怪盗クックロビンからの予告状 ⑥
「まさか、あの天下のクックロビンの正体が女子高生だったとはねぇ。」
「一番運動神経良かったのがあたしだっただけよ。あたしたちは皆で怪盗クックロビンなんだから。」
後ろで思い思いにくつろぐ仲間たちを振り返りながらそう言えば、正面の男は一度目を細めてからそうだったね、失礼しました、と素直に頭を下げた。
あたしは怪盗クックロビン、怪盗役の羽鳥鶫。
そして向かい合うこの人は、あたしたちの新しい仲間。
なんでも今まで他の組織を率いていたらしく、代表として来ているこの男以外にも幾人か仲間がいるらしい。
けどまぁ、そんな細かいところなんて詮索するだけ野暮ってもんでしょう?
あたしたちは怪盗クックロビン。
派手で目立つことが好きで、何かするなら悪いやつを懲らしめる方がいいかなって、それくらいのちょっとした、正義感にも満たない心があればそれでいいの。
幸いこの人は身のこなしも軽やかで頭の回転も速くて、面白いことが好きそうだったって、それだけよ。
クックロビンの後方支援部隊はかなりの凄腕ぞろいだから、この人には現場で補助に回ってもらうことにしようかしら。
あたしは背が低い分小さな隙間にももぐりこみやすいけれど、高いところへ手を届かせるのは大変だったりもするから。
それに単純に、重たい荷物なんかを運んだり、持っている物を隠したりするのは、体が大きいほうが有利だものね。
といっても、彼も私よりは大柄だっていうだけで、男性の中では細身に入る方かしら。
だけど、これくらいがちょうどいいのかもしれないわね。
大きすぎて周りのものをひっかけたりするのはごめんだもの。
「それじゃ、あなたのことは何て呼べばいいかしら?」
「そうだなぁ……。」
「名前を明かしたくないなら無理強いはしないわ。あたしたちはそれぞれをコードネームで呼び合ってるの。あたしのことは駒鳥って呼んで。」
「なるほど、クックロビンだから? わかりやすくていいね。」
何度か頷いて、彼は私の後ろに目を向けた。
えぇと、と首を傾げながら、移ろう視線はきっと仲間たちを見ているのでしょうね。
「コードネームは自分で決めていいの?」
「えぇ。考えるのが面倒ならこっちで決めるけど?」
「うーん……コードネームに統一性は?」
「一応今のところみんな鳥の名前になってるけど、特に強制はしてないわ。」
「そっか。それじゃあ……。」
どうしようかな、と言いながら目を伏せたその人の唇が小さく動く。
「とりをとるやなぎ……」
「何ですって?」
「んっとね。もず、って、使ってる人はいる?」
「百舌? いないわ。それにする?」
「うん、じゃあそうする。」
こくりとうなずいて、そのひと改め百舌はよろしくお願いします、と手を差し出した。
勢いよくその手を握り返せば、パシンと小気味いい音がする。
ちょっと骨ばった、皮の薄い手のひら。
これは案外重いものとか持ち慣れてないかもしれないわね。
後でぶ厚めの手袋でも支給しようかしらと思いながら、もう片方の手を挙げる。
「そういうことで、皆! 新しい仲間が来たらすることがあるでしょう!?」
声を張った号令に、背後で次々と立ち上がる気配。
中には待ってましたと雄たけびにも近い歓声をあげるヤツもいて、その勢いに百舌がぱちくりと目を見張った。
あぁ、そんな隙だらけだと。
「あっという間に餌食にされるわよ!」
「くらえっ!」
「待てお前そっちは食べる用で投げる方はこっち……!」
「あぁっ早く言えよもう投げちまっただろ!?」
交わされる言葉より早く放たれた生クリームまみれのパイが、ものの見事に百舌の顔面に命中した。
ぼとぼとと塊になって落ちていくクリームに、投げた当人のあぁぁ美味しい方のケーキ……と恨めし気な声。
そんなもん後でまた焼いてやるよ! と厨房から元気な声が飛ぶ。
「我ら怪盗クックロビンは新たな仲間を歓迎するわ! さぁ、パーティーを始めましょう!」




