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初恋が叶わないお姫様は、ヤンデレ公爵から逃れられない  作者: 杏仁豆腐


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8/9

アフタヌーンティー 1



遊学用に整えた動きやすさを重視したドレスから、黄色いレースを使ったドレスに着替える。


ふわふわしたAラインのドレスを着たセラフィナは、色素の薄さと相まって、春の妖精のような可愛らしさを放っている。




「セリーヌ、どうしましょう」



ドレスに着替えたセラフィナのサイドの髪を編んでいたセリーヌは、どことなく不安が混じった声に、顔を上げる。


鏡越しに目が合ったセラフィナの薄紫色の瞳は、ゆらゆら揺れていた。



「どうされたのですか?オーレリア様とアフタヌーンティーではなかったのですか?」


「そうなのだけど…。ルシアン様もいらっしゃるのよ」


「それは…まあ…」



セラフィナの思いを知るセリーヌはなんとも言えない顔で押し黙る。


セラフィナはこの4年間、セリーヌの前でもルシアンの話題を出すことはなかった。


小さくて純粋なお姫様は、残酷な失恋をしても、姉姫のことが好きだった。

妹の好きな人を奪った姉にしたくないと、無理やり仕舞い込んだ恋心を暴くようなことは、セリーヌとてしたくなかった。



「おまじない、かけておきましょうね」



するするする、まるで魔法のようにサイドを編み込んだ束を、後ろに持って来て、白百合のコサージュで留める。



「セラフィナ様に、神のご加護を」



祈りと共に留められたコサージュ。


セラフィナにとって特別な白百合。


がんばれ、とただ言われるよりも、セラフィナを奮い立たせる。



ーーこんこん。


お茶会への迎えが来たことを知らせるノックが響く。



「今行くわ。…ありがとう、セリーヌ」


「いってらっしゃいませ」



意を決して扉を開け、ルーファスと共に歩くセラフィナは、さながら戦地に赴く騎士のような気分だ。



「そんな怖い顔すんなって」


「え、私、そんな顔に出てたかしら」


「思いっきり。天使とか言われてるのが、嘘みたいだったぞ」


「それは好きで言われてるわけじゃないから」



ルーファスとくだらない会話をしていると、庭園までが一瞬だった。



「ありがとうね、ルーファス」



こうやって、いつも何気なく、励ましてくれる。


ルーファスが片手をあげてお礼に応える。いってこいって言われているみたい。




「お待たせいたしました」



オーレリアとルシアンはすでに席に着いていた。


城の庭園。

周囲には季節の花が咲き、噴水もあるガセポは、3人のお姫様たちのお気に入りだ。


仲睦まじく談笑していた2人が、まるで一枚の絵画のように綺麗で、ずきり、ずきりと心を抉る。



それでも足を止めなかったのは、声をかける前から、セラフィナが来たことに気づいて、こちらに笑顔を向けて歓迎してくれていたから。



「お招きいただいて、ありがとうございます」



キラキラ、太陽を反射する黄金が眩しい。


なぜ今日は快晴なのかと、太陽すら恨めしいくらいに。



「いいえ、こちらこそ来てくれてありがとう」



そこに掛けて、とオーレリアに言われた通り座ると、ぱっちり、右斜め前に座るルシアンと目が合ってしまう。


にっこり、笑いかけられてはもうダメだった。


久しぶりにちゃんと見た。笑んだ時に甘くなる琥珀色。

前よりも、大人びた顔つき。人好きするような優しい眼差し、表情。


すきだ、と、思ってしまった。

ーーそんなのダメなのに。



ふわり、感情に蓋をするように笑う。


セラフィナにとっては、地獄のお茶会が幕を開けた。



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