いいなー俺も弟ほしいなー
竹中(岩手)重矩の幼名を小兵衛としています。
フィクションです。
すっかり秋も深まったころ。
「弟の小兵衛にございます」
長井先生から抜け出し、縁側でぼーっとしていた俺に半兵衛が弟を連れてきた。
「お初にお目にかかります。小兵衛にございます」
ぺこりと頭を下げる小兵衛。
顔は半兵衛そっくりだけど雰囲気全然違うな。
半兵衛は意外と強気なところあるけど、こっちは若干大人しい気がするな。
「喜太郎だ。よろしく」
「は、兄から若のお話は聞きおよんでおります」
えっ、半兵衛何言ったの。
変なこと言ってないよね?
…彼は何歳くらいだろうか。
見た感じ俺のちょい下くらいだけど。
「今年で十一になりました」
え?年上?
俺の年下ってこの国にいないの?
俺は一生同学年と出会えないの?
いや、この時代に同学年なんて概念ないだろうけど。
「それで小兵衛…どんな用件でここに?」
今更弟を紹介するだけではないでしょ。
そうすると横にいた半兵衛がこちらをぐるりと向き直して
「斎藤家の嫡男であらせられる若君に小姓が一人もおられないというのは、いささか…」
と難しい顔をしながら言った。
あぁ、それで彼が…
いま俺の周りの世話をしてくれるのは主に長井先生だ。
たまに他の人も来るけど、一回一回別の人が来る。
「つきましては我が弟を若の近習として取り立てていただけないかと」
「うーん…」
別に今困ってないんだよな。
まぁそれは俺の話か。
長井先生はワンオペで大変か。
お願いしようかな、でもなぁ。
「良いではありませんか」
この声は…
「隼人佐」
「周りに信頼を置けるものをおくことも大切ですよ、若」
長井隼人佐殿はうちの父上の異母兄だ。
男兄弟のいない俺を気遣っての言葉だろう。
「じゃあ…お願いしようかな」
「は、ありがたき幸せ」
うんうん。
これから仲良くなれたらいいな。
「小兵衛、将棋はできる?」
「はい、兄ほどの腕はありませぬが多少なら」
「よし、手加減なしでね」
小兵衛と半兵衛は将棋を取りに一旦部屋を出てった。
「そういえば隼人佐はなぜこちらに?」
「あぁ」
隼人佐はこちらに近づきながら答えてくれた。
「殿にお目通り願いたいと思いまして」
「父上に?」
何の話だろう。
政…政治についてかな。
それともまた大殿と父上が喧嘩したのかな。
「それでは若、失礼いたします」
「はい、また」
そう言うと隼人佐は静かに立ち上がって、廊下の奥に消えていった。




