↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーデルハイトはお家に帰る(2026年9月26日完結予定)  作者: ariya


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/33

006 家庭教師の仕事


 アデルはクリフをまた引き取りたいと思ったが、彼は立派に牧犬として活躍している。


(少し寂しいけど、ヨゼフに任せた方がいいわね)


 自宅に帰った後、アデルは早速家の中を片付けた。

 小屋は立派な作りであり、まだ使えそうである。

 このまま誰も使われないようであれば若い夫婦の為に改築する予定だったと聞かされた。


 自分が使っていたベッドはまだ使える。

 藁を綺麗にしきつめて、購入したばかりの真新しいシーツで被せた。

 綿をつめた布団や毛布があるので夜も暖かく眠れそうだ。


 翌朝、アデルはさらに小屋の中を綺麗にした。

 前日は寝室を優先的に掃除したが、今度はリビングの方。

 暖炉に関しては1年前まで使用されていたというので、村で掃除の道具を借りれば自分でできそうだ。


 今できる掃除を全て終わらせて、アデルは村の方へとでかけた。

 村に行くとあっという間に噂になり注目の的になっていた。

 行く場所行く場所で質問責めに遭い少し困る。


「まぁ、伯爵と離婚したって本当かい。もったいないねぇ」

「勝手に人買いのようにアデルを連れて行ったあの爺は信用できなかった。帰ってきて正解だ」


「アデル?」


 何度か会話をしているうちに仕事へ行く途中のヴィムの母親に出会えた。


 男手ひとつでアデルを育てていた祖父に対して色々と助言をして手助けしてくれた。


 アデルにとっては優しい母親のような存在であった。

 アデルは嬉しくなり彼女としばらく話した。


「びっくりしたわ。ヴィムがアルフォス団だなんて」


 話の内容はヴィムの最近である。

 ヴィムは害獣討伐で出かけており留守にしているという。


「そのうち帰ってくるよ。今日は私の家で食事をとりなよ」


 他愛もない会話が続き、すっかり時間が過ぎてしまった。


 アデルは予定より遅くに学校へたどり着いた。

 昔アデルも通っていた学校だ。

 当時の教師は引退しており、別の新しい教師がやっている。


 色んなところが変わり、8年の重さを思い知った。


「勉強の手伝いをしてくれるのはありがたいですが、アデルさんに見合うお給料を出せないと思います」


 教師は困ったように頭を抱えた。

 免許のないアデルを雇うにしても非常勤としてであり、大した給料は出せない。

 免許をとるには都市の教師養成学校に通い、試験を受けなければならない。


 思い出したように教師は手を叩き、提案した。


「将来的に免許をとるとして、それまでの間に家庭教師の仕事をするのはどうだろう」


 町から2時間歩いたクオン町にギルドの管理人、ジーク男爵の館がある。

 立派な館で幼い頃は憧れたものだ。


 ジーク男爵家に14歳の女の子がおり、丁度礼儀作法を教える教師を探しているという。

 できれば貴族とやりとりするのに問題ない教養・作法が欲しい。


「元伯爵夫人だったあなたであれば、これ以上いい人材はないだろう。早速聞いてみるよ」

「お願いします」


 山羊を購入してそれで生計立てるのも良いが、血を吐くほど努力したあの8年を思い出す。

 無駄にはしたくなかった。


 教師がジーク男爵にアデルのことを話した翌朝、ジーク男爵家から迎えが来た。

 早速家庭教師の仕事を始めて欲しいと請われた。


 交通はクオン町にも汽車の停車駅があるので汽車を使う予定である。

 汽車の時刻に間に合わなければ泊めてくれる。もしくは馬を貸してくれるとまで言ってくれた。


 クオン町はブラン町より大きく栄えている商業施設であった。

 魔物・害獣討伐の仕事、武器の売買、珍しい商品の仕入れを生業にしているという。戦争のときは傭兵の斡旋もしていたという。


(確か、アルフォス団の施設があったわね)


 馬車から窓の外を見ると冒険者を見かけた。

 アルフォス団だけでは人手不足の場合は冒険者にも依頼している。


(そのギルドの管理をしているのがジーク男爵家)


 ジーク家の館へとたどり着くと、娘のマーシャを紹介された。

 アデルの教え子になる少女だ。

 可愛らしいふわふわした金髪の少女で、天使のようだ。


「あなたが離婚された元シンデレラね」


 皮肉をこめて言われた言葉にアデルは苦笑いした。

 だが、この程度可愛いものである。

 貴族令嬢らの嘲笑を数年耐えたアデルにとっては痛くない。


「そうよ。シンデレラ先生と呼んでもいいのよ」


 返しにマーシャは少し不満そうに頬を膨らませた。

 怒り睨みつけてくるのを期待していたようだ。それで追い出してやろうと思っていたのか、試すような視線が窺えた。


(わかりやすくて可愛いわね)


 はじめは簡単な礼儀作法を教えてみる。

 マーシャは今まで甘やかされて育った為、特に礼儀を身に着けていなかった。


 14歳となればもうすぐ社交界デビューも考えられる頃だ。

 ジーク男爵は娘の現状に慌てて家庭教師を募集したそうだ。


「仕事ばかりにかまけて、妻もおらず、使用人任せにすると皆に甘やかされて現代にいたります。娘の将来の為多少厳しくともよいので是非教育をお願いします」


 デビューは3か月後という。

 そこでマーシャの社交界での位置が決まってしまう。


 アデルでも礼儀作法を覚えたのは10歳の頃である。

 既に所作が固定化してしまったマーシャの矯正は難航を極めるだろう。

 マーシャが聞き分けよく教師の言うことを聞けばいいのだが、現在14歳、思春期真っただ中だ。

 

 アデルが来るまでの間3人の家庭教師がいたが、3人とも匙を投げてしまった。

 つい2週間前に3人目が皮肉を吐き捨て去っていったという。


 アデルは頭を抱えた。


 この少女を変えられなければ、自分もここで終わる。

 何とかマーシャの心を開かせないと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。