長井先生といっしょ!!
「若君ー!どこにおられるのですか!」
遠くから俺に呼びかける声がする。
近くに来てようやく、馬に乗っているうちの教育係、長井衛安先生だと気づいた。
「ほれ、迎えが来たぞ」
「三郎殿」
「それでは儂は行くでな。また会えるのを楽しみにしておるぞ」
そう言うと三郎殿は背を向けて走り始めた。
と思ったら振り返って、
「あとこれからは儂のことは上総介と呼べ」
と言った。
「上総介?」
「三郎殿は…あまり落ち着かぬ」
…
上総介ってお前かい!!
ようやく長年の謎が解けたわい。
それだけ言うと三郎殿…改め上総介殿は走り去って行った。
「若君~?」
ひえ。
いつの間にか近くに長井先生がいた。
青筋を立ててずいぶんご立腹なようである。
まぁ原因は十中八九俺なんだけど。
「何故このような所に?後あの走り去った男は誰です?」
「い、いや~、う~ん…」
「目が泳いでおりますよ」
やべ。
しばらく俺をじーっと見た後、先生は諦めたように深いため息をついた。
「まぁいいです。話は城に帰ってからにしましょう」
その後俺が馬に乗るか、長井先生が乗るかでひと悶着あり、結局二人で乗ることになった。
城に戻る途中、話題は幼馴染二人に移った。
「まさか治兵衛と彦丸がもう元服だなんてね」
「時の流れは早うございますな」
しみじみと先生は言う。
なんだかんだ面倒見ていたのは三年くらいだけど濃い三年だったもんな。
そりゃあしみじみとするか。
「懐かしいですな。若君と一緒になって城のありとあらゆる場所に稽古から逃げていた二人が、今やもう武士として奉公しているのですから」
すみませんでした。
長井先生は笑顔のままである。
それがなおさら怖い。
「若君は寂しゅうございませぬか?」
「寂しいよ。俺友達あの二人しかいないもん」
そう言うと先生は軽く笑って
「そうですか、友ですか」
とぽつりと言った。
「なんだよ」
「いえいえ…すみませぬ」
笑ったまま先生はこちらに軽く頭を下げた。
まぁ俺の後ろに座ってるからあまり見えないんだけど。
「そろそろ城につきますよ」
その瞬間視界が開け、城とその城下町が見えた。
「若君」
「ん?」
城を見つめたまま、長井先生は言った。
「一門の皆様、友、家来…誰でも良いです。家の者は大切になさってください」
「…いずれ必ずや貴方様の力となります」
振り向くと先生の顔はとても真剣だった。
それと同時に見たことないようなとても寂しそうな顔だった。
「分かった。まず最初は先生のことを大切にします」
「はは、大切にしてください」
そう言って先生は馬の速度を上げた。
「あの男については殿に聞いてもらいましょうか」
「お願いやめて」




