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父上の帰城


父上が帰ってきたのは戦が終わり、夜が明ける前だった。


「戻ったぞ」


「おかえりなさいませ」


母上が出迎える。

俺と母上はこの部屋で何時間も寝ずに待っていた。

流石に眠いとは思えないけど。


「喜太郎」


父上がこっちを向く。

戦の興奮が抜けてないのか、目がギラギラしたままだ。

正直言って、だいぶ怖いよ。


「大殿を…父上を討った」


それを聞いて俺は俺自身が思っているより、ショックを受けた。

父上と大殿が戦うって聞いた時は正直そんなに動揺してなかった。

そうなる、そうなるっていろんな人に言われてたから。

俺はもう戦国時代に慣れたもんだ、と思っていたけど。

そうでもなかったみたい。


「…ご勝利、誠に大慶に存じます」


頭を下げる。

なんとなく父上の顔を見てはいけない気がして。


「小牧源太という男が討ち取ったそうだ。私は大殿の亡骸を見てない」


そろそろ良いだろうと思って顔を上げると父上は縁側にいた。

日は沈んだままなので外はとても暗い。

父上の顔はよく見えなかった。


大殿…おじいちゃんのことを思い出す。

本当のことを言ってしまえば思い出とかほとんどない。

会ったことあるのも年始に何回かあったのと、聖徳寺の時ぐらいだ。

そんな俺でもこんなにショックなのだ。

父上は相当なのだろうか。

それともあの親子関係ではそんなになのだろうか。


「喜太郎」


「はい」


俺の方を振り向いたので、そこで初めて父上の顔を見た。

父上は怒っても泣いても、またしてや笑顔でもなかった。

ただ静かで穏やかな顔立ちだった。

その目はなんの色も見えない。


「私が、大殿が討ち取られたと聞いた時、何を思ったか分かるか」


ふと俺に聞いてきた。


「…分かりませぬ」


「幼き頃、父上と過ごした日々を思い返した」


その後少し目を伏せると、


「…それと共に大殿に対する恨みも」


と言った。


父上は俺の前に立つ。

月の光が雲の間からさして、父上の顔を陰に入れる。


「我らはこのような定めだったのだ。どのような道を辿ってもこうなっておった」


言い聞かせるように俺に言った父上は俺を抱きしめ、そのまま動かなくなってしまった。


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