表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
意外と知らない北欧神話   作者: アイスの棒
光の神バルドルの暗殺
62/89

60話 夢

62部 夢


「『原初の火(オリジン)』は味方につくとおもう?彼らだって神々と全面的に対立するのは避けるんはずよ」

「彼らは存在自体がすでに対立関係さ。巨人と神々、二つの陣営は相反するものだ。こっちにつくことにメリットがあれば靡いてもおかしくない」

「メリット?たったの五人に何ができるっていうの?」

「人数だけじゃないさ。僕らは『名前付き(ネームド)』だ。派閥ファンクションの情報もある」


双子が言い争っている。アキは静かに聞いていた。どちらの言っていることもわかる。だが結局のところ、どれだけ考えたところでどうしたようもないのだ。人外の力が関わりすぎている。矮小な人間は、その場その場で対応するしかない。

話し合いは深夜まで続いた。今後のこと、戦争を止める方法、フェンリルやヨルムンガンドを倒すにはどうすればいいか、巨人と接触す手段など、いくつもの案や意見が出されたが、どれも成功する可能性があり、また、どれも不可能と思えるものだった。


「仕方ありません…明日は『原初の火(オリジン)』のところに行きましょう。協力を得られなければ、戦闘になるかもしれませんが、現状これ以上の案はありません」


ギュルヴィの発言を最後に会議は終わった。全員疲れ果てていた。明日以降はいつ襲われるかわからないのだ。眠れる時に眠らなくてはならない。そうして皆眠りについた。


アキは会議の途中から一つのことをずっと考えていた。杞憂であれば何の問題もないが…心に引っかかる。

今夜、ずっと見てきた夢の扉を、アキは自分から開けた。




「起きろよ」

「ん…?あれ?」


ロキはゆっくり身を起こした。そこは何もない真っ白な空間、全体に靄がかかっているようだ。目の前にいるのは自身の眷属の人間、そこは神託の夢だった。


「おかしいね、僕は神託をする気は無かったんだけど」

「俺が夢の扉を開けた。鍵を外すのは得意でね」

「…こんなことをするなんて、人間では君が初めてだろうね。それで…何の用だい?」

「二人だけで話したかった。誰にも聞かれず、邪魔されない場所で」


ロキは驚いていた。人間がこんなことができるなんて信じられなかった。だが同時に大きく期待していた。


「ここなら誰もいない、君と僕だけだ。さぁ、話してごらん」

「…ずっと引っかかっていた。ずっと違和感を感じていた。なぁロキ、俺はなんでまだ生きている?」

「…どういうことだい?君は死にたいのかい?」


ロキは笑っておどけながら言った。


「違うんだよ、そうじゃない。

俺はただの大学生だった。なんと特別な力もないただの人だ。そんな奴が異世界に放り出されて、何故ここまで来れたんだ?これは小説やゲームじゃない。能力ギフトがあったって、素人が生きていける世界じゃないはずだ。誰かの助けがないと」

「…」

「ロキ、お前の計画はすごいよ。俺の行動をコントロールして、バルドルを殺させた。そこで考えたんだよ、ずっと以前から俺は、お前の掌で踊らされてただけなんじゃないかってな」

「何が言いたいんだ?」


ロキは言った。もう笑っていなかった。


「これは仮説だ。できたら間違っていてほしいと思う。

俺の旅は始まりから今まで、お前に制御されていた。旅で出会う人たちは、お前の息がかかった人間。『不平等な民衆(アンイコーラー)』、こいつらを使ったんじゃないか?そしてその中の一人は俺の仲間にいる…」


アキは生唾を飲み込んだ。できることなら言いたくない。否定してほしいと祈りながら。


「『魔術詩人』ギュルヴィ、奴はお前の手先か?どうなんだ!ロキ!」


一瞬の静寂、それはアキの言葉が真実であると告げていた。


「…驚いたね。君がそんなに頭が切れるとは思わなかった。

その通りだよ、ギュルヴィは『不平等な民衆(アンイコーラー)』の一員だ。僕が作り出した偽りの眷属の一人。君の旅を誘導する役目を持った僕の手足さ

いつ気づいたんだい?彼の演技・・は完璧だと思っていたんだけど」


ロキは冷たく言い放った。


「名前から違和感を受けていた。ギュルヴィは北欧神話の語り手、寿命ある人間が手に負える役割じゃない。今思えば彼の言葉を受けて、俺たちは旅の向かう場所を決めてきた。スノリが拐われた時、そばにいたのも彼だ。巨人の館(ウトガルド)でも、彼を力比べには参加させようとしなかったな。さっきの会議の時も、やるべきことをまさに提示した。これも全部、お前の命令だったわけだ!」


アキは言葉を吐き出した。最悪の気分だった。信頼していた、仲間だと思っていた。誠実で気のいい吟遊詩人、彼は裏切り者だった。


「…それで?」

「なんだと…?」

「それでどうするんだい?僕を叫弾して終わりかい?真実を知って君は、この先どうする気なんだい?」

「お前の目的を知りたい」

「僕の目的は神々の黄昏(ラグナロク)まで君らを生き延びさせることさ」

神々の黄昏(ラグナロク)は止められないのか?」

「無理だね、運命の収束点だ。起こるのは止められない」


アキは膝から崩れ落ちた。止められないだと?今まで何のためにやって来たんだ。全てロキに操られてきただけだ。悔しかった。


「だけどね、君らを最後の日まで連れていく。そうすれば結果が変わると思ってる」

「君()と言ったな」

「そうだよ、君とその旅隊パーティ。『月明かり』はあそこで死んでもらうしかなかった。君が神の国(アースガルド)に行くことを決心するためにね」


アキは目の前の神を睨みつけた。リサはこいつの計画で死んだわけだ。許せることではない。だが、利用する必要がある。


「お前を信頼してもいいのか?俺たちの目的は同じのようだ。神々の黄昏(ラグナロク)まで生き延びる。そして預言に抗い、結果を変える」

「あぁ、君に新しい啓示を与えよう。世界の終末まで、旅隊パーティと共に生き残るんだ。そのために僕はできる限りの支援を行うと約束するよ」


二人の目線は交差した。アキは頷き、ロキはクスリと笑った。そして同時に一回転し、夢から姿を消した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ