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酒飲みオジサン


「久作、新加納から何か報せは入ったか?」


「先ほどと変わらずです。睨み合いが続いております」


落ち着かん。

みんなを送り出したことは何回もあるけど。

今回の戦は数大きく負けてるし……


「うーん……」


今この部屋にいるのは、立ったまま大広間をぐるぐるする俺。

座って陣図の前で目を閉じている久作。

そして……


「殿、一旦腰を下ろされては」


「そんなに心配なさらずとも、我が軍なら大丈夫ですよ」


「そう言うな伊予守殿。殿は皆を案じておられるのだ」


元気なオジサン三人衆がいる。


上から氏家常陸介、稲葉伊予守、伊賀伊賀守である。

めちゃめちゃ元気だね。

常陸介に至っては、息子出陣してんのに心配一切してないね。

まぁ六郎は大丈夫だと思うけど。


「……心配せぬのか?」


さすがに新加納で戦っている皆が負けたらこちらもひとたまりもない。

今は皆が睨みをきかせているけど、今後どうなるか。


「心配してもきりがありません。負けるときは負けるのです」


伊賀守がどこからともなく酒を取り出しながら答える。

本当にどこから出した?


「しかし、死んだ者たちも美濃のために身を投じる事ができて本望でしょう」


「……いざ死ぬときもそう思えるのか」


「さぁ、私は死んだことがないので分かりかねます」


なんだこいつ。

相変わらず掴みどころがないな。

でも皆がそうとは限らないんじゃない?

顔に出ていたのか、伊賀守は盃を並べながら笑った。


「皆がそうとは限らない……殿らしいお考えで」


「しかしそれを考えないのが大将としての役目」


「殿さえ生きていれば我々の勝ちとなるのです」


そう言うと俺の前に杯を置いた。

そこに零れるほどの酒を注いでいく。


「お主も飲むか」


「……頂戴致します」


久作、そしてオジサン仲間二人にも白く濁った酒を注ぐ。

お酒を飲むのは久しぶりだ。

確か最後に飲んだのは元服の時か。

それ以降、何故か喉を通らなかったし飲む気分でもなかった。


「……殿、酒はお嫌いですか」


伊予守が顔をのぞき込ませながら聞いてくる。

横から伊賀守が笑っているのが見える。


「……いや」


盃を顔の前まで持ち上げた。

黒い表面に自分の顔がうつる。


酸いも甘いも飲み込まねば。


「おぉ!良い飲みっぷりですな!」


空になった盃に乳白色の酒が再び注ぎ込まれる。


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