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意外と知らない北欧神話   作者: アイスの棒
恐ろしい三人の子供達
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33話 ロキの国


目を開くと、そこは暗く湿気のある場所だった。広い空間のようだが、光がなく、周りの様子がわからない。アキは手探りで何かを探そうとしていたが、離れたところから声が聞こえ、そちらが明るくなった。『月明かり』のリサが淡く光る球をかかげている。二つ名にふさわしい姿だ。『魔術詩人』のギュルヴィも、何やら光を灯して歩いてくる。二人とも無事のようだ。


「ちょっと!アキ君これどういうこと?ここどこ?」


リサがアキに混乱したように詰め寄った。


「俺はロキの眷属でね。無作為に移動できる能力がある。今回もそれで跳んだんだ。場所は俺にもわからない」

「アキさん、ロキの眷属だったんですか…海辺でそのようなことを言っていた時は耳を疑いましたが…」


詩人は複雑そうな顔をしていた。アキは謝罪するように軽く頭を下げた。

少し明るくなったところで周りを見渡す、人影はない。どこかの倉庫のようだ。


「トールんは置いて来たんだ。まぁ連れて来たら怒ってたかもね。外に出てみようか」


リサが扉を見つけ、外に出る。アキ達も後に続いた。

通りは人が少なく、陰鬱な雰囲気が漂っている。空は赤く、夕暮れ時のようだ。


「クロボ、ここは?」

「…アキ様、一度話したことを覚えておられるかわかりませんが、ここはバル自治区のようです」


バル自治区、神々の中でロキが最も信奉されている場所。法律は存在せず、あらゆる犯罪が許可されている場所。アキは顔をしかめた。


「バル自治区ですか…私は来るのが初めてです。リサさんは?」

「私も初めてだよ、都市国家連邦の南の端の端でしょ?こんなとこ来ることないもん」


ギュルヴィは困惑、リサは期待しているような顔だ。街行く人々が、こちらを舐めるように見ている。獲物を探す目だ。アキは急いで言った。


「クロボ、どうするのが安全だ?」

「バル自治区には一応宿屋はありますが、何軒かを除いて全て危険です。最もいいのは、適当に家に入ってそこで休むことです。バル自治区には空き家がとても多いので」

「それって人がい《・》なくなるから空き家になるってこと?笑えない冗談だね」


リサが真顔で言った。


「仕方ない、クロボ、比較的安全な宿屋の場所を案内してくれ」

「わかりました。ロキ様の馴染みのところに行って見ましょう。少し話をつけれるかもしれません」


ロキの馴染みの場所なんて危険な香りがするところには行きたくなかったが、仕方なかった。

四人は狭い通路を抜け、暗い階段を降りた。古びた看板が立てかけられている。


「ここです」


クロボの言葉に、リサはあらかさまに嫌そうにしている。お世辞にも清潔な場所とは言えないだろう。

アキは扉を叩いた。中から現れたのはローブを纏った老婆だ。腰が曲り、アキの背の半分ほどしかない。


「おや、旅人様、何かご用ですかね?」

「鍵付け婆殿、私は何度かこちらにお邪魔したロキ様の使い魔です。部屋を一つ提供してもらいたいのですが」


老婆の嗄れた声に、クロボがキーキー声で頼んだ。老婆はじっと、フードの下からアキを見上げている。


「この声は覚えておりますよ。ロキ様の一行ですね。あいにく今日は一つしか部屋が空いておりませんが、それでよろしいですかな?」

「かまいません」


老婆は扉に向き直り、暗い通路を進んだ。手に持った燭台の明かりが、大きく不気味な影を落としている。アキ達も後ろから続くが、恐ろしい気配だ。通路の両側にはいくつもの鍵がついた扉が並んでいる。


「こちらのお部屋になります。朝まで扉が開くことはありませんので、ゆっくりとお休みください」


老婆は一つの扉に案内し、その鍵を開けた。そして一礼すると暗がりに消えて行った。燭台の火はいつの間にか消えている。アキはそっと扉を開いた。

部屋は意外と行っていいほど広く、豪華とは言えないが、十分に物が置いてあった。扉を最後に閉めたリサがため息をつく。


「怖すぎ!あのおばあちゃん何者なの!?」

「鍵付き婆殿は人ではありませんからね」


クロボの一言に全員が固まった。リサは恐怖で顔を引きつらせている。


「運命の女神ノルン様の娘です。ここの館は神や人外のための宿。バル自治区で最も安全な場所ですよ」


クロボは弁解するように続けるが、リサが呟く、それって最も危険な場所もここなんじゃないの、という言葉にアキは心の中で同意した。

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