改名に次ぐ改名
「名を改めるのですか?」
「あぁ」
突然だな父上。
思わず貞と元と遊んでいた手を止める。
ちなみに今年で貞は十一歳、元は四歳である。
時の流れは早い。
「この前、私は京に行った。覚えているか」
あ~なんか行ってたな。
結構長い間いなかった気がする。
「私は上様にお目通りした。御相伴衆に任じられ、その際一色を名乗ることを許された」
上様…将軍のことか。
俺初めて将軍って聞いたとき、徳川家康しか知らなかったからさ。
将軍ってたくさんいるんだね。
「いっしき?」
「いっしき!」
可愛い妹たちが同時に聞く。
まぁ元はお姉ちゃんの言ったことを繰り返しただけだろうけど。
どちらにしろ可愛い。
「一色というのは足利家ご一門の一つでな。土岐よりも上のお家だ」
それって結構すごいのでは?
しかも将軍様じきじきに認められたってことでしょ?
「おめでとうございます」
父上嬉しそうだな。
まぁ大殿の時より出世?してるからかな。
父上の大殿コンプレックスはなかなか根深いようだ。
「よって私は一色義龍をこれから名乗る」
ん?
「下のお名前も変えるのですか?」
「あぁ、ついでというわけではないが」
いや良いんだけど。
父上この前も変えてなかったっけ?
そう父上は弟の孫四郎、喜平次を殺しちゃった後、范可という名前に改名している。
不思議な名前だなーと思いましたね、その時は。はい。
そしたらそこから一年足らずでまた改名した。
今度は高政である。
つまり今の父上の名前は斎藤美濃守高政だった。
まだ三年も使っていない名前だ。
それをまた変えるの?
「つまり一色美濃守義龍となるということですか?」
「いかにも」
うーん、しばらく慣れないだろうな。
まぁでも名字使うことはそうそうない。
ほかの国の人は使うけど、城内の人は若か名前で呼ばれる。
俺基本的に城を出ない。もはや引きこもり。
「お前も将来、一色を名乗ることになるぞ」
そういえばそろそろ俺の元服では?
「父上、私の元服は…」
「おお、そうであった」
俺も今年でもう十二歳、いつ元服してもおかしくない。
現に半兵衛は十二歳、六郎に至っては十一歳で元服してる。
いや別に大人になりたいわけではないんだけど。
みんなより遅いと気になるというか。
そういえば俺の小姓として仕えてくれた小兵衛も元服した。
名前は竹中久作重矩になった。例によって誰やねん。
いやこれで知っている人だったことないんだけど。
「…まだ早いのではなかろうか」
「そうにございますか?」
「後二年は待ちだな」
え、そんなにあかんのか。
地味にショックだわ。
ふと父上が背中を丸め、咳き込む。
おじさんがするような軽いやつではなく、苦しいやつだ。
父上の顔が苦痛にゆがむ。
「大丈夫ですか?父上」
「あぁ…大事ない」
そう言うと父上はまた笑顔を見せた。




