第25話 盗賊退治と不可解な頭目
何とか無事に戦いの場所に到着したジンは、盗賊の一人を切り倒すと、手に持つ剣を見る。剣は、返り血はおろか刃こぼれすれしておらず、先ほど盗賊を切り捨てたことなど全く感じさせなかった。
(・・・師匠に念のためにもらった剣、いい切れ味だ。もし、こいつをもらってベオンと戦っていたら、殺してしまっていただろうな。)
村にいる時使っていた剣は、レオンからすれば鈍らもいいところらしく、彼はもしも戦いになった場合に備え、ジンに新しい剣を渡していた。剣自体は、ジンが村で使っていたショートソードを変わらないが、切れ味は比較にならなかった。
(これがあれば、問題なく戦えそうだ。・・・やるか!)
「さあ、盗賊共!俺が相手になってやる!」
ジンは、残りの盗賊を片付けるべく、盗賊達に向かって行く。
「こいつ・・・!」
盗賊達は、仲間を殺された怒りで傭兵達ではなく、突如として現れたジンに向かって行く。
「死にやがれ!」
盗賊の一人が、斧を振り下ろす。ジンはそれを軽々かわすと、盗賊の腕を切り落とす。
「ぎゃああああ!?俺の腕があぁ!?」
「うるさい、黙れ。」
ジンは、叫ぶ盗賊の首を刎ね、止めを刺す。
「このガキが!」
別の盗賊が、剣でジンを突き殺そうとする。だが、ジンはそれを余裕で避け、逆に突きかかってきた盗賊を切り払う。突進していた盗賊は避けられず、呆気なく切り倒されてしまう。
「死に晒せ!」
さらにまた別の盗賊が、今度は短剣を投げて攻撃してくる。ジンは眉間に刺さる前にそれを掴む。
「!?何だと!?」
「・・・弱いな。ストロンさんと同じか、ちょっとだけ強い程度か。これなら身体強化も必要ない。」
ジンは、短剣を盗賊に投げ返す。盗賊はジンと違って避けることも掴むこともできず、眉間に深々と短剣が突き刺さり、そのまま倒れた。
「ど・・・どうなってるんだ!?ただのガキが、どうしてこんなに強い!?」
「ひ・・・怯むな!全員で掛かれば・・・!」
「今だ!押し返せ!」
ジンに完全に盗賊達が気を取られている隙に、傭兵達は盗賊に攻勢をかける。
「!まずい!」
「そこ!」
「に・・・逃げ・・・!」
「逃すな!」
傭兵達の攻勢に動揺する盗賊達をジンは追撃する。両方からの攻撃を受け、あれだけ大勢いた盗賊達は瞬く間に倒され、呆気なく全滅するのだった。
「・・・凄い!あの少年のおかげで助かった・・・!」
「・・・ちっ!」
手下の盗賊達が全滅したのを見た盗賊の頭目は、隊長との戦いを中断し、ジンに向かっていこうとする。
「行かせるか!」
隊長はその隙を付き、頭目に切りかかる。
「馬鹿め!」
だが、頭目はそれを易々と避けると、隊長の盾を大剣で突く。今まで攻撃を受け続けてボロボロだった盾は、呆気なく砕け散ってしまい、隊長もその衝撃を転倒した。
頭目は、隊長に止めを刺すことなく、ジンに向かっていき、切りかかる。
「死ね!」
「!」
殺気を感じたジンは、咄嗟に身体強化を使用し身をかわす。ジンがさっきまでいた場所は、地面が抉れていた。
(・・・なんて威力だ・・・!しかも、剣速もかなりのものだ!身体強化しなければ死んでいた・・・!)
「・・・よく避けたな。ただの子供じゃなさそうだな。」
「・・・それはどうも。」
「だが、少々できるくらいでいい気になっているのが命取りだ!死ね!」
頭目は、大剣でジンに連撃をかける。その剣速は、とても大剣のものとは思えないほど速く、ジンも身体強化を全開にして、回避に専念しなければならないほどである。
だが、ジンは攻撃ができず、頭目も攻撃が当たらないということは、双方決め手に欠けてしまうということでもあり、戦いは硬直化してしまうのだった。
(この小僧・・・ただ者じゃないな!あの傭兵より遥かに強い!俺の攻撃が掠りもしないとは・・・!どこぞの流派の門下生か?)
頭目は、想像以上のジンの動きに舌を巻いていた。さっきまでは、多少腕の立つ子供程度にしか思っていなかったが、これだけやり合えるジンの姿に、頭目は戦慄する。
(こいつ・・・強い!他の盗賊達と比べて明らかに別格だ!おまけに、あのレッサーフェンリルより強い!・・・ただのならず者じゃない!何者だ!?)
一方ジンも、頭目の異常な強さに驚愕していた。盗賊の強さなど、ストロン前後の強さが基本であり、リーダーの強さもそれよりマシなくらいなのである。だが、頭目の強さは明らかに盗賊のレベルを超えていた。おそらく、ベオンや村を襲うはずだったレッサーフェンリルより強いとジンは実感する。今の自分でさえ、身体強化を全開にしなければいけないほどなのだから。
だが、ジンは同時に頭目の正体も考えていた。頭目の剣技は、荒々しく見えるものの、剣を修めた人間が見れば、我流とは思えない洗練されたものであることが見て取れた。そうなると、どこかで教えを受けたものである可能性が高い。
(これだけの腕前があれば、盗賊なんてしなくてもやっていけるはずだ。・・・なのに、こんなことをしているとなると、罪を犯したか、追放処分を受けたどこかの流派の人間ということか。俺の記憶にもそんな達人の名前が幾つかあるが・・・どいつだ・・・?)
ジンは、自身の記憶と頭目の剣技を照らし合わせ、頭目の正体を見破ろうとする。正体が分かれば、対抗する手段も見えてくるからだ。
(・・・大剣を軽々使いこなす豪快かつ繊細な剣技・・・。これは、おそらくバサカ流の剣技だな。・・・そうなると、一人心当たりがあるな。・・・まさか・・・!)
ジンは目の前の人間の正体に気付く。そして、厄介なことになったと思うのだった。




