↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーデルハイトはお家に帰る(2026年9月26日完結予定)  作者: ariya


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/34

018 ローゼンバルト夫妻


 ダンスの曲が流れる中、アデルはクラウスのエスコートのもと再びパーティー会場に現れた。


 先ほど退場した令嬢が見事なドレスを身に着け、貴人にエスコートされている。

 当然参加者たちはざわついた。

 

「ロッシュ辺境伯」

 

 クラウスはまっすぐとパーティーの主催者の元へ近づいた。

 

「突然の私の急な願いを聞いてくださり感謝します」

「いやいや、ローゼンバルト伯爵に一度は会いたいと思っていたところだ」

 

「ローゼンバルト伯爵、夫人。お会いできて光栄です」

 

 ロッシュ辺境伯とその令嬢ヨハンナは快くアデルたちを迎え入れた。

 

「先ほどはとんだ災難でした。ですが、あなたの新しい姿を見られて逆に良かったかもしれませんわ」

 

 ヨハンナは皮肉をこめてアデルを褒めたたえた。

 皮肉はもちろんアデルに恥をかかせた令嬢に対してである。


「……うぅ」


 エミリアは顔を真っ赤にして会場から姿を消した。自分の旗色が悪いと瞬時に察したのだ。


(こういうところは聡いのよね)


 エミリアの後ろ姿を見つめてアデルはため息をついた。

  

 曲が変わり、クラウスはアデルを引っ張ってダンスの輪へと入っていく。

 ジーク男爵家でクラウスと踊った曲である。

 

「踊ると言っていないのに」

 

 強引なクラウスにアデルはじっと睨みつける。

 

 先ほどよりステップの激しい曲で、参加しているのは自信のある者たちだけである。

 人々は踊る三組を、特にローゼンバルト伯爵夫妻へ視線を向けた。

 

「仲が悪いと聞いたが、とんだサプライズ参加だな」

「素敵なドレスだわ。伯爵が夫人の為に用意したと聞きました」

 

 アデルの惨めな噂は一掃されていった。

 

 しかし、アデルはそれに気づく余裕がない。


 ただでさえ疲れてしまった中でこのダンスはきつい。クラウスに追いつくので必死だった。

 

(あともう少し、もう少しで終わるから耐えるのよ……)

 

 覚えている自分の足に語り掛けて懸命に踊り続けた。



 ぐしゃ



 アデルは体制を崩し、倒れそうになる。すっと血の気が引く。


(終わった)

 

 アデルは床に膝をつくことがなく、気づけばクラウスに抱き上げられていた。

 両の腿あたりを大事に抱きかかえられクラウスは曲に合わせてくるくると回る。

 

 アデルの体重を支えながら大した体力である。

 

 曲の終わりと同時にクラウスはすとんとアデルを下ろし、アデルはクラウスに支えられる形で立った。

 

「ご、ごめんなさい」

 

 拍手の中アデルはクラウスに謝った。

 

「謝る必要はない。パートナーをフォローするのが私の役割なのだから。お前は今までよく頑張ったよ」

 

 その言葉にアデルは胸が熱くなった。

 伯爵家にやってきてからクラウスから一度も褒められたことがなく認められないこと感じていた。

 

 今クラウスからその言葉をもらえるとは思わなかった。

 2年間ずっと求めていた言葉、もう必要ないと思った今になって何故もらえるのだ。


 もう今更すぎる。遅すぎる。


 そう口にしたかったが、自然と何もでてこない。ただアデルの瞼が熱くなり、大粒の涙が零れ落ちた。


 クラウスはアデルを再び抱き掲げ、ダンスホールから離れた。

 去り際にロッシュ辺境伯令嬢がいたのでクラウスは声をかけた。

 

「レディ・ヨハンナ。王都でお会いできるのを楽しみにしております」


 ロッシュ辺境伯令嬢は温かい眼差しを二人に向けた。

 

「ええ、王都に行った際は是非お二人と、特に夫人とゆっくり話がしたいわ」

 

 クラウスはアデルを抱きかかえたままパーティー会場を後にした。

 

 アデルは誰にも涙をみせたくなくクラウスの肩に額を押し付けて声を押し殺していた。

 クラウスの衣装が涙と化粧で汚れてしまうが、今はそんなことどうでもいい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。