六郎の顔
その後、皆を集めてあらためて説明をした。
半兵衛に軍を率いてもらうと言うと、皆うーん……みたいな顔はしていたがそこは半兵衛に頑張ってもらうしかない。
俺が変にここで庇ったらなんかややこしくなりそうだし。
それに半兵衛はなんだかんだ強かな奴なので大丈夫だろう。
その後少しばかり話し合いもあったが、夜も更けてきたということでその日はお開きとなった。
「六郎」
みんなが退出したすぐ後、俺は急いで六郎の背中を追った。
今回六郎はやけに半兵衛に反発していた。
半兵衛を中心に皆で話し合った時も会話に入ってこなかった。
「どうしたのだ今日は」
「……殿」
「お前らしくない……とまでは言わないが、あのように強く当たるのは見たことないぞ」
六郎は声もでかいし、口調も男らしすぎるほど男らしい。
あれみたいな言い方は珍しくないが、本気で怒鳴ることはほとんどない。
今日みたいなのは見たことなかった。
「申し訳ありませぬ」
「私は構わないが……」
六郎は静かに謝ると、何とも言えない表情で顔を上げた。
半兵衛は子供のころから変わらない。
いつでもクールで、六郎を揶揄うのが好きで、年上が若干苦手な半兵衛のままだ。
そう考えると六郎はだいぶ変わった。
勿論大きな声と少しばかり低い沸点は相変わらずだ。
でも真面目な話の時の顔とか、戦っている時の顔とか。
毎回知らない六郎が顔を覗かせる。
でも、今日は。
「殿、何故半兵衛のことお許しになったのですか」
「あやつには一度決めると突っ走る癖があります。軍を任せるのは危険では?」
六郎は眉を顰めながら俺に聞いた。
月が彫りの深い彼の顔に影を生む。
「……心配しているのか?」
そういった瞬間、六郎の顔は一気に赤くなった。
それは怒りによるものか、はたまた恥ずかしさによるものか。
どちらとも言えないなぁ。
「違います、断じて!!」
「えぇ~」
「誠です!!」
そう言うと六郎は息をぜぇぜぇ吐きながら俺の前に膝をついた。
そうして大きく息をついて落ち着いたのか、顔を上げた。
「殿」
「この氏家六郎直重にお任せを。必ずや殿のお役に立ってみせまする」
六郎は子供のころから変わった。
毎回知らない六郎が顔を覗かせる。
でも、今日は。
「必ず生きて戻ります」
幼馴染のよく見た顔だった。
「あぁ、待っている」




