第0話 自我の目覚め
能力───それは突如として人類に与えられた進化である。
能力は人類に革命的な発展をもたらしたが、同時に争うための強大な力を渡してしまった。
人類が勝手に決めた能力ランク【G〜S】により産まれた時から高い地位を持つ者、世間から淘汰される者が決まっていた。
そんな中俺はGランク、淘汰される者として産まれてしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「………ぐっ」
容赦のない拳が俺の腹めがけめり込む。
「おらぁ!何か抵抗してみろよ!」
俺を囲うようにして殴る蹴るなどの暴行が数十分ほど続く。
「あースッキリした、これに懲りたらさっさと渡せよな」
俺の財布から数万ほど盗み取りそいつらはその場を離れ去った。
「いてぇ……」
俺の名前は【神田広大】高校1年生、これが俺の日常だ……。
この世界には数多くの能力がある、雷を纏う、火を操る、身体強化、などの能力。
能力が全てじゃない…そう言っているのは、いい能力を得た者ばかり。
俺の能力はGランク、目が少し良くなるだけという代物だ。
高校生活が始まってはや2ヶ月間毎日のように奴らが現れ、暴行を行い、金を奪う。
どうやらGランクに人権は無いらしい、誰も虐めを止めようとしない、先生はまるでそれが当たり前かのように振る舞う。
今じゃ能力は何よりも大事な要素だ、どれだけ素の運動神経が良かろうと、頭が良かろうとと能力の前では足元にも及ばない。
「俺は生まれたときからこうなる運命だったんだな…」
一人愚痴をこぼし教室に戻る。教室に戻るとさっきまで俺を虐めていた主犯格の【炎陽相馬】がこちらを見てニヤニヤしている。
「先生!神田がまた授業に遅れてます!!」
右手で指差しながら注目を俺に向ける。
「神田、またお前か……廊下に立ってろ」
痣だらけの俺を廊下に立たせるゴミ教師、今の世界ではこれが当たり前だ。
「……………」
炎陽相馬、現在Aランクの炎の使い手、将来的にSランク候補、三大財閥の一つ【エンヨウ】の坊っちゃんだ。
この世界は三大財閥で回っているといっても過言ではない、現に大半の物品・サービスには三大財閥の名前が刻まれている。
つまり学校側は炎陽に逆らえない、ここは奴の楽園だ。
「結局また、学校が終わるまで廊下に立たされてたな……」
身体の節々が痛む中、帰路を辿る。
「ただいま」
「おかえりなさい」
普通我が子がGランクと知ったら捨てるか放置するが俺の母親はGランクと知っていながら俺を育ててくれている。
「また、傷だらけで……」
「大丈夫だよ、慣れっこさ!」
母親に辛い顔をさせたくない、その一心で無理をした言葉を口に出す。
「お兄ちゃん!おかえり!!!」
「ただいま、元気にしてたか?」
「うん!!!」
俺の唯一の希望はこの妹だ、名は【神田夢香】(カンダユメカ)、血は繋がってない養子だ、俺と同じGランクのこの子は肉親から捨てられてしまったのだ。
「私ね!もうすぐ誕生日なの!!」
「そうだな、もう10歳か!」
「うん!それでね、お願いがあるんだけど…」
「何でも叶えるよ」
「本当!?」
目をキラキラさせる妹を見ると自分の悩みがちっぽけに思える。
「実はね……」
「遊園地に連れて行って欲しいの!」
「いいよ、皆んなで行こうか」
「やった!!!絶対だよ!!」
「あぁ、絶対だ」
「な〜ら!指切りげんまんしよ!」
小指を重ね一緒に歌う。
「指切りげんまん!嘘ついたら針千本の〜ます!指切った!」
痣だらけの小指の痛みが少し引いていく気がする。
「約束だよ!」
「約束だ…」
静かに目を瞑る。
幸せだ…確かに俺の人生は見る人によっては苦痛だと思う人がいるだろう。
ただ、この日常が続けるなら。
妹と母さん、さえいればいい。本当にそう思っていた。
次、目を開けた瞬間、自宅は火の海と化していた。
「何が…起きているんだ……」
いつもの日常を終え、また自宅への帰路を辿っていたはず。自宅があった場所には火柱が燃え盛っていた。
「夢香!!母さん!!」
気づいたら、火の海に飛び込んでいた。
「皆どこに居るんだ!!」
炎と煙で視界が塞がれている中、必死になって名前を呼んだ。
「俺の能力で……」
少し視界が良くなるのを感じる。
「誰か返事してくれ!!」
家が倒壊しかけているとき、一つの声が耳に入る。
「お兄……ちゃん……」
自然と身体が動き、その声の元へ向かう。
倒れ込んだタンスの下敷きとなる形で夢香は横たわっていた。
「まってろ、今出してやるから!!」
力を振り絞りタンスを持ち上げようとする、手の平からは血が溢れ、痣と火傷を負っている身体は耐え難い苦痛を与えて来る。
「ぐっ……ぐぁ!!!」
タンスが少し上がり、その隙に夢香を引き抜き、そのまま夢香を抱きかかえ外へと向かう、母さんはもう逃げていると信じて。
「大丈夫か!!夢香!!」
必死に話しかけるが、返事は返ってこない。
気がつくと火事に興味をそそられた人々が大量にスマホを持って撮影しながら群がっていた。
本来なら消防隊が来ているほどの時間が経っている。俺はさらには世の中が腐っていることに苛立ちを覚える。
「何で誰も!!消防を呼んでないんだ!!!」
群衆が一斉にスマホをこちらに向ける、まるで新しい玩具を見つけたかのように。
悲痛な叫びをただ一人遠くで笑っている者を見つける。
「炎陽!!!」
能力で目が良くなったおかげで遠くの奴の姿が見え悶絶する。
奴が能力で放火したんだ………何故?俺が悪いことをしたのか?なら何故?俺を狙わない?何故!俺の家族を狙った!!!
考えるほど世界が憎く、妬ましく思う。
「クソぉ!!!」
能力を重ねて使う、視界がズームされていきより矢口の顔が鮮明に分かる。
奴の顔をもっと…もっと…もっと…もっともっともっと!!!!!!
能力の使い過ぎか、目から血が溢れ、視界が赤く染まる。
そして意識を失った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
次に目が覚めたとき白い天井が辺りを支配していた。
「ここ…は?」
「…や……………目が…………」
白衣を着た女性が何かを喋っているが、うまく聞き取れない。
「す……っ………ください…」
急いだ様子で奥の扉を開けて去る。
「俺は………」
「いて!!……」
ベットから立ち上がろうとしたとき、酷使し続けた両目からまるで雷に撃たれたかのような痛みが襲ってきた。
「安静にしてください!!」
戻ってきた白衣の女性から叱られる。
「大丈夫ですか?」
白衣の女性の後ろから仮面を被った医者らしき異質な男性が話しかけてきた。
「夢香は、無事か!?」
咄嗟に言葉が出る。
「重症で意識が戻りません、いわゆる植物人間のようなものです」
全てが砕ける音がした。
「あ…あ……」
「ですが、まだ治せます」
藁にすがる思いで懇願する。
「本当か!」
「ええ…これからのあなた次第です…」
一拍置いてまた話し始める。
「あなたは火災に巻き込まれた際の炎症による痛みのショックで気を失っていました」
「あなたの妹は重症、母親は行方不明です」
「警察からの現場検証からコンロが原因の火事だと報告されており、その場の状況を見ても事故による火災である可能性が高いです」
違う、違う、違う、あれは放火だ…あれは、炎陽がやったことだ。
「違う!あれは!」
「…公ではそう言われているが……」
医者は俺の発言と被せるように言う。
「能力によって作られた炎、それもかなりの実力…」
「あの場いた、Aランク炎陽相馬」
「彼が犯人…」
淡々と話すその医者に何か違和感を感じる。
「そうだろ?神田広大くん?」
その男は全てを見透かしているような目をしていた。
「なんで、それを…」
男は一拍置いて言う。
「ここは普通の病院じゃない」
「ここは反逆者が集う場所【リベル】だ」
今までの違和感が判明する、Gランクが病院に行けていることだ。
Gランクが病院なんて行けるはずが無いのだから、後回しにされて見殺しにされるのだから。
「君はこのランクによって淘汰された、犠牲になった人間だ」
「我々、リベルはそんな犠牲を蔑ろにしない」
医者は静かに手を差し伸べる。
「共に反逆の狼煙を挙げよう」
「ここはリベル、反逆の火種となる場所だ」
Gランクの俺に居場所をくれる所、Gランクの妹を治療してくれる場所はここしかない。
これは今の生活を変える絶好のチャンスであり、妹を救える唯一の方法。
少し怪しく見えたその手は、今じゃ救いの手のように見えた。
「お願い……お願い…します」
握手を交わし、今から犯罪者になることを決意する。
数分後
「自己紹介がまだだったね」
「リベルの創設者、兼トップ、【K】だ」
簡単な会釈をし本題に移る。
「それで、妹をどうやったら救える?」
妹の為なら何だってする、たとえそれが人を殺すようなことでも…。
「君の妹は高レベルの能力による炎症のため火の能力が常に傷口を燃やし続けている」
話を聞くたび、炎陽への怒りで意識が飛びそうになる。
「彼女を救える唯一無二の方法は、S級治療薬、【神の雫】だ」
S級……この世界の人間は治療薬すらも比べたがるのか?
「S級治療薬は、この世に3つしか存在しない、神の雫は、その中の1つだ」
「森羅万象の病、損傷、呪い、そして能力を治療できる」
神の雫…それがあれば、夢香を救える!
「リベルにも神の雫を待ち続けている者がいる」
「一雫で数万もの人を救える、どうだ?手伝ってくれるか?」
手伝うかどうか?そんなの決まっている。
「俺にやらせてくれ…俺はあくまで妹の為だ」
そうだ…俺は妹のために行動をする、その過程で人を救おうが関係ない。
「ありがとう、感謝するよ」
「そして、改めて」
「ようこそ、リベルへ」
毎週月・金に投稿します。




