某うつけ者との再会
「どうしたもんかね」
今俺は美濃と尾張の国境にいます。
仲良し二人が元服して以来、一人行動が増えている。
その度に父上や長井先生に怒られているけど。
だってしょうがないじゃない。
大体のお付きの人は「若、危のうございます!」しか言わないんだもん。
二人も言ってはいたけど、なんだかんだノリは良かったし。
二人とはなかなか会えていない。
正確に言うとあの大殿VS父上以来、一回しか会っていない。
その時は慣れない仕事にげんなりしていたけど。
頬を滑る風が気持ちいい。
一人で国境まで来たのは初めてだ。
いつもそこまで行く程のやる気が起きないか、たどり着くまでに追いかけてくる父上の家臣に捕まってしまうから。
「ゔーん」
「何をしておる」
うわっ!!
びっくりした!!
そこには見覚えのある男がいた。
高い鼻、涼やかな目元。
一見スッキリとした顔に見えるが本人の性格からか、どこか野性味がある。
「のぶ…三郎殿!?」
「ん?お主どこかで…」
覚えていないんかい。
「斎藤新九郎利尚が嫡男、喜太郎にございます」
三郎殿はんー?と首を傾げた後、ふと思い出したように
「あぁマムシの孫か」
と言った。
人の名前を全く覚えられない俺が言うのは違うけど、覚えていようよ!
俺が言うことではないけど!
「まだ御父上と道三殿は仲違いしたままなのか?」
おっとここで約三年ぶりのパーソナルスペース侵略。
「…」
「なんだ答えぬのか」
ニヤニヤと。
うーん、なかなか嫌な奴。
「…答える義理はございませぬ」
半兵衛がまだ治兵衛だった時に注意されたな。
家の情報をペラペラ喋るなとか。
威嚇する意味合いで顔を顰めてみたけど、効果はあまりないようだ。
というか、ニヤニヤしたまんまである。
くぅ~腹立つ~
「まぁ何となく察しはつくがな」
「…そうにございますか?」
「まぁな…このままでは恐らく、戦になるぞ」
戦。戦ねぇ。
実感わかないなぁ。
「なんじゃお主。他人事のような顔をして」
ふと城の方向を振り向いた俺に対して三郎殿は言った。
「いえ…戦になるのですか?」
「なる」
「間違いなく?」
「間違いなく、なる」
いつの間にか笑みを消した三郎殿は断言する。
そんなに?
「お主納得していなさそうじゃな」
あ、不機嫌になった。
面倒くさいな。
「親子喧嘩は嫌か」
嫌に決まってんだろ。
「でもな喜太郎。戦乱の世ではその様な甘い考えは捨てろ」
「身内でも殺す。武士に生まれたからにはその覚悟を持たねば」
三郎殿は尾張を眺めながら言い聞かせるように言った。
俺には未だに理解できない。
大切なものや信念のためにだとしても人を殺す事が。
「…三郎殿、私には人を殺せる気がしません」
「甘いのは分かっていますが…」
見上げた三郎殿の顔はまたニヤニヤしていた。
人が大事な相談している時に!
「大丈夫じゃ。お主はかのマムシの孫」
人に噛みつくことも造作なくできるようになるわい。
それは励ましているの?
馬鹿にしてるの?
微妙なラインだな。




