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探偵 桜庭碧と彼を取り巻く日常について  作者: 風蓮
第二話 怪盗クックロビンからの予告状
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怪盗クックロビンからの予告状 ④

「わかった!」


唐突に蓮月さんが大きな声を上げた。

楽しそうな表情に、ほっと胸を撫でおろす。

そうだよね。警察だもん、下手な暗号よりよっぽど分かりやすいはずだし……。


「狙われてるのは、碧、お前の警察手帳だ!」

「俺ぇ!?」


まぁね。そうだね。薄々わかってはいた。

分かってはいたけど少しくらい期待したくなっちゃった僕は悪くない……と思いたい。

だけど実際はこの通りで……軌道修正はもう少し休憩してからでもいいだろうか。

予告状が来てるなら、十一日までは手出ししてこないだろうし。

なんだか疲れたなぁ、と思う僕の前で、二人は楽しそうに推理を深めている。


「お前の名前が碧って書くことを知らなかったんだろう。珍しい字だからな。」

「成程……でも俺の警察手帳はとっくの昔に返納してるぞ?」

「そうだな……しばらくはうちで保管してたが……。」

「期間的にももう処分されてるだろ? さすがのクックロビンでも無いものは」

「処分されてないよ。」


突然、背後から知らない声が降った。

丸く柔らかで、つかみどころのない声。

驚いて振り向いた僕ににっこりと笑いかけて、その人は、や、と軽く手を挙げた。

ガタン、と椅子が倒れる音がする。


「お前っ、来るなと言っただろう!」

「だって待ってるだけって暇なんだもん。」

「だから余所に行けと」


言い募る蓮月さんを気にした風もなくニコニコと笑って、その人は僕を見下ろした。

新人さん? と首を傾げられて頷く……前に。


椋折むくおり。」


酷く、醒めた声がした。

反射的に背筋が伸びる。

この声を、知っている。

ひびが入る寸前の薄氷のような、表情を押し殺した桜庭さんの顔。


「うちの助手だ。それ以上近づくな。」

「はいはーい。あ、オレねー、椋折律むくおりりつっていうの。特技はマジック。見る?」

「見せなくていい何も出すな。」

「せっかく新技練習してきたのになー。あ、椅子借りていー?」


凍る声に気付かないとでも言うように、答えを待たずに椋折さん、は近くの椅子に腰を下ろした。

おいしそー、とテーブルのお皿に手を伸ばすのに、桜庭さんが冷ややかに問いかける。


「何しに来た?」

「あれ、はづきんから聞いてない?」

「聞いてない。」

「気色悪い名前で呼ぶな。」

「クックロビンの捜査さー、特務係も呼ばれてるんだよねぇ。っていうか、うちが声かけたみたいなもんだけどー。」

「……どういうことだ?」


ぱりぱりとアスパラガスをかじりながら言われた言葉に、桜庭さんが蓮月さんを見上げた。

その声に温度が戻って、少し安心する。

桜庭さんの冷たい声は、あんまり聞きたくない。

周りだけじゃなくて、桜庭さん自身が凍ってしまいそうに聞こえるから。


「……クックロビンからの予告状……椋折の家のポストに届けられていたんだ。」

「は?」

「切手はなかったから、恐らく直接入れられたものだろう。それで、特務係も手を貸せと、そういうことになった。」

「最近大きな事件もないしねー。たまには顔売っとかないと?」

「と、椋折が言うせいで主導権を握る立場を任されてしまってな……肝心の謎が解けていませんでは話にならないから、お前を頼りに来たわけだ。」


ついてくるなと言ったんだがな、と蓮月さんが椋折さんをじろりと睨む。

そう怖い顔しないのカルシウムとってー、と椋折さんが笑いかけて、僕の持つ予告状に目を落とす。


「それで、謎は解けたの? 碧ちゃんの警察手帳がピンチな感じ?」

「あぁそうだった。お前、碧の警察手帳がまだ処分されてないって言ったな?」

「うん。返納した後保管期間が過ぎたから処分ってなった時に、回収されたって聞いたよ? 確か今は早蕨サンのとこにあるんじゃなかったかな。」


記憶を辿るように首を傾げながらの言葉に、ずっとそっぽを向いていた桜庭さんが顔を上げた。

怪訝そうに細められた瞳が椋折さんを映す。


「早蕨って……警視総監か?」

「うん、そうだよ。」

「何でまた……。」


独り言のように呟いて、桜庭さんはふつりと瞼を閉じた。

すぐに開かれた目が蓮月さんに向けられる。


「だけどまぁ、まだ存在してるなら盗みようはあるってことだよな。」

「あぁ。神出鬼没で正体不明、性別も年齢もわからないクックロビンなら、いくら警視総監が管理しているものだとしても盗み出せるんだろう……。」

「そこはもう少し頑張ってもらえませんか警察組織!」

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