お茶のお誘い
太陽が真上から照らしてくる、日盛り。
「昼食会場までお連れしますよ、姫」
「ええ、お願いね」
お互い目を合わせて、小さくくすりと笑う。
人目があるところでは、2人はしっかり姫と護衛騎士だ。
ルーファスの後に続いて、食堂への道を進む。
セラフィナたち王族は、何か用がない限り、毎日3食家族で食べるのが日課だ。
忙しくて席を外すことも構わないが、比較的仲が良いので、基本的にみんな揃うことの方が多い。
そして3食のうち昼食だけは、家族以外に客人を招くことも許されている。
いつも通り、ルーファスに連れられてやってきた食堂。
すでに姉オーレリアとルシアンが座っていた。
「ごきげんよう。お姉様、ルシアン様」
ふわり、膝を折ってカーテシーをする。
「こんにちは、セラフィナ様。お邪魔しています」
「ごきげんよう、セラフィナ」
2人も立ち上がって挨拶を返す。
昼食にルシアンがいるのは、珍しいことじゃない。
16歳から3年間王立フローリア学園に通い、昨年主席で卒業したルシアンは、現在は城で見習いとして勤めている。
父公爵の後に続き、宰相としてこの国を支える存在になるべく仕事の知識と責任を学ぶ傍ら、婚約者としてオーレリアとの語らいの時間も設けていた。
さすができる男、ルシアン・アッシュフォードである。
「セラフィナ様、遊学の件は残念でしたね」
「ええ、今回はご縁がなかったということで、また次回に期待いたしますわ」
にこり、2人に気を遣わせまいと笑う。今朝とは別人だ。
やはり城でお勤めなだけあって、情報が早い。
「では今日は一日中何も予定はないわよね?」
「そうですわね」
「よかった。久しぶりにセラフィナとゆっくりお話ししたかったのよ」
ここのところセラフィナは、遊学の準備に忙しかった。
エシュリオン王国の語学や習慣について学ぶのはもちろん、持ち物や友人たちへの挨拶など、昼食を食堂で摂らない日もあるくらいだった。
ルシアンを避けていたわけではないと、言い切ることはできないが。
言われてみれば、オーレリアと最後にゆっくり話したのは、いつだっただろう。
「よければ午後のお茶、一緒にどうかしら?」
姉からの純粋なお誘いに、セラフィナの胸があったかくなる。
「ええ、ぜひご一緒させてください。オーレリアお姉様」
「ルシアン様も、よろしい?」
「ええ、もちろんです。むしろ姉妹水入らずの御時間に、私は邪魔ではないですか?」
当たり前のようにルシアンに振られた話題に、顔には出さずともぎくりとする。
まさか、3人でという意味だとは、思わなかった。
ルシアンとオーレリアが婚約してからの4年間、2人が共にいる場所での接触はどうしても必要な場合を除いて、できる限り避けて来た。
まだ、2人が一緒にいるところを見るのは、セラフィナには痛かった。
「邪魔なわけないわ。では、決まりね」
オーレリアによって、場所が城の庭園だと告げられてすぐ、王と妃がやってくる。
あまり味が感じられない昼食を食べ終えて、再度準備をしに私室へ戻るのだった。




