38話 答えあわせ
「おきなよ、おきなってば」
この声、何度聞いただろうか。アキはむくりと起き上がった。少年とも少女とも言える容姿の子供。ロキだ。嬉しそうにクスクスと笑っている。
「全く、ほんとは昨日、神託で会いに行くつもりだったんだよ?ヨルムンガンドに会って、課題の二つ目が終わったから褒めてあげようと思ったのに。まさか鍵付け婆のところに行くなんてね。締め出されちゃったよ。それでやっと眠ったから来たってわけ」
あぁ確かに俺は眠ってしまったのか?それはいつだ?頭がぼんやりしている。
「トールとの力比べ、びっくりしたでしょ?あれは全部僕の幻の能力だったんだよ?
最初に君と食べ比べをしたのは『炎』。あらゆるものを飲み込み消化するからね。まぁ、相手が君なら普通の巨人でも勝ってたかもしれないけど」
ロキは楽しそうに話を続ける。アキはそんなことを遠い記憶の先で感じていた。
「二番目に女騎士の娘と走り比べをしたのは、僕の『考え』。思考の速度にはいくら足自慢でも勝てなかったね。もちろん実態もないから剣も当たらない」
リサが走っていたな。剣で邪魔しようとしてたけど失敗したんだったか。
「三番目にトールの盃に入ってたのは『海』そのものだったんだよ。三口目で減らされた時は正直びっくりしたね。海の水が減ってるかもしれないけど、それは僕のせいじゃなくてトールのせいだ。
四番目の猫は実は『世界蛇』だったんだ!片足を持ち上げた時は流石の僕もヒヤヒヤしたよ」
ロキはオーバーな反応をとってみせた。
「もちろん、君らを案内した巨人スクリュミルも僕の幻だ。正体は『山々』。トールが大鎚を振り下ろすせいで、山はめちゃくちゃだよ」
アキは違和感を感じ、何かを思い出していた。大事なことのはずだ。
「あれ?答えあわせは興味ない?もしかしてもう死んじゃうのかな?
安心していいよ、理不尽な復活や、覚醒なんてことはない。君が立ち止まるなら、君はそこまでだ」
ロキは残念そうに笑った。アキは思い出していた。今すぐ戻らなくては、だが、重傷を負った。このままだと死ぬかもしれない。
アキはロキを見た。悪戯っぽい笑みを浮かべている。全てを見透かしているようだ。アキは決意した。
「悪いなロキ、俺はまだ進む」
「それでこそ僕の眷属だ。子供はあと一人、期待しているよ」
ロキはにっこりと微笑み、くるりと回って姿を消した。




