望まぬ覚悟
父上の葬儀はすぐ行われた。
雨がひどく降っていて、まとわりつく空気が気持ち悪い。
あの時、俺には何が起こったのかよく分からなかった。
ただ、皆が父上を囲んで何か言ってて。
半兵衛と六郎が俺に呼び掛けていたのは覚えている。
急すぎるよ。
いや、前々から病気ではあったけど。
ようやく俺が元服して、これからってときじゃん。
もしかして自分が死にそうだったから、俺の元服許したのかな。
そんなことを思いながら俺は一人で庭を見ていた。
父上がいなくなってしまった今、俺が当主になるのだろう。
しかし、こんな状態の俺に当主は務まらないのではないか。
父上が亡くなり、何も出来ないままの俺では戦国時代を生き抜けないのではないか。
もともとはただの高校生なのだ。
そんな急には変われない。
「若殿」
声をかけられて顔を上げると隼人佐だった。
父上の異母兄でもある隼人佐は、俺を気遣ってお葬式の諸々をやってくれた。
いつも読めない表情をしているが、今日はどことなく暗かった。
「隼人佐、いろいろありがとうございます」
「いえ…母は違えど兄なもので」
…やっぱあんま似てないな。
隼人佐は大殿に似て、何事にも動じなそうなところが顔に出ている。
父上はいつも余裕がなかった。少なくとも、俺が知っている父上は。
何かから逃げるようにせかせかと生きていた。
生き急ぐっていうのだろうか。
「若殿、若殿は急ぎ家督を継がねばなりませぬ」
隼人佐が俺の目をのぞき込みながら言った。
その目には強い意志を感じた。
「若殿が家督を継がねば、一色…いえ美濃が混乱に陥りまする。ここはなにとぞ」
俺はすぐには答えられなかった。
今まで父上、大殿がして来たことを俺ができる気がしない。
一色の家の皆を率いていけない。
あぁ父上、早すぎるよ。
すると急に隼人佐が肩をガッと掴んできた。
その目は見開き、鬼気迫る勢いだった。
「若、若殿。よく聞いてください」
「このままでは美濃は他国、尾張に滅ぼされてしまいまする。終わりが襲ってこなくとも他に美濃を囲む五つの国が襲ってきましょう。主のいない国など一瞬で滅びまする」
「殿の…御父上の美濃を守るのは貴方様にございます。一色の血をひく男は貴方様しかおりません」
「家督をお継ぎください、若殿。…それしか道はございませぬ!」
その時俺には選択肢などないのだと知った。
もう一色の家督を継いで、美濃を守るしかないのだと。




