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おめでたいぜ家督相続

1554年(天文23年)です


パワハラ…織田三郎信長殿とお寺で会ってから早一年。


俺は七歳、現代風に言うと小学一年生になる頃だ。


「兄上!」


こちらは年子の妹の貞ちゃん。

だいぶ話せるようになった。


「お貞、茶の稽古はどうした」


「抜け出してまいりました!」


えぇ…アグレッシブな…


「なぜあのような苦い物を殿方はお好きなのか、貞には分りませぬ」


「まぁ分からなくは…」


「礼儀のようなものですよ、姫君」


治兵衛、十一歳。


「早くしろ、のろま」


「うるさい治兵衛、次の一手を考えているのだ」


彦丸、十歳。


相変わらずである。


「そんなことより兄上」


ん?


「また城の外に出られたのでしょう?私も連れていってください!」


またかこの子。


「何回も申しておりますが姫君、それはできませぬ」


「うおっ」


いつの間にか治兵衛がとなりから来て言う。


振り返ると将棋にてボッコボコにやられた彦丸が。

可哀想に。


「何故ですか治兵衛、兄上のことは許しているのになんで私だけ」


「若でさえ私は良いとは思っていません。ましてや姫君が…」


あ、俺もダメなんだ。


「兄上、お許しいただけませんか?」


治兵衛を無視して貞ちゃんがこっちに顔を向ける。


うーん、我が妹ながらなかなか可愛い。

こりゃ将来が楽しみだ。


ニコニコしていると、引き攣った顔の治兵衛が声をかけた。


「若を巻き込まないでください」


なんか青筋立ってない?

えっキレてる?


「…」


「…」


両者が睨み合う。

二人ともキツめの美人なので迫力がある。


「若君、姫」


ん?


「若殿がお見えです」


「若殿が?」


おぉ彦丸が生き返った。


間もなく父上が入ってきた。


いつになく上機嫌である。

見たことないこんなお父ちゃん。


これはまたおじいちゃん関係か?


「んふふ喜太郎、貞」


もはや怖い。

ニッコニコである。


「どうされたのですか父上」


なんだろう。


「ついに殿が家督を私に譲ってくれるそうだ」


え!


「おめでとうございます!」


彦丸と治兵衛が俺より先に反応する。


譲ってくれたんだ。

あのおじいちゃん一生現役みたいな感じかと。


「うお」


ふと父上が俺を持ち上げ、抱きしめる。


「喜太郎、これからは私が美濃の長じゃ。そしてその次は…」


ちょ、お父ちゃん苦しい。


「お前となるのぉ」


「…おめでとうございます父上」


とりあえずめでたい。

だって父上が殿と仲直りしたようなもんでしょ?


この二人絶対仲直りできないと思ってたわ。

いや~良かった。


「父上、私もお忘れなきように!」


「おお、貞」


父上が貞ちゃんをもう片っぽの腕で持ち上げる。

強くね?


「これからはますます忙しくなりますな、若殿」


うんうん……誰?


「あぁ喜太郎と貞は会うたことなかったか」


「日根野五郎左衛門弘就と申します」


優しそうではあるがだいぶ年上だ。

四十代とみた。


「日根野殿…」


「日根野とお呼びください」


イヤイヤ。

無理だよめっちゃ年上だよ。

今まであったことある大人、両親と乳母さんと衛安先生くらいだもん。


「日根野……殿」


「若君…」


すいません少し時間をください。


「日根野!」


「はい、姫君」


すげえな貞ちゃん。

さすが戦国生まれ、戦国育ち。


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