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第52話 新しい修行仲間と新しい修行

 「とりあえず、この部屋を使ってくれ。」


 グランドドラゴンから逃れ、無事王都に帰還したジンは、レオンにフィアのことを紹介した。バーン帝国の名門貴族ランサー家出身であることは伏せ、武者修行のために国を出、腕を磨きたいと願っている令嬢とだけ伝えた。それを聞いたレオンは、それ以上追及することはなかったばかりか、快く空き部屋を貸し出してくれたのだ。


 「・・・まさか、こんなにアッサリ部屋を借りられるとは思わなかった。」

 「フィアがハート流の修行に役立つからだ。槍使いは、剣士にとって天敵と言える。その天敵と戦う経験を積めるんだ。だから、部屋を貸してくれたんだよ。」

 「そうか。ありがたい。さすがに私も、ただで借りるのは気が引けたからな。」

 (・・・まあ、師匠は優しいから、善意で貸してくれたんだろうけどな。そうでも言わないと、フィアは気にして修行に差支えが出そうだからな。)

 「・・・しかし、君があの剣聖の弟子だったとは。どおりで強いわけだ。」


 フィアは、納得した様子でジンを見る。あの時の異様な強さの原因を、剣聖の弟子だからという風に捉えたのだ。剣聖の弟子なら、たとえ剣士であろうとも、槍使いに勝てるだろうとフィアは思ったのだ。


 「やっぱり、帝国でも師匠の名は知られているのか。」

 「当然だ。クレス王国の最強戦力たる四剣聖は、帝国でも有名だ。帝国の将軍より数は劣るが、四人で同等とまで言われてる。特に、レオン・ハートはその中でも最強と名高い。会えて光栄だ。」

 (将軍達と四人で同等、か。確かに剣聖は強い。中でも師匠は別格だと思う。・・・でも、他の三人が、単なる欲ボケなんて知られていないんだろうな。)


 ジンは、剣聖の存在が有名であることそして、師匠が最強であると評価されていることに、嬉しさを覚えたが、同時に他の剣聖の実情に悲しさも覚えた。実力は評価できるが、人間性が終わっているのだから、当然である。


 「・・・だが、私は役に立てるだろうか?君に勝てなかった私が。」

 「だから、俺が色々教えるんだろ?俺が鍛える方法を教えて強くなれば、フィアは役に立てるようになる。でも、あの時も言ったが、俺の修行は厳しい。逃げ出したくなるかもしれない。明日から覚悟してもらうぞ。」

 「・・・分かった。よろしく頼む。」


 ジンは、含みのあることを言う。フィアは、不安を覚えるも、強くなるためなら何でもやってやると決めていたこともあり、何も言うことはなかった。




 「・・・ぐう!」

 「おいおい、もう限界か?ハート流の弟子達の方が、もう少し動けた気がするな。」

 「む・・・無茶を言うな・・・!わ・・・私は・・・初めてなんだぞ・・・!?」


 翌日、上位弟子の訓練場にて、フィアはジンから指導を受けていた。【超人法】の基本となる身体強化をまず習った。身体強化自体は、彼女はすぐに習得した。特別難しい魔法ではないが、彼女は簡単に体内の魔力を引き出して、使えるようになった。ジンは、彼女の天賦の才に舌を巻く。

 だが、そこから身体抑制を使っての訓練はまた別だった。彼女は、十秒ももたずに魔力切れを起こして倒れてしまったのだ。


 「そうだな。今まで魔法なんて使わなかったから、すぐに魔力枯渇を起こすのは当然だな。これじゃあ、グランドドラゴンから逃げる時に使えていても、役に立たなかったな。」

 「・・・どうやって・・・魔力を増やせばいい・・・?」

 「体力と同じだ。限界まで魔法を使って、回復したらまた限界まで魔法を使う。それの繰り返しだ。他に方法はない。」

 「・・・近道などはないということか。・・・まあ、当然だな。」

 「でも、フィアなら三日以内に効果が現れるはずだ。ここの弟子達も、だいたい効果が見えたのがそれくらいだったからな。」

 「・・・そうか。・・・よし、少しは回復した。もう一度だ。」


 フィアは、少し魔力が回復したのを感じると、再び身体抑制を行い、訓練を行う。結果は、前と同じくすぐにバテてしまったが、彼女の表情は死んではいなかった。寧ろ、繰り返すほどにやる気が増しているようだった。


 (・・・凄いやる気だ。この調子でやっていけば、三日もかからないかもしれない。さすがは未来の英雄だ。いや、それだけ彼女は国を救いたいと本気で願っているんだろう。だから、頑張れるんだな。)

 「ジン。待たせたな。」


 そこに、ケンド達上位弟子がやってきた。彼らは、手に棍棒のようなものを持っていた。それは、木刀より太く、見た目からも相当な重量があることがうかがえた。


 (・・・さて、俺の方も修行を始めるとするか。)


 ジンは、自分も修行を始めるべく、ケンド達の方に行く。


 「先輩方、よろしくお願いします。」

 「・・・なあ、ジン。本気でやるつもりか?」

 「はい。そのために、それを用意してもらったんです。」

 「・・・だがな・・・。」


 期待満々のジンとは対照的に、ケンド達は、不安気だった。


 「大丈夫です。ポーションを用意していますから。」

 「・・・。」

 「お願いします。これは、とても大事な修行なんです。」

 「・・・分かった。だが、キツイと思ったらすぐにやめろと言うんだぞ。」

 「はい。」

 「・・・いくぞ!」


 ケンド達は、ジンを囲むように並ぶと、突然、持っている棍棒でジンの身体を叩き出した。


 「ぐっ!」

 「!?お前達!何をやっている!?」


 ジンが叩かれていることに驚いたフィアは、訓練を切り上げてジンの許に駆け寄ろうとする。だが、ジンはそれを制する。


 「フィア!大丈夫だ!これは、俺の新しい修行だ!」

 「修行!?これのどこが・・・!?」


 ただ棍棒で叩かれているようにしか見えないこれを修行だとジンは言うが、フィアはそれが信じられなかった。どう見ても、無抵抗な人間を痛め付けているようにしか見えなかった。


 「これも、鋼の肉体を手に入れるためなんだ!だから、やらなければいけないんだ!」

 「・・・。」


 こんなものが修行とはとても思えないフィアだったが、ジンの必死な表情に、それを止めることができなかった。

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