戦くるの早すぎんだけど
「と、殿!織田が…織田が!」
父上の死から二日経った。
俺は当主になる決意をして…というかせざる得なくなり、一色家の家督を継いだ。
正直言って何が何だか、まだあまり頭が追いついていない。
まずやることが多すぎる。
父上の葬儀のあれやこれやは隼人佐がやってくれけど、挨拶に来てくれた人たちの対応は父上の息子である俺がやらなきゃいけない。
これがまた長い。当たり前だけど。
その後、家督の引継ぎの諸々をやった。
こういうのってなんか兄弟とか親戚とかと争っているイメージがよくあるけど、俺は争う相手がいなかったもんでそういうのはなかった。
でもそれにしても多い。仕方ないけど。
そんなバタバタの中、これである。
「何?上総介殿がどうかしたのか」
またなんかやってんのか、あのハラスメント男。
今度はなんだ、また兄弟争いか?
「せ、攻めてきました!」
え?
「なんと、それは誠か!?」
ばっ、と日比野下野守が立ち上がる。
「はい、本郷村に忍ばせておいた密偵より報せが」
え?ちょっと待って……ん?
まずいのでは?
非常にまずいのでは?
え?織田信長攻めてくんの?
俺の僅かな歴史知識によると織田信長は相当強いみたいな雰囲気だったけど。
と、とりあえず…
「陣図持って来て」
「はっ」
陣図ってのは敵味方の陣地、通った道などを簡単に描いた図のことだ。
もちろん知らなかった。
「こちらに」
「ありがとう」
この図見にくいんだよね。
なんか山とか川しか城とかしか描かないんだもん。
みんなこれホントに分かってんのかな。分かっているふりしてない?
「上総介…織田信長がおよそ千五百の軍勢を率いて本郷村より木曽川を渡河し美濃の西より進行してきました」
「千五百…こちらはどのくらい用意できる?」
そこに座っていた氏家常陸介に顔を向けて尋ねるとしばらく唸った後、彼はバッと後ろにいる隼人佐に振り返った。
知らないんかい。
隼人佐は神妙な面持ちでゆっくり答えた。
「およそ二万…と申し上げたきところではございますが」
「殿は家督を継いでまだひと月と経っていません。それに殿はまだ数えで十五」
「今、すべての兵が集まるとはお思いにならない方がよろしいかと」
だ、だよね~
急に国もトップが十四歳のガキンチョじゃ、ついてきてくれないよね。
え?じゃあ結局何人くらい集まるんだ?
隼人佐はにがーい顔をした後、引き絞るように言った。
「…およそ五千かと」
え?
「す、少なーい…」




