面倒くさいおじいちゃん
「岩手半兵衛重虎にございます」
「桑原六郎直重にございます!」
時は流れ、父上が家督をついでから一年半である。
元服した二人が挨拶に来てくれた。
上から治兵衛、彦丸である。
「じゃあ、これからは半兵衛と六郎?」
「そうなります!」
なるほど。
治兵衛が半兵衛、彦丸は六郎、治兵衛が半兵衛、彦丸は六郎…
…
絶対いつか間違える。
「奉公は?もう始まったの?」
「いえ、明日から始まるようです」
二人とも心なしか顔つきがしっかりしてきたように見える。
うーんこれが大人か。
「若、これからはどうされるんですか?」
ん?
「これまでは我々と共に甲斐守殿、長井先生に教えを受けていたではありませんか」
「これからはお一人で?」
うっ、辞めてよ六郎。
それは俺に刺さる。
「そうだよ一人だよ何か悪いか」
「いえ、そんなことは…」
いいもん!長井先生に付きっきりで教えてもらうもん!
「若君」
お付きの人がふと声をかけてきた。
「どうしました?」
「…入道様がお見えです」
おじいちゃんが?
「入るぞ喜太郎」
楽しそうなおじいちゃんが顔を出す。
うわ嫌な予感するな。
ろくでもない事が起きそう。
「息災か」
「はい、入道様もお変わりなく」
チラッと横を見ると、じへ…じゃなかった半兵衛と六郎は深々と頭を下げていた。
まぁでしょうね。
俺の隣に大殿がおいしょっと腰を下す。
そして俺の顔をじーっと見てきた。
何々怖い。穴が空きそう。
「…やっぱりよう似ておる」
「……何ですか」
「いや」
なんだよ。
気になるじゃん。
「最近新九郎から嫌われていてのぅ」
父上から?
今更?
気づくの遅くないか。
「どうやら儂が政に口を出してくるのが気に食わないそうだ」
嫌われているの自覚した割には楽しそうだな。
ニヤニヤしている。怖い。
「どうすれば良いと思う?」
「…もう少し気を遣って差し上げれば良いのでは」
そんぐらいしかないだろ。
そしたら諸悪の根源はふむと行った後、こちらを見て不思議そうに
「なぜ儂が倅に気を遣わねばならないのだ」
とか言いやがった。
何だこの人。
思わず顔に出てしまった。
なんだその顔は…と言った後、おじいちゃんは急にごろんと寝転がった。
「入道殿?」
「うるさい」
…
ふとこちらを見ている気配がした。
半兵衛だった。
帰っていいですか?と顔が聞いてきた。
六郎は魂抜けたような顔をしていた。
確かにここに二人を引き留めるのは可哀想だ。
そう思って声をかけようとした瞬間。
「あ、あのぅ…」
お付きの人が顔を青くして声をかけてきた。
只事ではなさそうである。
「…大丈夫ですか?」
「私は大丈夫ですが…その…」
「殿が、御父上が…お見えです」
…
何たるバッドタイミング。
六郎というのは捏造です。




