50話 輝く街
52部
「でかいな…」
神の国へ架かる『虹の橋』は実際に虹でできているわけではない。頑丈な煉瓦で作られている。特筆すべきはその規模だ。アキたちの乗る大きな馬車がゆうに50台は並んで通ることができる。横幅もさることながら、長さも相当なものだ。地平線の彼方まで続いている。橋を渡り始めて一時間ほど経つが、まだなにも見えない。八本脚の馬ですらこれだけ時間がかかるのだ。人の足で歩こうとすれば一体何日、いや何ヶ月かかるだろうか。
「ねぇ、君はその娘のことが好きなの?」
「ん?なんだよ、急に」
「君はこの旅にその娘だけを連れてきた。他にも仲間はいるだろう?『魔術詩人』や『二対の雫』。何故その娘だけ連れてきたんだい?」
ロキはからかうように言った。スノリは顔を赤らめて下を向いている。
「スノリは大切な仲間だ。それ以外にお前に言うことはない」
「ふーん、仲間か…」
「何が言いたい?」
「いや、僕は仲間なんていたことがないからね。どんな関係なのかなって思ってさ」
ロキは孤独なのかもしれない。だが、どうでもいいことだ。彼が孤独なのはその行動や性格が歪んでいるからだ。同情する余地はない。
「あ!そろそろ着くよ!」
窓の外を見てみると、輝く街が見えた。建物は全て、黄金や白銀で作られている。美しく壮大な街だ。これが神の国。
「最初はオーディンの館に行こうか。君らも彼と会いたいだろう?」
馬車は街の通りをゆっくり進んだ。様々なものが見える。屋敷に城、鍛冶場や商店などだ。
「人がいる。ここに住んでる人間がいるのか?」
「彼らは半神だよ、神々の子供達さ。力は強くない、人間の国の『名前付き』より弱いレベルだよ。彼らは神に生まれたというだけで、ここで永遠の幸福を約束される。なんの能力もなくてね」
「そうか…」
半神たちは優雅に永遠にここで暮らすのだ。やがてくる終焉の日まで。
「オーディンの館だ」
三人は馬車を降りた。巨大な館だ。華麗で壮大な館だった。門の前に女性が立っている。甲冑と兜を見つけた戦乙女、オーディンの親衛隊だ。
「やあ、ゲイレルル。久しぶりだね」
「ロキ様、貴方のここへの立ち入りは制限されているはずです。
また、オーディン様は誰かご自分の軍馬が盗んだことにお怒りです」
ゲイレルルは無表情のままチラリと馬車を見ながら言った。
「えー、じゃあここで待ってるから呼んできてよ。『祝福の子」をつれてきたから」
「ロキ様には見つけ次第拘束せよとの命令が出ております」
「そうなの?じゃあちょうどいいね」
ロキは微笑みながら戦乙女に枷をはめられた。アキでも外せるのだ。彼にとってなんの意味もないことは明らかだった。
「じゃあ二人とも行こう。彼女が案内してくれるよ」
案内ではなく連行のはずだが、まぁ、どちらも同じか。三人はオーディンの館に案内されることになった。




