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意外と知らない北欧神話   作者: アイスの棒
光の神バルドルの暗殺
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58話 冷感


アキは地下室に閉じ込められた。狭い部屋を歩き回りながら必死に考えていた。手も足も全身も痛かったが、そんなこと気にしている暇はなかった。

全てはロキの計画だったんだ。三人の子供たちに会わせる。その途中で実際に死ぬことで、復活の代償に体を一瞬奪う。その一瞬で奴は目的を達成した。光の神の暗殺という目的を。


「…バルドルは死んだ」


扉が開いて入ってきたのはオーディンだった。悲痛の表情を浮かべている。アキはできるだけ冷静に、死者の国(ヘルヘイム)での出来事を話した。


「…なるほど、お前を信じよう。私もお前がバルドルを故意に殺したとは思っておらん。ロキの計略か…やられたな。これで預言は進んだわけだ」

「まだ手はあります。死者の国(ヘルヘイム)に行ってバルドル様を取り返すんです」


オーディンは顎にを当てて考え込んだ。ヘルに支払う代償のことを考えているんだろう。


「よかろう…今から死者の国(ヘルヘイム)へ向かう。お前もこい。枷はつけない。【跳躍】を使えば信頼を全て失うことになるぞ」

「もちろんです」


二人は素早く、秘密の通路を使いトールの邸宅を出た。八本脚の馬(スレイプニール)の馬車に乗り込む。軍馬は小さく嗎き、走りだした。


「オーディン様、ヘルはきっと世界全ての者が、バルドル様のために涙を流せば返すと言うでしょう。しかしそれは成功しません。ロキが妨害するのです」

「ふむ、聞いたことない話だが、ひとまずわかった。お前はルーン文字をはじめ、様々のことを知っているようだ」


アキは神話を話した。その後はそれっきり二人は何も話さなかった。馬車は稲妻のような速さで進み、気づけば外は暗く、冷たい氷の国(ニブルヘイム)を通過していた。


「間も無くだ」


窓が突然として漆黒に覆われた。明かりが戻るとそこは灰色の世界。アキが一度きた風景そのままだった。馬車は祭壇の手前で停車し、オーディンは扉を開け外に降り立った。


「あらあら、お早いお着きね。オーディンと…我が兄弟じゃない!」


冥府の女王はニヤつきながら言った。自分の予想通りにこと(・・)が運んだのが相当嬉しいらしい。


「バルドルを返してもらいたい。冥府の女王よ」

「もちろん主神様の命令でもダメよ」


ヘルはクスクス笑いながら続ける。


「わかってるわよね?代償が必要よ。それはちゃんと考えてあったけど…アキ、貴方がいるならもっといいものに変えましょうか」


アキはゾッとした。見たこともない醜悪な笑みだ。


「貴方には仲間の旅隊パーティがいたわね?『祝福の子』『吟遊詩人』『二対の雫』『月明かり』…はもう私のものになったんだったわ。

その魂を全て貴方がここに持ってきなさい」

「それは…つまり…」

「貴方の手で殺せということよ」


アキは息が出来なかった。そんなことは許されない、駄目だ!無理だ!


「それは…承服できない…!」

「アキ、残念だが、数人の命より光の神の方が重要だ。理解しろ」

「ふざけるな!そんなことは出来ない!無理だ!」


冥府の女王はアキとオーディンのやりとりを楽しむように笑っている。狂ってやがる。


「ヘルよ、その条件をのむが、連れてくるのはこいつじゃなくても良いではないか」

「え〜どうしようかな〜。まぁそこの腰抜けには無理よね。いいわよオーディン、その代わりに、そこの虫ケラの魂も捧げてもらうわ」


オーディンはゆっくりアキの方に向いた。


「悪いなアキ、まずはお前からだ。安心しろ、全員苦しみなく送ってやる。スノリは残念だが、世界の光には代えられない」

「本気なのか?本気でそう言ってるのか?」


オーディンは槍を取り出した。それが答えだった。


「クソ!!!クソクソクソ!!!」


アキは飛び出した。そして焦りに脚を縺れさせながら一回転し、跳んだ。

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