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第1話 リミットブレイカー

「ようこそ、リベルへ」


〜〜〜〜


「早速だが君には強くなってもらう」


 努力ではどうにでもできない、生まれつきの差がこの世にはある。


「俺の能力は目が良くなるだ」


 呆れられると思い、半笑いで答える。


「それがどうした…?」


 予想外の返答に反応ができなかった。


「ここはGランクが集まる所だぞ?」 

「リベルにはGランクの能力者達が集まる、そんな集団がどうやって高ランクに抗うのか」 


 Kはポケットから小さなチップを取り出した。


「【リミットブレイカー】」

「一部の富裕層の中で流通している装置だ」

「このチップを直接脳みそに埋め込む、するとチップに記憶された能力が使えるようになる」


 リミットブレイカー…?


「脳に直接…そんな便利なモノが何の欠点もないとは考えられないが?


「察しがいいな…勿論、欠点がある」

「第一にチップの適応力が無いの場合、脳に入れた途端、チップに記憶された能力者に人格が乗っ取られてしまう、通称【アザー化】」


「元々死人の能力を記憶したモノ、死人に人格が乗っ取られたら廃人となる」


「適応力があった場合、次に使い過ぎによる【オーバードーズ】自我の限界を超えた結果、人格が乗っ取られる、つまりアザー化してしまう」


「このチップは自分のなかにもう一人の人格を入れるようなモノ、それなりの代償が付き纏う」


「しかし、この装置は我々だからこそ扱える、Gランクとして今まで生きてきた、生き残った【自我】が他のランクより強いからだ」

「このチップこそが反撃の一撃目だ」

「任意だが君はこのチップを入れ込むかい?」


 俺の答えは既に決まっていた。


「妹を救えるのなら、俺はすべてを利用する、もちろん、あんた達も例外なく…」


「いい目つきだ」


〜〜〜〜


 手術室


 複数の白衣を着た人物とKに囲まれる。


「君はどのチップを埋め込む」

「無論だが、高ランクになるほどその代償も大きくなる」

「数を増やすのも同じ事だ」


 ベッドに座り込みながら答える。


「Sランクだ」


 周りにいた医者が焦るように話しかける。


「無茶です!まだSランクの成功例はありません!」

「それに手術中の負荷も大きい!」


 神田は静かに医者たちを見つめる。


「俺は一刻も早く妹を助けないといけない、今も燃え続ける身体で地獄の苦しみを味わっている」


「俺だけ、楽な思いはできない」


「しかし…!」


 反論しようとする医者をKがとめる。


「彼の覚悟を我々が無駄にするな」

「本当に良いんだな」


 何故か神田は清々しく答えた。


「ええ、できる限りのありったけを着けてください」


「その言葉、聞き入れた」


 そのまま全身麻酔を入れられ意識が朦朧とする。


「手術を開始します」


 Kは頑丈そうな扉にあるパスワードど十数桁打ち込みその中にある厳重な箱に入れられたチップを取り出す。


「Sランクチップ、過去105回の失敗、二十年前を最後に行われていない手術です」

「伝説の最悪指名手配者、エンロード」


 そのチップはゆっくりと神田の脳みそに入れられる。


「リベルの最高戦力となるか、廃人と化すか」


〜〜〜


「……ここはどこだ?」


 俺は気がつくとやけに白い空間へと移動していた。


「よう…身の程知らずの愚か者」


 そう言われ声のした方を振り返ると。


「俺様、エンロードだ」


 顔が傷だらけのいかにも悪者が立っていた。


「………誰?」


「嘘だろ!?俺様を知らないのか!?」


「まったく知らない……」


「五大財閥のうち二つを潰したんだぞ!?」


「五大財閥?三大財閥じゃないのか?」


 エンロードは呆れた顔をして地面に座り込む。


「時代の違いかぁ…?それとも政府が揉み消したのか?」


「お前が初めてだ、俺様を知らないアホ面は」


 そう言いエンロードは拳を握る。


「お前も奴らの手術の被験者か?」


「それにしてもしつこいな…もう100人は殺したぞ」


 神田は怖気づかずに言い放つ。


「率直に言う、俺に力を貸せ」


「はっ…冗談はよせ、俺様がお前に力を貸す?まったく笑えねぇな」


 溢れ出す殺気と圧力に目を逸らしたくなる。


「お前に力を貸して俺に何の徳がある?」

「Gランクのゴミに何が出来る?」


「俺は、炎陽に復讐する」


 エンロードの目が見開く。


「エンヨウ?あのエンヨウ財閥か?」


「あぁ、俺の家族は炎陽に殺された」

「だから俺は、炎陽を潰す」


「お前が財閥を潰すってのか?」

「この世を牛耳っているあの財閥をか?」


「あぁ、やってやるさ」


 エンロードはその場で笑い転げる。


「はははは!お前みたいなイカれ野郎久しぶりに会ったぜ!」

「俺が生まれた以来のイカれ野郎だ」

「何が算段はあるんだろうな?」


 神田は真っすぐな目をして言う。


「無い、ただ俺は炎陽を潰す、この言葉にも嘘偽りは無い」


「いいぜ!いいぜ!こう言う奴を待ってたんだ!」

「あん時出来なかったあの財閥を徹底的に潰してやる!」

「全てこのエンロード様が潰してやる」


 エンロードは俺の方を見つめる。


「少しの間だけ力を貸してやる、もしお前に貸す資格ないと判断したら即刻廃人にしてやる」


「あぁ、構わない」


「契約成立だ!」


〜〜〜


 手術室


「す、凄い!チップに適応してきている」

「このままいけば適応できます!」

「初めての事例ですよ!」


 医者たちはその光景に驚きを隠せていなかった。


 Kは静かにフェイの額に触れる。


「ここにまた伝説が生まれた」

「我々の翼だ」


〜〜〜


「…手術は……終わったのか?」


「はい!おめでとうございます!」


 少しの頭痛とめまいが俺を襲う。


「お見事、君はそのチップに適応した、間違いなく君は生まれ変わった」


 神田はその場を動こうとする。


「今すぐ、任務へ向かう」

「妹を待たせられない」


「焦る気持ちも分かるが少し体調を整えてからだ」

「適応は出来たがどれほど使用できるかわからない」

「能力について理解しなさい」


 そうして部屋には神田しかいなくなった。


「おいおい…口だけか?イカれ野郎」


 右を見るとエンロードが立っていた。


「なっ…!なぜここに?」


「落ち着け、俺はお前だけしか見えない幻だ、俺は周りに害を与えられないし受けない」


「まぁお前の話し相手ということだ」


 心底嫌そうな顔をする神田。


「お前は俺様の能力を理解すべきだ」

「病室でも理解できるだろう」

「今すぐ立て!」


 言われるがままにベットから起き上がろうとすると。


「!!!」


 布団が空を舞っている間に自分はベットの横に立っていた。


「すげぇ速い…!」


「当たり前だろ?俺様のチップなんだから」


「何世紀も頂点に鎮座していた財閥を潰した男だぜ?」


 俺は心なしかこの男を少々舐めていたかもしれない。


「そんな身体能力は前菜に過ぎねぇ」

「脳みそに力を入れて能力を使ってみな!」


 脳みその微かに違和感を感じる部分に力を入れる。


「……っえ?」


 大量の鼻血とともにその場で倒れた。


「おいおい…まじかよ」


 意識が薄れる中、エンロードが呆れる仕草をしていたのを視界の片隅で確認出来た。

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