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探偵 桜庭碧と彼を取り巻く日常について  作者: 風蓮
第二話 怪盗クックロビンからの予告状
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怪盗クックロビンからの予告状 ⑩

十一月十一日、晴れ。

怪盗クックロビンが警視庁に盗みに入る日。

僕たちは蓮月さんに導かれて、特務係へ続く道を歩いているところだった。


怪盗クックロビンの犯行はいつも、正午を過ぎてから。

語呂合わせを好む性質から一応十一時十一分の犯行も疑い警備を固める予定、と聞かされている今は、午前九時半だ。

警備に来たのか色紙を選びに来たのか怪しいけれど、桜庭さんは迷う素振りもなくすたすたと歩いていく。

その影を覗くように、通り過ぎた後の角から囁き声が追いかけてくる。

……なんか、嫌だな。

よっぽど潜めているのか何を言ってるのかまでは聞き取れないけれど、ひそひそと交わされる言葉たちにあまりいい印象は抱けない。

……だからって、僕が何が言えるわけでもないけど。


「モネー、ちゃんとついてこないと迷子になるぞー。」

「何か気になるものでもあったか? 口外できる範囲なら説明するから、見失う前に声を掛けてくれ。」

「警視庁内は万一の際に乗っ取られないように迷路のような造りになっていると聞きました。」

「言うほどじゃないけどな。実際の迷宮具合はテレビ局とかの方が上らしいぞ。」


まあでもエレベーター組み合わせないとたどり着かない階とかあるしなぁ、と桜庭さんが言って、そうだな、と蓮月さんが頷く。

やっぱりそういうところ、あるんだ。

それこそ警視総監室とかそうそうたどり着かれちゃ困るし、他にも国家機密に関する書類とか、拳銃の保管場所とか、色々遠ざけておきたいものは多いんだろう。


「まぁ、特務係もそんな感じだけどな。」

「えっそうなんですか?」

「あぁ。結構入り組んでるぞ。」

「それだけ重要な役目を担っているんですね。」

「いや、あんまり出番がないから不便なとこに押し込められてるだけだ。」

「それはそれで、秘密基地みたいでいいですね。」


僕も小さいころ、兄さんと滅多に使わない部屋の暖炉の中に隠れたりしたっけ。

人が足を踏み入れないところって、なんだか自分だけの場所って感じでわくわくする。

あの暖炉の中にはもう入れないかな、なんてかつての隠れ場所を思い出していれば、くつくつと漏れ聞こえる二人分の笑い声。


「……何か変なこと言いました?」

「いやあ?」

「なんでも、ない。」

「絶対何でもあるでしょ。柊野君、僕おかしい?」

「いえ……でも、俺は秘密基地を作った記憶がないので……正確な判断はできかねます。」

「そっかあ……。」

「いやそんな真面目に考察しなくていいよ早く行こ?」

「そうだぞ、クックロビンが早めに来ると困るからな。先に色紙は選んでおかないと。」

「ペンの色もだぞ。皆は何色にするんだ?」

「俺は黒が良いです。一番映えると思うので。」

「あー、シンプルイズベストだよなー。」

「俺は青にするつもりだ。予告状のインクと同じような色にしたい。」

「おー、それもいいな。本人リスペクトだな。モネは?」

「えっ、えー、と……すみません、そこまで考えてませんでした。」

「そっか? 大丈夫大丈夫、俺もまだ決まってないから。ペン見てから考えてもいいよな。」

「そう、ですね?」


……そうなのか?

何だかよくわからなくなってきた。

いや、思い返せば最初からわからなかった気もしないでもない。

本当のところ、桜庭さんたちはクックロビンを捕まえるつもりはあるのかな。

蓮月さんは正体は暴いてみたいとは言ってたけど……。


実際、クックロビンは大々的な犯行で知名度こそ高いけど、凶悪犯ってわけじゃ全然ない。

犯罪者を逃がすっていうのは良くないと思うけど、当の青の警察手帳の犯人だって、警察を眠らせこそすれ傷つけてもないみたいだし。

……侵入が予告されてるはずの警視庁内に、桜庭さんはともかく僕や柊野君が入れる時点で答えは見えてるような気がするけど……。


「おーいモネー。ほんとおいてっちゃうぞー?」

「迷子になったら俺か碧に電話をかけてくれよ。」

「……俺と手を繋いでおきますか?」

「すみませんすぐ行きます!」

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