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六郎と初陣トーク


父上が叔父さんたちを殺して数か月が経った。


相変わらず俺の周りは嫌というほど静かで、それが逆に不気味だった。

周りの大人の目も一層厳しくなって、外に出ようもんなら全力で止められそうだ。

まぁ出ませんけど。


「喜太郎、元気がありませんね」


「母上」


そんな俺に母上が訪ねてきた。

実は母上と会うのは数か月ぶりである。

戦国の風習か分からんけど、この時代はびっくりするくらいお母ちゃんと会えない。

むしろ乳母さんの方がよく会う。


「やはり岩手殿のことですか」


「…はい」


そう今の俺の主な悩みは半兵衛とその家族である。

なんと岩手一家は大殿側…つまり父上の敵側についた。

俺はいまバリバリに父上の陣地にいるため会うことはおろか、手紙のやり取りもできない。

もちろん小兵衛もあちら側へ行ってしまった。


「やはり友を的に回すのは心苦しいです」


しかも今回半兵衛は初陣らしい。

もしかしたらこちら側の人に殺されてしまうかもしれない。

急に死というものを身近に感じるようになってしまった。


「仕方がありません」


母上がぼんやり遠くを見つめながら言う。

庭には薄く雪が積もっていた。

自分の吐く息が白い。

大桑城でも雪は積もっているのだろか。


「そういうものなのですか?」


「そういうものなのです」


母上は浅井っていう家からお嫁にやってきた。

現代ではなかなかないだろう政略結婚ってやつだ。

その母上だからこそいろいろ考えることがあるのだろう。


「若」


「ひこ…六郎」


また間違えた。

そろそろ慣れんとなぁ。


「この桑原六郎直昌、次の戦を初陣とすることが決まりました」


なんとこっちも初陣である。

そうかそりゃそうだよな。


「頑張ってね」


「はっ」


しかしどこか浮かない顔である。


「どうしたの?」


「いえ、まさか初陣の相手が大殿とは思っておらず…少々困惑しておりました」


だよね。

よその国とバチバチやるのかなと思ったらお家騒動だもんね。

浮かない顔も当たり前か。


「しかもあちらには半兵衛もおります」


「そうだよね、迷っちゃうか」


そう言うと、六郎はバッと顔を上げて


「迷いなどありませぬ!むしろあやつを倒せるかと思えばせいせいします」


と言い切った。

あぁ、そう…。

そういう子だもんね、貴方。


「しかし、某に半兵衛を倒せるでしょうか」


「自信ないの?」


「いえ、向かい合っての勝負なら負けませぬ。誰があんなヒョロヒョロに負けますか」


知らないところでディスられる半兵衛。

可哀想だけどそれは本当にそう。

俺でも勝てたもん。


「しかしあいつが大将となり兵を動かすようなことがあれば…悔しいですが負けてしまいます」


「動かすかなぁ。まだ数えで14だよ」


「万に一つの話です」


確かに二人は長い知り合いだけど、六郎は一回も半兵衛に勝ててないもんね。

いつも余裕でボッコボコだもんね。


「…俺は戦いたくないなぁ」


ついぽつりとこぼしてしまう。

未来の殿様として絶対言っちゃダメだけど。


「大丈夫です、若」


「若が出る間もなく、某が敵を討ち果たして見せまする」


「…頼もしいね」


「はっ」



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