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意外と知らない北欧神話   作者: アイスの棒
永き冬
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73話 知らせ


開戦から十一日が経った。魔物の攻撃は激しさを増し続け、多くの戦死者がでた。アキ達の砦は何とか持ちこたえていたが、他の場所ではそうもいかなかった。

毎日のように『名前付き(ネームド)』の殉死の連絡が入り、予備兵は次々と減っていった。


「雨か…」


アキは天を見上げた。空も大地も真っ暗に染まっていた。流れ落ちる雨は兵士たちの体温を奪い、すでに疲弊している体力を摩耗させていく。ポツリポツリと始まった雨は滝のように降り注いだ。

今日はいつもの怒号や悲鳴、叫び声が遠くに聞こえる。また、多くの死人が出るだろう。そして戦局が大きく変わる--そんな予感がした。


「第4大隊に休息を取らせろ!ミズラの部隊を代わりに行かせるんだ。…違う!そうじゃない!大隊は欠員が出すぎて限界だ。早く再編成しないと!」


アキが指揮所に下りると、セブが士官を怒鳴りつけていた。アキの姿を見ると険しい顔で近寄ってくる。


「どうだ?まだ来てないか?」

「まだですね。このままだと作戦に支障が出ます。他の場所はかなり危うい、特に北西の砦は第一城壁が破られ、陥落寸前ですよ」


アキも同じように表情が曇る。何か言おうとした時、部屋の中央に据えられた作戦机がずぶ濡れになった。黒フードを被った人物が濡れた靴をひっくり返している。


「ほんと最悪だよ、何で今日に限ってこんな雨が降ってるわけ?風邪引いちゃうよ」

「やっと来ましたね…ほんとにギリギリのタイミングです」

「間に合って何よりだ。どうだったんだ?」


アキ達は悪態を吐く黒フードに近づいて言った。フードを脱ぎ捨てながらムッとした答えが返ってくる。


「お出迎えありがとう。それより温かい飲み物をもらえるかな?」

「ロキ、ふざけるなよ。早く報告しろ」

「もちろんさ、早く持って来てよ」


ロキはブスッとして言った。結局、スノリが持って来たスープを一口飲むまで話そうとしなかった。


「これあんまり美味しくないね、できたらなにかの蒸留酒が飲みたいんだけど」

「もういいだろう、成果を話せ」

「はいはい、わかったよ。地図ある?」

「それならお前の腰の下だ」


文句を垂れるロキに向かってアキが冷たく言った。セブが渋い顔をしている。机に乗っていたのは重要な書類群のはずだ。


「あぁ、これね…うわっ、べちゃべちゃじゃん。

まぁあいいや、霜の巨人はここの森の向こう側にいたよ。大層な天幕を張ってた。

いずれ来る神々との戦争に向けてを整備してるんだって。巨人の名前はベルソル、残虐さと頭の悪さが飛び抜けてすごいやつだ」

「交渉の余地はどうでしょうか?を空けることを条件に停戦することは?」

「僕がちゃんと聞いてみたとも、そしたらベルソルのやつは『ロキ、お前がそんなことできる訳がないが、我々は虹の橋(ビフレスト)に着くまで歩みを止める気は無い。何より、人間が踏み潰されるのを見るのは愉快だしな』ってね。言ったでしょ?頭の悪いやつだって」


セブがロキが示した場所を睨みつけた。どこからかコンパスを取り出し、距離を計算している。そして深く息を吐き出してから言った。


「予想よりも少し遠いですね」

「決行できるのか?」

「不可能な距離では無い…他の方法もありませんし、これで行きましょう。

最高司令室へ連れて行ってください。作戦の承認を得なければなりません」


セブの苦々しげな顔が、作戦には大きな痛みをともなくことを暗示していた。

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