぐ全力で帰れ」
「って…遅かったか」
脳みその奥まで響く警告音がめまいを誘発する。
「…っな…なんだ?」
「来やがった、【処刑人】だ!」




