長井先生といっしょ!!パート2!!
やけに空気が生ぬるい。
ベタベタしているのが嫌で、腕をゴシゴシさする。
今俺は戦の本陣の奥の奥の奥の…みたいなところで陣図と睨めっこしている。
一応これが俺の初陣となる。
初陣って言ってもなぁ…なんにもしてないしなぁ。
当主が戦いに一切参加しなくて本当にいいのか。
まぁ理由はさんざん言われたけどさ。
「殿」
「長井先生、そろそろ出立か」
それに頷く先生を横に促す。
先生はちょっと迷ったような仕草をしたけど、結局俺の横に腰を下した。
なんか変な感じだな。
家督を継ぐ前は先生は俺のことを叱る、上の立場の人間みたいな感じだった。
あ、別に偉そうとかそういうアレではなくて。
ただ単に俺の現代っ子の感覚で先生は偉いモノって、潜在的に思っているからだと思うけど。
だからこうして当主としての俺の命令を聞く長井先生を見るのはとても不思議な感覚だ。
「…」
なんか穴が空きそうなくらい見られている、長井先生に。
「ど、どうした」
「あ、いえ」
先生が誤魔化すように視線を逸らすので余計気になる。
こういう時言ってくれないんだよなぁ長井先生。
「気になるな」
「……あの若がご立派になられましたなと、思いまして」
先生もか。
この家の家臣の人俺に対してそれしか言わないな。
みんな親戚のおじさんみたいなムーブで接してくる。いいけど。
「先生、私のこと何歳だと思ってる。もう数えで十五だぞ」
「はは、そうでした。もう稽古から逃げ出すような童ではありませぬな」
はは、と声を挙げて笑う長井先生。
その節は…すみませんでした。
「いやしかし、誠に立派になられましたな」
「もう私が殿には教えることはございませぬ」
笑いを落ち着かせた先生が言う。
教えることないかな、本当に。結構俺アホだけど。
「まだある気がするが、教えること」
「あるやもしれませぬが、これからは己の力で様々なことを乗り越えねばなりません」
俺が目線を下に向けると、長井先生は俺の前に回り込んできた。
そしてまっすぐ俺を見る。
「当主となった以上、この先の道は決して楽なものではないでしょう」
「しかし殿なら乗り越えられまする。乗り越えられるよう今までご指導してきたつもりです」
「それに」
長井先生が優しく口角を上げる。
「それに殿はもともとそのような器がある、と私は考えています」
そんなことを言って先生は立ち上がった。
そして俺が何か言う前に出口に向かって歩き出してしまった。
しかしふと立ち止まって振り向いた。
「そういえば殿。その陣図、隣の物のほうが見やすいかと」
「え?」
長井先生はにっこり笑うと、再び背を向けて出口のほうへ向かっていった。




