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意外と知らない北欧神話   作者: アイスの棒
永き冬
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72話 戦況


開戦二日目、小鬼ゴブリンの突撃は変わらない。昨晩も休むことなく城壁を登り続け、そして死んでいった。此方の被害はそう多くない。前線では入れ替わりに休み、負傷兵はすぐに運び出された。


開戦四日目、戦場に変化が現れた。今まで素手だった小鬼ゴブリン達が武器を持っている。剣や斧、槍などで武装している。今まで蹂躙してきた王国や帝国の武器を奪ったものだ。殺傷能力は上がったが、人間達が押し返した。


開戦六日目、オーガ人狼ワーウルフ寄生する触手(ローバー)などの魔物の群れが、小鬼ゴブリンの軍団の中に姿を見せた。今までより手強い相手だが、『名前付き(ネームド)』が迅速に処理することで死者を抑えている。


「アキ、『虚弱な軍師(ウィークネス)』が呼んでます。行きましょう」


ギュルヴィに言われてアキは物見櫓の梯子を降りた。

開戦から一週間余りがすぎていた。魔物の軍は一日中休むことなく攻め続けている。小鬼ゴブリンの死体は城壁の下に積み上げられ、なだらかな丘を作り出していた。魔物達はそれを踏みつけにし、まるで階段のように利用して壁を乗り越えようとしている。


「どうした?何か問題か?」


指揮所に入ると『原初の火(オリジン)』の幹部達が集まっていた。中には返り血を浴びて泥だらけのものもいる。セブが疲れた顔で口を開いた。


「上位種が確認されました。場所は最も西に位置している砦です。多くの兵士と『名前付き(ネームド)』が二人が犠牲になったそうです」

「…戦いは熾烈になるな」

「ええ、この砦にも明日には現れるでしょう。今までがお遊びだったと思えるほどの攻撃が始まります」

「…よし、これからスノリは温存する。ジークフリートは配置についてもらうぞ」


これから戦争は第二段階に突入する。アキの出番も間も無くだろう。


翌日からは強力な個体群と共に上位種が現れるようになった。死眼を持つ蛇(バジリスク)播き散らす酸鬼(アシッドオーガ)爛れた巨兵(バーンドタイタン)

化け物は兵を踏みつけにし、暴力で命を溶かした。


「城門が破られたぞ!『名前付き(ネームド)』を集めろ!早く!」


中央塔で備えていたアキは素早く一回転した。【無秩序な跳躍】で城門へ跳ぶ。固く閉じた門は共に粉々になっていた。空いた穴からは武装した小鬼(ゴブリンウォーリア)が次々と浸入し、兵士とぶつかっている。

立ち昇る粉塵の中に歪な形の影が蠢いた。身体は不自然に盛り上がり、左腕だけが異常に大きい。


「『膨隆する腕(ライズアーム)』ね。気をつけて、あの左腕には近寄ったらダメよ」

「ジークフリートは北側で他の上位種に当たってる。ここは僕たちがやるよ」


『二対の雫』が後ろから走り込んで来て言った。服は返り血に染まり、砂埃に汚れている。


「どうやってやる!?」


アキは小鬼ゴブリンの斧を飛びのいて躱わし、腰から抜いた短剣で切りつけながら叫んだ。


「君はソプラノの前衛だ。彼女を守ってくれ」


アルトはそう言って膨隆する腕(ライズアーム)に突進した。魔物はびくりと動き、左腕がさらに盛り上がっていく。膨れ上がった腕を振り下ろした。爆音が轟き、一帯が吹き飛んでいく。


「アルト!?」

「….私たちは双生の神、フレイヤとフレイルの子供達。繋がれし者を解き放つ眷属なり。人は常に戒めに縛られ、決められた運命からもがく」


ソプラノは静かに唱えた。爆煙の中にアルトが姿を見せた。手には城壁まで伸びた鎖を持ち、空中に飛び上がっている。


「人は拠り所を求める。道標を探す。生きがいという名の鎖に囚われ、自らの可能性を閉ざす」


アルトの掌から輪が生まれ、幾筋もの光が膨隆する腕(ライズアーム)の身体に突き刺さった。それは鎖だった。魔物は怒りの唸り声をあげた。


「【自由】とは尊く、何よりも【不自由】に近い。これで終わりよ」


ソプラノのが能力ギフトを発動させると、突き刺さった鎖から更なる鎖が生まれ、膨隆する腕(ライズアーム)の身体を締め付けた。未だに膨れ続ける左腕に鎖が食い込み、四肢がが千切れた。魔物はただの肉塊となった。


「後はあの死体を運び出して終わりね。左腕には気をつけて頂戴。あのサイズなら残りの城壁も吹き飛ぶ爆弾になるわ。

さて、次は城門を塞がないと、予備の扉を持ってこなくちゃね」


城門が再び塞がれた時には、周りには魔物とと人間の死体が溢れかえっていた。

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