第24話 盗賊との遭遇
「・・・む?」
「・・・師匠!」
「・・・君にも聞こえたようだね。」
村を出て三日目、ジンとレオンの耳に、何か不穏な音が聞こえてくる。それは、金属がぶつかり合う音や怒号であった。
「・・・どうやら、戦いのようだ。・・・この様子からして、魔物の襲撃ではない。人間同士の戦い・・・おそらく、誰かが盗賊の類と戦っているようだ。」
「盗賊・・・ですか。」
(盗賊か・・・。そういえばこの辺りは、盗賊がよく出ることで有名だったな。俺は運よく出くわさなかったが、結構被害が出ていたはずだ。)
「少し遠くではあるけど、走れば間に合うかもしれない。ジン、君はここにいて・・・。」
「いいえ、俺も行きます!」
「危険だ!ウルフのような知能の低い敵とは違う!それに、相手の技量も分からない!」
レオンは、ジンにここに待機する告げるも、ジンは自身も行くと言う。だが、レオンは敵の強さが分からない以上、ジンを連れて行くのは危険と考え、それを許可しない。
「いいから君は、ここで待っているんだ!動いてはいけないよ!」
そう言い残し、レオンは音の聞こえた方に向かって行く。
「・・・。」
だが、ジンはこのまま待っている気はなかった。確かに身体は十二歳の子供ではあるが、今のジンは、中身は幾度も死線を潜り抜けた戦士なのだ。そして、強さも下手な大人より遥かに強い。盗賊相手であっても負けない自信があった。
だが、それ以上にジンは、何の罪もない人々が理不尽に苦しむことが許せなかったのだ。逆行前、幾度目の前で非道が行われ、それを防がんと戦うも、救うことができなかった苦い記憶がジンにはある。だからこそ、目の前の非道に立ち向かえる力を持ちながら何もしないという選択肢は、ジンにはないのだ。
(・・・師匠の言うことは正しい。俺は子供だ。村でも言われたけど、危険なことに首を突っ込む必要はない。・・・でも、俺にも譲れないものがある。・・・師匠、ごめんなさい。)
ジンは、片腕に魔力を込める。レオンより速く駆け付けるため、ジンは魔力を放出して、それを推進力にするつもりなのだ。
(・・・魔力の単純放出。魔法の初歩中の初歩だ。普通なら、ちょっとものを吹き飛ばす程度の大したことのない魔法だが、今の俺の魔力なら・・・!)
ジンは、腕に込めた魔力を放出する。腕から凄まじい魔力の波動が放たれると、ジンの身体は凄まじい勢いで吹っ飛んでいく。
(・・・成功だ・・・!・・・でも、ちょっと強すぎたか・・・!?)
「うおおおお!」
想像以上に自身の魔力が多かったことで、予想以上のスピードでジンは飛んで行く。そのままジンは、走っているレオンを易々と抜いて行くのだった。
「!?」
レオンは、隣を物凄いスピードで飛んで行くジンに呆気に取られて見ていることしかできなかった。
「ははは!どうした!その程度か!?」
その頃、音がした場所では、大剣を持つ無法者然とした男が、傭兵と思しき男性と切り合っていた。傭兵らしいの男は、鉄の盾で剣を防いでいるものの、盾自体は既にボロボロで、いつ壊れてもおかしくなかった。それだけ激しい戦いを繰り広げているという現れでもあった。時折、手に持つ剣で切りかかるものの、大剣使いの男に軽くいなされていた。
その周囲では、傭兵と似た格好の男達が、盗賊と思しき男達と斬り合っていた。盗賊達は、剣や短剣、棍棒に斧といった武器になりそうなものをバラバラに手にし、身なりも鎧を着ていたり、ボロボロの服を着ていたりと、纏まりがなかった。一方、傭兵達の方は、盾を持たない以外は大剣使いの男と戦う傭兵と変わらないいい剣を持ち、身なりも質のいいものだった。
だが、戦況は決して芳しくはなかった。装備や強さは傭兵達の方が上のようだったが、盗賊達は数に物を言わせ、倒しても次から次に襲い掛かり、拮抗した状況になっていた。
「ぐ!こいつ・・・本当に盗賊か!?強すぎる・・・!」
「隊長!俺達も加勢・・・!」
「駄目だ!馬車が襲われる!お前達はそのまま馬車を守っていろ!」
「余所見をしている場合か!」
大剣を使う男と戦う-隊長と呼ばれた-傭兵が、加勢に加わろうとする傭兵達を制する。この男が、傭兵達の隊長である。そんな隊長に、大剣使いは容赦のない攻撃を加える。
盗賊達と戦う傭兵達は、何かを守るように戦っていた。彼らの後ろには、立派な装飾の馬車があった。彼らはこの馬車を守っているのだ。
(・・・くっ!何てことだ!こんな強い奴が、何故盗賊にいる!?)
隊長は、芳しくない戦況に絶望していた。襲撃を受けた際は、ただの盗賊かと思っていたが、盗賊の頭目と思しき男は、とても盗賊とは思えぬほど強く、この強敵を抑えるために自分が戦うも、それにより仲間と完全に分断されてしまったのだ。このままでは、数に物を言わせた盗賊達に守りを突破され、守るべき依頼人に危険が及んでしまうだろう。だが、助けに行きたくても、頭目の強さは自分より確実に強い。助けに行こうとすれば、すぐに殺されてしまうだろう。
「どうした!?まさかこれで限界か!?」
頭目は隊長を嘲りながら、攻撃を続ける。そんな猛攻を受けつつも、隊長は冷静に敵を分析していた。
(こいつ・・・明らかに手加減している!これほどの腕前なら、盾を弾いて私を殺せるはず!・・・となると、こいつの狙いは・・・!)
「ははは!それでよく傭兵なんて言えるな!さっさと辞めちまえ!」
(・・・私を行かせないためにあえて手加減しているな!私が動けないうちに、手下に馬車を襲わせるつもりだ!盗賊は数が多いが、練度はさほどではない!部下達だけでも十分対応できるが、私に気を取られていてはうまく動けないだろう!その隙に・・・!)
盗賊の狙いに隊長は気付くも、こんな状況では打開策は見出せなかった。
(・・・くそ!・・・ここまでか・・・!)
隊長が諦めそうになったその時、遠くから何かが飛んでくる。
「うおおおお!」
「!?何だ、あれは!?」
それは、一人の少年だった。少年は凄まじい速さで傭兵と盗賊の戦う場に飛んでくる。そして、少年はよたよたとしながらも何とか着地に成功する。
「・・・何とか着いたな・・・!」
「!?誰だ!?」
「・・・助けに来ました!」
少年は、剣を抜くと、傭兵達と戦っている盗賊達に向かって行く。
「ガキだと!?何でガキがこんな所に?」
「おい、ガキ。ガキのくせに何生意気・・・!」
だが、盗賊が言い終えることはなかった。そのまま盗賊の首は、切り落とされていた。
「!?何!?」
「馬鹿な!?」
傭兵、盗賊共に驚愕する。ただの子供と思っていた人間が、一瞬で大人を切り殺したのだから。
「さあ、盗賊共!俺が相手になってやる!」
少年は、闘志を剥き出しにして残りの盗賊達に向かっていくのだった。




