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意外と知らない北欧神話   作者: アイスの棒
光の神バルドルの暗殺
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56話 徒然


宴は徒然、アキは騒ぎの中心とは離れた場所に腰掛けていた。あの後、ロキがバルドルに物を投げて騒ぎ出し、例の遊びが始まったのだ。バルドルが許したため止めることができなかった。次に気にすべきは盲目の神ヘズだ。彼さえ抑えれば暗殺を阻止できる。


「ん?もしかしてあれか?」


光の神を中心とした輪から離れたところに一人立っている神が見えた。何もせずに騒ぎの方に顔を向けている。アキはゆっくりと近づいて言った。


「やぁ、もしかしてヘズさん?」

「や、やぁ、そうだよ、僕はヘズだ。君は?」

「俺はロキの眷属のアキっていいます。貴方と少し話したくて」

「き、君がアキ君か、噂は聞いてるよ。ぼ、僕と話したいなんて変わってるね。なんだい?」


気の弱そうな性格だ。ロキに付け込まれる隙があるってわけか。どうにかしてロキの悪意に飲まれないようにしなければならない。


「いや、ちょっとね。あそこでバルドル様に物をぶつける遊びをしてるんだけどどう思う?」

「み、皆んな楽しそうだよね」

「あぁだけど投げつけられる本人は嫌だと思うんだ。バルドル様は優しいから気にしていないふりをしているけどね」

「そ、そうかな?そうかもしれないね」


案の定、話に流されている。無理やり言わせているようで気がひけるが、これも光の神を守るためだ。


「俺はあの遊びには参加するべきじゃないと思う。君もそうだろ?」

「う、うん、確かに良くない気がする」

「じゃあ約束してくれ、どんなことがあっても、バルドル様には物を投げないと」

「あ、うん、わ、わかったよ」


アキがやや強く迫ると簡単に話がついた。これで大丈夫だといいが、そう簡単ではないだろう。目を離さない方が良さそうだ。


「話せてよかった。ありがとう」

「あ、うん、ま、またね」


アキは先ほどの場所に戻った。ここならバルドルもヘズもよく見える。あとはロキだが、彼はあちこちに現れたり、消えたりしている。今もどこにいるかわからない。

まぁ、今日光の神の暗殺が起こると決まっているわけではない。だが、宴の席であることは確かだ。これからは嫌でも宴会に参加して厳しく監視していかなければならない。


「やぁ、僕の眷属。楽しんでるかい?」

「ロキ…」

「そんな怖い顔しないでよ。さっきヘズと話してたね?あんなつまらない奴と友達なのかい?」


ロキがからかうように言った。いつの間にか見られていたようだ。


「俺の勝手だろう」

「そうだね、あれ?ヘズの姿が見えないなぁ〜。トイレかな?どうしたんだろうね」


アキは急いでヘズの場所を見た。いない、部屋を見渡しても姿がない。


「クソ!」


アキはバルドルの周りをくまなく探しだした。暗殺があるなら近くにいるはず、どこだ?どこにいる----


「おっと!」

「す、すいません」


目の前に誰かとぶつかってしまった。少し不注意だったようだ。


「アキ君?そんな急いでどうしたの?」

「フレイヤさん…盲目の神ヘズを見ませんでしたか?」


目の前に現れたのは双子の片割れの神だった。酒が回り頰が朱に染まっている。


「あぁ…ヘズだったらさっき、オーディンの家の方に向かってたわね…なぜか急いでたわ…」

「ありがとうございます!」


アキは走りだした。やられた!目を離したすきにヘズにヤドリギを取りに行かせたんだ。オーディンの館はトールの邸宅の目の鼻の先だ。急いで彼を止めなければ…!


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