いってらっしゃい皆
というわけで俺はまたもや留守番となりました。
父上が生きてた頃からこうだったけどさぁ……俺ももう十六歳なんですけど。
普通だったら戦場に出てバリバリやっている頃なんですけど。
いやでも殿様だからそんなホイホイはいかないか。
「では殿、行ってまいります」
「いってらっしゃい……」
俺今回やったこと、一般兵みたいな人たちに頑張れーって言っただけだよ。
本当に大丈夫?
当主として大丈夫?
「殿」
「備中守、お前ももう行くのか」
「はい」
すると後ろから備中守より一回り低く、一回り太い男の人が出てきた。
顔とか雰囲気は備中守に似ているけど。
「殿、お久しゅうございます」
……誰?
いや本当に申し訳ない。
大変申し訳ないけど……誰?
「お、覚えておられませんか」
「……すまない」
いつ会ったんだろう。
五歳より前だったら許してほしい。
それより前、あまり周りの人のこと認識していないから。
「殿が数えで十二の時、初めてお目にかかりました」
……全然最近じゃねぇか!!
え?普通に意識あるときなんだけど。
やばい。常識的に。
「延永常陸介盛就にございます。弥次右衛門とお呼びください」
「弥次右衛門、悪かった……」
「いえいえ、滅相もないことにございます」
本当に申し訳ねぇ。
「殿ー!」
「うわっ」
びっくりした。
振り返るとそこには鼻息荒い六郎がいた。
後ろに恐る恐るって感じの下野守もいる。
「なんだ六郎か……驚かせるな」
「申し訳ありません!」
良かった。
すっかり元気になったみたいだ。
「見ない組み合わせだな」
「あぁ、こいつとは前からの顔見知りで」
「歳も同じなので、よく一緒に遊んでおりました」
二人が口々に言う。
確かにこの二人は合いそう。
良くも悪くも真っ直ぐな六郎と真面目で勤勉な下野守。
うーん、少なくとも半兵衛よりは合いそう。
「行ってまいります!」
「はいはい、いってらっしゃい」
そうやって六郎を見送る。
しかし何故か下野守がもじもじして、何か言いたげな様子だ。
「あの……殿」
「どうした」
「戦で武功を挙げた暁には、私のことも小右衛門とお呼びいただけないでしょうか」
あぁー確かに。
半兵衛と六郎、久作は通称で読んでるのに下野守だけ遠い呼び方だ。
それは良くないか。うん。
別に武功挙げなくても呼ぶけどね。
「では殿、行ってまいります」
「行ってまいれ」
そうやって二人を送り出す。
そろそろ皆が城を出る頃だろうか。
「殿」
振り向くとそこには甲冑に身を包んだ半兵衛がいた。
甲冑姿初めて見たかも。
いつもの白い顔は面頬によって隠されていた。
「行ってまいります」
「……あぁ」
半兵衛は大きく頷くと俺に背を向け、皆が待つほうへ歩いていった。




