57話 結果
アキは息を切らして裏庭にたどり着いた。人影がヤドリギの若木の前に座り込んでいるのが見える。
「ま、待て!」
「?」
振り返ったのは盲目の神ではなかった。ましてや、ロキでもない。
「フリッグさん!?何故ここに?」
「アキ君こそ何故?私は誰かがヤドリギの結界に入った知らせを受けて見にきたのよ。見て頂戴、ここの枝が折れているわ」
アキは踵を返して走りだした。俺はバカだ!ロキがあんなことを言うなんて怪しいと思うべきだった!全てはアキを遠ざけるための罠だ。フレイヤが見たのはフリッグだ。それをロキが幻術でヘズに見せかけたのだ。ヘズはどこに?突然部屋の中にいたはずだ。それも幻で隠して、盲目の神は誰からも相手にされていない。気にするものはいなかっただろう。
全力疾走で足が痛い、それに加えて冷や汗が滝のように出ている。急げ、急げ!
アキが宴の会場に戻った時、神々はまたバルドルに物を投げつける遊びをしていた。ヘズはどこに?--いた。隣にいるのは、最悪だ、ロキだ。手にはヤドリギの枝を持っている。クソ!アキはバルドルの元へ走った。体が限界に近い。
ロキが耳元で囁き、ヘズは枝を投げた。
「うおぉぉぉおおおおお!!!」
間一髪だった。投げられたヤドリギの枝は、バルドルにあたる寸前でアキが空中でとらえた。枝の継ぎ目が手のひらに食い込み、血が出ている。痛いが、これで助かった。これで、神々の黄昏は起きない。やったぞ!アキはやっと一息をついた。
その時、体が勝手に動いた。手に持った枝は光の神の胸に突き刺さった。
「…は?」
響き渡る絶叫、溢れ返る怒号、アキは周りにいた神々に押さえつけられた。
『一回だけ私に肉体を貸してもらう。ほんの1秒間ね』頭の中で冥府の女王ヘルの声が聞こえた。アキは思い出していた。死者の国の出来事を。
「そんな…そんな馬鹿な…」
押さえつけられた体で、目を見開いた先にいたのは、満面の笑みを浮かべたロキの姿だった。




