大暴れらしい上総介殿
ぱちっ、ぱちっ。
将棋を指す音だけが響く。
「う、うーん…」
「若」
「分かってるよ」
久しぶりだけど、全く駄目だ。
何回目か分からないくらい半兵衛と将棋はしているけど、まだ一回も勝ててない。
将棋を始めて六年、筋が悪いわけじゃないと思うけどなぁ。
ちなみに六郎とは六分四分である。
もちろん六は俺。
「若」
「…参りました」
半兵衛は満足そうである。
こんな弱いやつにかって嬉しいか?
「もう一度、よろしいですか?」
「いいけどさ…」
ブーブー言いながら駒を片付けていたら、ふと六郎は口を開いた。
「そういえば、織田上総介殿の件はご存知ですか」
上総介殿の?
また何かしているの、あの人。
「弟君の武蔵守殿が誅殺されたそうです」
「弟…まだ尾張は落ち着いていなかったんだっけ」
「はい、先の戦で敗北してなお、謀反を企んでいたそうで」
もう、嫌かも。
兄弟で争いすぎかも。
現代の感覚が抜けきっていないかも。
父上と全く同じルートやん。
あ、でも上総介殿はお父さん亡くなってから争い始めたんだっけ。
「これで…尾張はもはや盤石でしょう」
そういえば岩手から竹中に名字を変えた半兵衛が駒を置きながら言う。
うーん竹中半兵衛重虎…
相変わらず誰なのかさっぱり分からん。
「み、美濃だって負けてはおりませぬ!」
六郎がバッと立ち上がった。
「別に美濃がどう、尾張がどうの話ではござらん」
「織田と繋がりがあったのは、帰蝶殿のお父上であらせられる大殿のみと言っても過言ではない。その大殿の討った殿は織田の敵にござる」
「なるほど」
もはや以前と同じように同盟が結んであるって訳でもないのか。
え、ヤバいのでは?
「それゆえ、織田の今回の件は良きことではございませぬ」
将棋の駒を並べながら、半兵衛が難しい顔で言う。
「…これからどうなるかねぇ」
ガチで分からん。
これは俺が馬鹿なのか、難しすぎるだけなのか。
「少なくとも、あの上総介殿が尾張のみで満足されるような男でないことは確かです」
だよね。
信長って俺でさえ覚えていたんだから相当凄い人よ。
多分ね。
「間違えなく、荒れまする」
そう言う半兵衛の顔はワクワクが抑えられないといった具合だった。
戦闘狂かな?




