63話 七角都市
そこは綺麗な街だった。洗練された設計の建物が建ち並び、通りは清潔で人に溢れている。
「ここは間違いなく七角都市ですね。何度か来たことがあります」
「…大きい塔がたくさんみえます」
「塔が七つ、正七角形に並んでいます。あれが、この都市の名前の由来ですよ」
感心するスノリにギュルヴィがにこやか言った。解説はクロボがいないとこいつの役目のようだ。
「よし、ギュルヴィ、計画通りおまえは学院の支部へ。手配されてるかもしれないから用心しろよ』
「分かってますよ。アキさん達も気をつけて」
詩人と別れ、二人は街の酒場に入った。情報収集といえば、人が集まる場所と相場が決まっているものだ。
アキは何気なくカウンターに腰掛け、店主に話しかけた。スノリも後ろをひょこひょことついて隣に座る。
「なぁ店主、少し聞きたいことがあるんだが」
「私にわかることでしょうかね?まずはご注文を伺いますよ」
「…一番高い酒をもらおう。スノリは--」
「私はアイスオレをお願いします」
店主は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにグラスを持って来た。
「お待たせしました…それで?」
「人を探している。『赫眼』と呼ばれてる女だ。灰色の長い髪、ルビーのように赤い目、二十代。知らないか?」
「赤い目にグレーの髪ですか…申し訳ありませんが心当たりはありません。『赫眼』の名前も聞いたことがないですね」
「そうか、ありがとう」
アキはグラスに手をつけず立ち上がった。スノリはそれを見て、慌てて飲み物を空にした。
「…おなかたぷたぷです…」
「別に飲まなくてもいいんだぞ」
いくつかの酒場で同じことを繰り返す、少女は律儀に毎回飲みきった。アキはこの重要事に昼間から酒を飲む気にはなれなかった。
「赤い目はしてないが、灰色の髪といえばうちの市長様も綺麗で長い髪をしていたな」
「市長は美しい女性だよな。あと『紫電の歌姫』もグレーの髪だろ?」
「馬鹿を言え、彼女の髪は白銀だろう」
やっと情報が手に入ったのは、五件目の酒場、カウンターで飲んでいた一人の男と店主の会話からだった。
「市長?詳しく聞かせてくれないか?歌姫の方も」
「なんだ、知らないのか?
七角都市の市長にして、都市国家連邦の『代表十二使』の一人。レイ=デズモンドさんだ」
「『紫電の歌姫』を知らないなんてあんた、相当田舎から出て来たな?連邦で生まれた名の通りの歌姫さ。彼女の歌は最高だぜ?」
店主は同意し、二人して笑っている。アキはこれ以上のものは得られないと思え、席を立った。
「おぉにいちゃん、酒は飲まないのかい?」
「良かったら君に奢るよ」
「ほんとかよ!この『宝石亀の火酒』は一杯で銀貨1枚もするんだぜ!?お礼にとっておきの情報をおしえてやるよ!」
カウンターの男が喜びの声をあげ、アキに向かって手招きをした。
「なんだ?」
「歌姫のことさ、彼女はお忍びでこの街に来てるらしい。なんと今な!これは内緒だぞ?衛兵やってる友達から聞いた話だ」
「…そうか、それは驚きだな。教えてくれてありがとよ」
スノリが頭を下げ、アキは踵を返した。後ろで男がグラスを美味そうに傾けていた。




