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3️⃣ 消防学校卒業

 『お前ら、ええ加減にしとけよ!卒業させへんぞ!』

 教官が怒鳴っている。

 酒に酔っているというのと、飲んでいる時に校長に呼び戻された怒りで目が血走っている。校長に叱られたというのもあるのかもしれない。

 『呼集鳴らしたんは誰やねん!正直に名乗り出ろ!』


 呼集からは日が経っているのでもう心臓がバクバクしたりしていない。名乗り出て叱られるのが怖いとかはないけど、名乗りでない約束を破るのは気が引ける。


 『誰が鳴らしてん!はよ名乗り出ろ!』

 同期生もテンションが変になって怒り出してきた。

 『訓練で見せた根性、ここでも見せてみろ!』

 

 ホンマ、訳が分からん。みんな一種の躁状態になっているのか。

 みんな大体、犯人が誰かは分かっている。

 というか、俺だと思っている。

 確かに俺も一枚噛んでいるが、自分では犯人ではないと思っている。少なくとも主犯ではない。共犯者ですらない気もする。ただの目撃者だ。犯人を知っているが、言っていないだけだ。まあ、それはたまたまで状況によっては俺が鳴らしたとしても不思議ではないけど。


 『はよ白状しろ!』

 どんどん、テンションが上がって行く教官と一部の同期生。その圧に耐えかねて一緒に逃げただけの若いヤツ2人が

 『僕たちがやりました‥』

 と名乗り出た。

 若いのでみんなの圧に苦しんでいたのと、席が隣だったので合図し合って2人で名乗り出たようだ。

 『お前ら2人だけでやったんか?』

 『僕たちだけでやりました』


 恐らく他にも犯人(?)は居るだろうが、教官も疲れたのかその場は解散となり、名乗り出た2人は2、3発殴られて終わった。


 しかし、その後に変なテンションになっていた同期生が名乗り出た2人に

 『誰かを庇ってるやろ?主犯者は誰や?白状しろ!』

 と詰め寄っていた。

 

 その時にはもう白状してもええかと思い始めていたが、そんなに怒ることか?

 イタズラで呼集ベルを鳴らす。それも夜中に教官を起こす掟破りの逆呼集や。めっちゃ面白いやん!まあ、面白いと思うか否かは笑いのセンスの問題やからエエとしても、ただの冗談やん。面白くなかったとしてもそんなに怒ることちゃうやん。

 『寝とったのに起こさんといてや』

 『あ〜すまん、すまん、おもろなかった?』

 てなもんやん。

 それを親の仇のように怒る。どうゆうモチベーションで怒ってるねん、と考えたら段々と冷めて来たので、今日初めて話すようになった同期生がイジられキャラで面白かったので夜通しそいつをイジっていた。

 

 翌朝、実際に呼集ベルを鳴らしたヤツが名乗り出た。


 『もうこれ以上、同期生を裏切ることはできひん』

 と泣いていたそうだが、そんな大層なもんか。

 みんなの前で土下座して謝る。

 ちょっと、しら〜っとした空気が流れるが、一応主犯格の1人と見らていたヤツだったので皆の溜飲が下がったかもしれない。

 その後、卒業式を迎える。


 思えばいろいろあった半年間だった。

 前に書いたが点呼の時に騒いでて反省文を書いたり、飲み会で脱いでこれまた反省文を書いたり、みんなでランニングする時に草むらに隠れてサボったり、それがバレて叱られたり。

 卒業前の訓練か旅行か分からんイベントで登山した後に山頂で宴会をした時に教官の話を聞いている振りしながら

 『ホンマにお世話になりました』とか言いながら教官料理を全部食べたり、

 『放水目標前方教官『と言いながら、口に含んだビールを教官にぶっかけたり(一緒にやったヤツはその後しばかれていた)学校長のハゲ頭に金とチンを乗っけてチョンマゲにしたり‥


 とフザけた事しか思い浮かばない。

 一緒にアホなことをして叱られたヤツらとは仲良くなったし、女子達とも意外と仲良くなった。

 26歳(途中で27歳)にして、こんな気軽な時期があるとは思ってもみなかった。まあ、楽しかったが卒業に際して特に感慨深いとかはない。

 他のみんなはどうだったのだろう?

 卒業式ではみんな神妙な顔をしている。

 俺はなんとなくボーッとしていたが、他人から見たら神妙な顔に見えているのかもしれない。まあ、それはいい。

 式が終わって迎えに来てくれている配属先に車に順番に乗って行く。

 その前に並んだ教官と握手をして別れる。

 ほとんどのヤツが泣いている。

 俺は楽しかったけど、先ほども言ったように特に感慨深いとかはないから泣かない。

 泣く訳がない。

 まあ、泣くのは他人の勝手ではあるが‥


 最後に教官に挨拶をしようと思った時、教官が後ろを向いていた。

 教官もボケをかましてきているのだ。こっちもフザけようと思っていたからちょうど良い。

 教官達の後ろを通り過ぎる時に

 『実は呼集鳴らしたん、俺ですねん!』

 と言って走って逃げて車に乗り込む。

 最後までフザけることが出来て俺らしくて良かった。


 しかし、これからは前線だ。フザけてばかりもいられないだろう。

 って今までもフザけない方が良かっただろうが‥


 まあまあ、これからいろいろなことがあるだろうが、ベースのフザけはキープしつつ、たまに真面目になるときはなって、ボチボチやって行けたらと思う。

 そんなこんなで俺の消防学校生活が終わった。


つづく

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