大きくなったなぁ
「殿」
「どうした、下野守」
織田との和議から一年、朝倉と何通かの密書を交わした。
もちろん目的はお貞を嫁に貰ってもらうためだ。
半兵衛いわく、同盟を結ぶにおいてこれは大事な一手らしい。
まぁ俺が手紙書いているわけではないんだけど…
そんな中、下野守がドタバタと駆け込んできたのは美濃に雪が降り始める時期だった。
「朝倉から書状が…」
「誠か。今回は長かったな」
送ったのは三か月前なので、だいぶ期間が開いてる。
この時代は現代みたいにメールで…とか、電話で…とかできない。
不便である。
「久作、皆を集めてもらっていいか」
「はっ」
とりあえず全体会議である。
…
「殿…」
「う、うーん」
「いかがなさいますか」
どうやらお貞を嫁にもらってもらう作戦はうまくいきそうである。
しかしそのお相手、旦那さんが問題である。
「孫八郎景信殿…半兵衛知っているか」
「……いえ、申し訳ありません」
俺が知らないのはいつものことだけど、皆も知らないらしい。
皆が知らないってことは当主…つまり朝倉のトップから遠い存在なのか?
それはお貞を嫁にいかすあまり意味がないのでは?
皆で悶々としていると、隼人佐が手紙を広げながら口を開いた。
「文によりますと…孫八郎殿は朝倉のご当主の父の弟の孫にあたるそうです」
「…つまり?」
「ご当主の左衛門督義景殿と、孫八郎殿のお父君が従兄にあたるということです」
「と、遠いね…」
もはや他人。
いやでも、血のつながりが大事な戦国時代では近いほうなのかな。
「一方殿は母は違えど実の妹、釣り合いが取れないのでは?」
「人質としての意味がなくなってしまいます」
伊賀守と常陸介が次々に言う。
従兄弟の息子の嫁、となればその家の当主にとってあんまり重要なポジションではない。
裏切る時に躊躇もなくなってしまう。
皆で黙り込んでしまっていると、同席していたお貞が顔を上げた。
「兄上、行かせてください」
「しかし姫、それではあまり嫁に行く意味がないと…」
「半兵衛黙って」
「…はっ」
半兵衛は強く出られないようだ。
でも俺もあんまり良くないと思っている。
リスクがでかいのに妹を危険な場所に行かせるわけには…
「兄上」
顔を上げるとお貞と目が合った。
久しぶりに直視した妹の顔は随分大人びていた。
「この貞にお任せを。必ずや一色の役に立ってみせます」
孫八郎景信は捏造です。




