初めて将棋をやりました
「将棋、将棋はどうでしょう!」
というのは彦丸クンの提案である。
「将棋?」
「はい、ご存じですか」
もちろん知っている。
…ほら、あの、えーっと。あれだよあれ。
なかなか出てこない俺を治兵衛クンが見かねて
「…お教えします」
「ハイ」
というわけで治兵衛クンに将棋を教えてもらいました。
「なるほど、だいたい分かった」
「では指してみますか」
聞いた感じ、結構むずそうである。
「二人のどっちが俺の相手やってくれるの?」
「私より治兵衛のほうがよろしいかと」
「…私か」
普通に無理じゃね?
治兵衛クン頭良さそうすぎるもん。
ところが
「…参りました」
「お、おう」
なんか勝っちゃった。
えぇー嘘。
俺初心者だよ。
治兵衛クンそんな感じで将棋できないってことある?
ちらっと彦丸クンを見て俺は察した。
分かったこれ手抜いてるな。
だって彦丸クン、嘘だろみたいな顔してるもん。
あの治兵衛が…!?みたいな顔だもん。
遠慮か…?遠慮してんのか?
気づいちゃったせいかもしれないけど、治兵衛クンが若干気まずそうに見える。
「治兵衛クン、ホントに違ったら申し訳ないんだけど」
「はい」
「…手、抜いてる?」
治兵衛クンの目が大きく開かれる。
いやそれバレたときの反応やんけ。
ホントに手抜いてたんかい。
「…なぜ、そうお思いに?」
「え…いやだって、彦丸クンの顔にすごい出てたし」
そう言われて治兵衛クンがキッと彦丸クンを睨みつけた。
美人の怒った顔は怖い。
彦丸クンは自分の顔をペタペタ触っている。
「…申し訳ありません、お許しを」
ここに来て治兵衛クン、土下座である。
いや、手抜いたくらいで土下座しなくても…。
「申し訳ありません…!私も何も知らず…」
ここで彦丸クンも参戦である。
この時代の人、土下座しすぎじゃない?
「別に何にも怒ってないよ」
そんなことで怒る人いないよ。
「ただなんで抜いてるのかなーって」
治兵衛クンの顔が曇る。
これはもしかして大人の事情ってやつかな?
ならしょうがないけど。
「言わなくていいよ。ただ次からは本気でやってほしいな」
治兵衛クンは頭を下げたまま
「はっ」
と返してくれた。
そして本気の治兵衛クンと戦うことになったんだけど
「う、う〜ん」
「…」
ボロ負けである。
正確に言うとまだ負けてはいない。
しかし、詰みである。
ちらっと治兵衛クンを見てみる。
「…」
虚無である。
どういう顔?それ。
おそらく未来の主君になりそうな奴が馬鹿すぎてそんな顔なの?
「…楽しくない?」
「いえ、そんなことは」
絶対そんなことあるじゃん。
「じ、治兵衛お前、若君になんてことを…」
彦丸クンは真っ青である。
だからそんなことじゃ怒らないって。
対して治兵衛クンはあいも変わらず虚無である。
しかし顔がどんどん白くなっていってる。
だから怒んないって。




