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だらしのない復讐者と共犯者になった男 〜INDE ”VENGEANCE“ DAY〜   作者: 岩波備前
『烈火』

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29話

「これがあれば朱鷺さんへ、梶原についての調査が依頼できますね」


「そうだな‥‥‥過度な期待はしないほうがいいかもしれんが‥‥‥それよりも眞は大丈夫なのか?」


詩音が優勝賞品の『JDファイル』という名のディスクを弄びながら、眞の様子を伺う。

話しかけられた眞は平然としていた。


「疲れはありますが、身体は何とか‥‥‥明日辺りに筋肉痛になりそうです」


「そうか‥‥‥」


筋肉痛程度で済む身体の頑丈さを、あまり自覚していないようだ。


「‥‥‥何で、そこまでして‥‥‥」


「‥‥‥?‥‥‥詩音さん、何か言いましたか?」


「‥‥‥いや」


口から出た言葉を誤魔化す詩音。‥‥‥自分でもいまいち分からない。


「とりあえず寝るぞ。明日、朱鷺のところへ行く」


パンツを脱ぎ捨て、ソファで丸くなる詩音。

もはや、いつものこととなってしまったが未だに慣れない。

眞は目を逸しつつ、そのまま事務所の明かりを消す。

その後、外の明かりを頼りにソファで横になる。


「分かりました、おやすみなさい。詩音さん」


「‥‥‥ああ」


そして会話が途切れる。

次第に眞の寝息が聞こえ始めた。


「‥‥‥‥‥‥梶原の情報が手に入ったら‥‥‥」


体勢を変え、眠りについた眞の顔を眺めながら1人呟く。

梶原の情報から何かが得られるのであろうか。

そして、それは何をもたらすのか。


「‥‥‥‥‥‥なんだろうな、一体‥‥‥」


その言葉は、梶原の情報についてか‥‥‥


「‥‥‥」


眞に背中を向けるように、再び体勢を変える。


(寝るか‥‥‥考えたところで‥‥‥変わらない‥‥‥)


そのまま目を閉じ、睡魔を静かに待ち続けた。







「お、おお!‥‥‥これ、これだよ‥‥‥ぼ、ぼくが欲しかった『JDファイル』‥‥.あ、あかぎ、さん‥‥‥あり‥‥‥ありがとう」


「うわぁ‥‥‥!‥‥‥あっ‥‥‥いや、その」


翌日。

朱鷺の工房に向かった2人は、早速朱鷺へ『JDファイル』を手渡した。

眞の手から恐る恐る受け取り、本物であること確認するとぱっ、と表情を明るくした。

その時に見えた鼻梁と碧眼から予想以上の美人であることが分かり、思わず唸り声を上げてしまう。


「よ、喜んで貰えて良かったです‥‥‥では、こちらの依頼も‥‥‥」


「う、うん‥‥‥じつは、‥‥‥調べは、つけて、あるんだ」


朱鷺はジャージのポケットからくしゃくしゃの紙を取り出す。

そこには梶原聡かじはらさとしと記載されており、現在の居住地についても情報が載っていた。


「‥‥‥これは‥‥‥ありがとうございます‥‥‥良く、見つけましたね」


「‥‥‥へ、へへ、えへ‥‥‥頑張った‥‥‥」


へにょ、っとしたVサインを作る朱鷺。

眞が『JDファイル』を手に入れるため努力したように、朱鷺の方でも頑張ってくれた様だ。


「捏造、データの方は‥‥‥もう少し、待って、て‥‥‥再生用の機械‥‥‥もうすぐ、直るから‥‥‥」


朱鷺はJDファイルを持って奥の部屋に戻っていった。その間、詩音とともに梶原の情報を確認する。


「詩音さん、これが梶原の居場所です」


「まさか‥‥‥生きているのか?」


詩音も梶原の情報が手に入るとは思っていなかったのだろう。平静を装いつつも、食い入るように書類に目を通す。


「ここに、梶原が‥‥‥」


詩音が見ている部分には、梶原の現在住んでいる場所が記載されている。


本土から南西に位置する島。

海と自然を愛する、おおらかな人達が賑わう、国内有数のリゾート地と名高い場所であった。


「詩音さん‥‥‥」


「‥‥‥ああ、行くぞ」


次の目的は決まった。

梶原を見つけ、手掛かりを得る。


眞達がその場所への移動手段や宿泊施設などを探している間に、朱鷺が機械を持ってやってくる。


「な、直ったよー‥‥‥これ、で、な、中身、見る事が、できるよ」


外観からは良く分からないが、修理が終了したらしい。


「しょ、証拠に、JDファイル、の中、確認できたよ?‥‥‥‥‥‥凄かったなあ」


どうやらJDファイルも捏造データと同じく特殊なものであったらしい。

中身を思い出しながら、恍惚とした表情で笑う朱鷺。‥‥‥よほど面白い内容であったのだろう。

眞はどことなく、にちゃぁ‥‥‥とした雰囲気を感じた。


「じゃあ、早速‥‥‥」


朱鷺にデータのディスクを渡し、PCに出力する。

画面に、黒羽製薬で開発されていた新薬の型式番号と思われるタイトルのデータが表示される。


「これが、捏造のデータか‥‥‥」


「そうみたいだな‥‥‥これがあれば、天城悠生に‥‥‥」


眞と詩音は敵に対抗するための武器を手に入れることが出来たと確信した。


「••••••後は、梶原から何か手掛かりを得ることができれば良いが‥‥‥」


朱鷺から渡された書類と画面を見ながら詩音が考え込み始めた直後、眞は気が付く。


「‥‥‥あれ、当時のデータが2枚?」


「ん?見せてみろ‥‥‥同じ‥‥‥いや、数値が違うな」


後ろの方の画面に2枚の書類の画像データが残されていた。内容は殆ど一緒だが、結果の数値が違う。改竄後の方が明らかに性能が向上していた。


「そうなるとこっちが元のデータで、こっちが改竄後の‥‥‥‥‥‥おかしい••••••何故、承認されている?」


「‥‥‥おかしいですか?」


「ああ、思い出してみろ。父の遺書には改竄データには関与していないと書いてあったんだ‥‥‥そうであれば捏造された書類には、本人の印は無いはずだ」


「あっ‥‥‥」


そこで気が付く。

元のデータと捏造されたデータのどちらにも黒羽幹久の承認印が押印されていた。


「‥‥‥偽造‥‥‥ですか?」


「恐らくな‥‥‥」


「そ、それはちが、違うと‥‥‥思うよ?」


「‥‥‥何だと?」


詩音の隣からぬるっ、と身を乗り出してきた朱鷺が画面を見ながら指摘する。


「だって‥‥‥この印‥‥‥お、同じ、だもの」


画像データだから若干ぼやけているけれど‥‥‥といった内容を呟く。

詩音はその言葉に少し考え込むが、直ぐに結論を出す。


「‥‥‥‥‥‥朱鷺がそう言うのであれば、間違いない‥‥‥協力者がいた‥‥‥そう考えるしかないな」


‥‥‥協力者。

捏造には安西以外に関与した人物がいる。


「‥‥‥では協力者とは?」


「分からない‥‥‥だが‥‥‥」


自分を落ち着かせるように、一息つく。


「‥‥‥梶原がこの件に関与している可能性は高い」


黒羽幹久に信頼され、遺書にもその名前が残されていた人物。


―――梶原聡。


「‥‥‥もし、本当に梶原がこの件に関与しているとしたら‥‥‥」


眞は自分の想像に、全身の血液が冷たくなるような気がした。


詩音はくしゃくしゃの書類を握りしめ、眞の顔を見据えながら呟く。


「ああ‥‥‥私の、敵だ」


そう断言する詩音の瞳には、安西を追い詰めた時と同じ、昏い光が宿っていた。

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