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和風異世界いかがですか  作者: 真打
第十八章 蘇りの乱
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18.35.共闘!


 人間は異骨を止めに向かわせ、異形たちだけでナテガへと向かっていた。

 旅籠はその先陣を切っており他の異形たちもこれに追従している。


 早瀬と鍵城たちが異骨の対処法を教えてくれたのだ。

 人であれば対処ができる。

 あれを止めてくれたのであれば、こちらはナテガに集中することができる。


「急ぐぞ! 氷進頼んだ!」

「お任せを! 雪傀儡たち道を作れ!!」


 素早く前に出た雪傀儡が氷の道を作っていく。

 それに乗って雪傀儡の補助を受けながら全員でナテガへと近づいた。


 到着した時にはナテガは立ち上がっており、私たちは怒泥が拳を構えて待つ傍まで来た。

 流石に深追いはしなかったらしく敵の一手を警戒しているようだ。


「おおーーーー! 旅籠様あ~!」

「え? え、誰!? って黒い直刀……」

「こっちですよこっち! 布伝です!」

「布伝んんんん!!? いやかっこいいな!?」

「ですかねえ!」


 人の姿になり、尚且つ話せるようになったのが嬉しかったのか布伝は楽しそうにしていた。

 布伝を象徴する布は枚数を減らしてしまったようだが、その異術は今も少し生きているらしい。

 とはいえ布を得れば体力を回復するという異能は無くなった。

 そこだけは注意しなければならない、と笑いながら教えてくれる。


「おいおい~! 楽しそうに話してる場合じゃないぞ~! 早くあれ何とかしないと!!」

「照の言う通りだぜ旅籠異形軍! そろそろ本気出してくる頃だろうよ!」

「んまそりゃそうか。おいガガニィ! 磯丸の異術はいつ更新されるんだ!」

「あと少し待てい!」


 制限のある異術を再現させたので時間が経てばリセットされることは分かっていた。

 その塩梅はガガニにしか分からないようなので聞いてみたが、意外とはやくリセットがかかるらしい。

 そう長い間同じ異術を再現し続けるのは不可能だろうし、磯丸の異術がリセットされればこちらの勝機が更に濃くなる。

 その前に倒してしまっても問題はないのだが。


 怒泥は懐に手を置いた。

 その中ではキュラキュラと声を発している薄玉がいるのだが、彼は薄玉を小さな声で叱る。


「静かにしていろ! お前が出る幕はもうしばし後だ! 周りを喰らうお前の異術は使い時が難しいんだっつの!」

「キュラ~……」


 コロコロと転がってしょぼくれる薄玉。

 異術がナテガに有効な今、その使い時は間違えてはならない。


 するとナテガに動きがあった。

 大きな腕で顔を拭った後、歯を食いしばりながら地面に手を押さえ続けている。

 地震でも起こすつもりなのかと思ったがどうやら違うらしい。

 よく目を凝らして何をしているのか観察していると……先ほど怒泥に殴られた傷が次第に消えていることが分かった。


「ッ! あいつ回復しているぞ!」

「んなにぃ!?」

「となればやることは決まりましたねえ! こっちは先に向かいます!」

「任せたぞ布伝!」

「ったくやってやろうじゃねえか! 合わせろ照!!」

「分かった~!」


 怒泥、照、布伝が前に出た。

 魔蛇は印を組んで何か準備をしているらしく、未だ動く気配はない。


「壱成!」

「分かっておりまする! 異傀儡共! 奴の動きを止めるぞ!」

『『ロウッ!』』


 異傀儡衆たちは怒泥たち主戦力の援護だ。

 ナテガが怪力を有していることは土丹からの情報共有で既に把握している。

 それに一応異形の神だ。

 令月の異術によってどこまで弱体化したかはわからないが……少し不安なところもある。


 彼女の異術が何時まで続くか。


 ナテガも自分の力が消えたことには気づいているはずだ。

 それを放置して戦うようなことはしないだろう。

 だが今の状況で幾らか把握していることはある。


 まず攻撃が通る。

 これは間違いなく令月の異術によるものでナテガの無敵能力を削除したのだろう。

 異形を生み出した神が異形に殺されるなどあっていいはずもないのだから、これは間違っていないはず。


 次に帰還だ。

 ナテガは己が無敵だと思ってこの地に降りてきたはずであり、確実に勝てると高を括っていたはずだ。

 しかし攻撃が通り、彼は焦っている。

 だというのに来た場所から戻らないというのはいささか疑問が残る。

 戻らないのではなく戻れない。

 これも令月の異術によるものだろう。


 このどちらかが修復されてしまったら……恐らくだが自分たちの負けだ。


「その前に殺す」

「旅籠様、なりません」

「え!?」


 体に力を込めて中に居る皆の力を借りようとしたその時、魔蛇に止められる。


「なんで!?」

「旅籠様のお力は己の身を削ります。それを簡単に使ってはなりません」

「だが今やらなければナテガの力が何時復活するか……」

「時間を下され。わしが今練っているのは強力な治癒異術。これが完成したならば……一度だけあの重傷を癒せますぞ」

「……わかった」


 前に出たい気持ちをぐっと堪え、こればかりは魔蛇に従う事とする。

 以前は主魂が己の中に居たのですぐに回復することができたが、今は既に分離していて傍にいないのだ。

 不落城に置いて来た彼らは大丈夫だろうか、と若干不安になりながらも目の前の戦況に目を向けることにした。


「「て〜るて〜るぼ〜うず〜て〜るぼうず〜!」」

『!』


 いつの間にか二体に分裂した照が歌い始める。

 だが流石に照の異術は既に把握されていた。

 ナテガはすぐさま地面を掴んで土の塊を作り、これを思い切り投擲する。

 二体の照は弾丸を受けたかのように顔面が弾かれて地面に落下した。


 この余波は異傀儡衆にも届いたらしく、多くの異傀儡たちがやられて完全に足止めを喰らう形となってしまう。


「チィ!」

「なんという怪力……。怒泥よ、あの腕には注意せねばならんぞ!」

「分かっとるわい!」


 照は分身だという事が分かっているので怒泥は構わず前に突き進む。

 それに布伝も続くのだが、途中で怒泥の腕に布を巻きつけた。


「!?」

「こっちを投げ飛ばせ!」

「いいだろう!」


 ぐっと力を入れて布をぴんと張る。

 重さの乗ったそれを怒泥は思い切り振り回して投擲すると、布伝が一気にナテガへと近づいた。


『布……! 布王玉か!』

「こっちの異術を知ってんのか! まぁ異形の神だっけか? だったら知っていてもおかしかねえかあ~!! おら死ねえ!!!!」


 ナテガが大きな腕を振るってきたが、布伝がそれに布を巻きつけて己の体をぐいっとずらして回避した。

 そのままナテガへと接近して直刀を全力で振るう。


 ズバシッ!!

 巨大すぎる腕は超近距離では何もできない。

 布伝は懐へと入った瞬間ナテガの肩を切り裂いて腕を斬り落とした。


「こっちの異術は布王玉・魂だ。神が間違えんじゃねえよ!」

『なん……!?』


 布伝の布は自在に操れる。

 もう一つの腕、もしくは脚と言っても差し支えはないだろう。

 そして人の姿に戻ったことで異形としての力が更に凝縮され、何でも斬ってしまうほどの力と鋭さを有した。

 今であれば怒泥の結晶すらも斬ってしまいかねない気迫だった。


 ぐいっ。


「……お?」


 布伝の体から伸びている一つの布が引っ張られた。

 いつの間にかナテガが残っている腕でその布を掴んでおり、思い切り引っ張って布伝を宙へと舞い上げる。

 このままでは地面に叩きつけられかねない。


「おおおおおおおおおおおおおおお!!?」

「布伝!!」

「世話の焼ける!」


 怒泥が腕を回せば鋭利な結晶が腕から零れ落ちた。

 それを軽く投げてバッティングの要領で打ち出せば、結晶が粉々になってナテガの腕へと飛んでいく。

 粉々になった鋭利な結晶はナテガの持っている布伝の布に当たり、幾らかの小さな穴を作った。

 凄まじい勢いで振り回されているので、布伝の布はその小さな穴を起点にしてビリビリと破れてしまう。


 これによって何とか解放されたが振り回された勢いは衰えていない。

 頭から地面に叩きつけられたように見えた布伝だったが腕に布を巻いて異形の時の力を再現したようで、地面に刀を突き刺して逆立ちのまま静止していた。

 残った布で地面を先に触れていたようで威力を最大限にまで落とす事が出来ていたらしい。


「ふぅ! っぶねえ!」

『チッ!!』


 千切れた布は瞬く間に再生した。

 あの異術は強いが、布を相手に取られると利用されるという弱点があるらしい。

 それに気づいたからか布伝は一つを除いて布を腕や脚に巻き付けた。

 即興の改善策だがしないよりかはましだろう。


「ガガニ! まだか!」

「もうちっと(少し)だ!」

「照はどうした!」

「分身作るに時間がいんのじゃ! 本体も距離離れよっけえのお!」

「魔蛇さんは!」

「今しばらくお待ちくだされ……!」


 どちらもまだ時間がかかる。

 戦況が変わるこの盤面では少しの時間でも惜しい。

 焦ってはいけないことは分かっているが、ナテガが回復する前に仕留めなければ本当にマズい状況なのだ。


「そこの布ー! まだいけるなあ!!?」

「こっちは布伝だ!! 無論!!」


 二人はナテガを挟みながら大きな声で会話を行った。

 各々の武器を構えて次の一手を打とうとするのだが、両者共に小さな疑問を抱き始めていた。


((弱すぎる))


 あの怪力は確かに脅威だ。

 令月の異術によって力を削がれたという事もあるのだろうが、それにしても弱すぎる。

 現在のナテガの弱点は超接近戦。

 巨大な腕を満足に操れない位置で戦えば相手は何もできない。


 加えて肩を切り飛ばした時も抵抗感がそこまでなかった。

 手ごたえは確かにあるし、ナテガの表情を見てもあれが本物の腕であることは間違いない。

 間違いないのだが……違和感が拭えなかった。


『……そろそろ、返してもらおうか』

「なに? 何言ってんだお前」

『お前じゃねえよ』


 眼球のない双眸に、湾曲した三日月の様な黒い口。

 神と形容するにはあまりにも禍々しい気配にその顔を見た怒泥は怖気を感じた。


 ナテガが片腕を再生させて手を伸ばす。

 その腕は普通の人間サイズの物だった。

 彼が手を向けている先は……旅籠と、常治。


「うっ!?」

「……!? 旅籠様!?」


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