18.34.殲滅開始
「まぁ詳しい話はあとよ! ほれ、ここには数名でしか来ておらん! はよう継ぎ目の子に不落城で待つ増援を持ってこさせい!」
『主魂! 人間も説き伏せたのか!』
『左様。あの保守的な城主もようやっと重い腰を上げたわ』
「でかしたぞ主魂!」
落水はすぐさま走り出して月芽の元へと向かう。
あとは彼が話を通して増援を持ってきてくれることだろう。
ここでの人間の増援は非常にありがたい。
人でなければ敵を倒すことができないことを主魂たちに伝えると、団三郎が木夢から降りて来る。
「ほぉ、面妖だな!」
「妖怪が言うなよ」
「はっは! そりゃそうじゃの! となると妖は役に立たぬか」
「今は……妖も味方なのか?」
若干不安気に津留が問う。
人が今まで戦い続けてきたのは異形ではなく妖怪の方だ。
妖怪への恐怖心の方がまだ彼らは勝っているのかもしれない。
すると団三郎狸が腕を組みながら頷いた。
「左様。そも人が好かんなら人の格好などしておるものか。ふむ、少し話をまとめておくかの?」
団三郎狸はコホンコホンと軽く咳払いをする。
懐から取り出した煙管を指の中で遊ばせてから口に運んだ。
「妖共の真の目的は人間を異形へと近づけぬようにすることじゃ。故に人の住まう地と異形の住まう地を分断させ、その間に我ら妖が鎮座した。何故近づけぬようにしたかはもうわかっておろう?」
「異形を育てないため、だったか」
照から聞いた話を簡単に要約した早瀬に、団三郎狸は満足げに頷いた。
「そうじゃ。こんな貧乏くじなど引きとうなかったわい! まあ、それも今日で終わりつうことじゃな。妖は人間を、異形を押さえる必要がなくなった! いやぁ~肩の荷が下りたわい! そんじゃあ……」
団三郎狸は指を鳴らし、気合を入れる。
それと同時に地面に長い継ぎ接ぎが伸びた。
継ぎ接ぎが開くと、そこからは妖怪と人間が大人数出てくる。
吹き飛ばされていた異骨もようやく復帰してきたが、人数差を覆されていることに気づいて若干たじろいだ。
あんなのでも意思はあるのか、と思いながら全員が今一度異骨へと向き直る。
「はっはっは久しぶりだな団三郎!」
「またお前の顔を見られるとは思っていなかったよ常治」
「僕もいるぞ~」
「立派な九尾の姿はどこに行ったんだい?」
「うるせえ!」
継ぎ目移動でやって来た常治は、他四名も引き連れていたようだ。
「皆さん!」
「雪野様! ご無事でしたか!?」
「御代ちゃんも皆も大丈夫そうね! 今はもう皆が味方よ!」
「そのようですね!」
風たちもすぐに何が敵のなのかを見極めて異骨へと刃を向けたようだ。
妖怪たちは団三郎狸の指示によって人の援護に回れと通達しているので、彼らも共に戦いに向かった。
もう指揮を執ることすら必要ない。
それだけの人数差になったのだから。
「早瀬殿、雪野殿。こちらは任せろ」
古緑がそう言った。
てっきり最後までこの場で戦い続けるものだと思っていたので驚いたが、今までの話を聞いて古緑は少し考えたのだ。
彼ら二人がいるべきは、いや必要となる場所はここではない。
間違いなく旅籠がいるところであると。
「君たち二人は旅籠殿の所へ向かえ。彼が相手取っている存在こそ、君たちがここに来た元凶だ。一人に背負わすな。共に背負え」
「「はい!」」
これには二人ともすぐに返事を返した。
古緑は次に月芽へと視線を向ける。
「ここは人と妖怪、そしてヤガニ衆や異傀儡衆たちの力添えで何とかなろう。巫女もおる。旅籠殿に最も近かった君ら異形も向かうといい。最後の戦に共に戦えぬなど、つまらぬからな。そっちのほうが、悔いがない」
「ガコゴロロ!!」
「では、そうさせていただきますかな」
「兄様はここに残ってください!」
「!?」
「水の異術は人を守るのに大変役立ちますので! 案山子夜! 由海! 主魂殿! 木夢! 無形! 雪野様! 早瀬様! 参りますよ!」
名を呼ばれた全員が頷いたところで、足元に伸びた継ぎ接ぎが彼らを回収した。
本当に便利な力だ。
古緑は彼らがなくなったところで敵を視界の中に入れる。
増援に駆け付けた風たちが既に戦いを始めており、黒い粘液は妖怪が吹き飛ばしていた。
あの異形は人でなければ倒せない。
日本刀を握りなおし、一歩前に出たところで全員が同じ向きを向く。
やることは決まっている。
成すべきことも決まっていた。
あとは、やり切るだけだ。
「皆の者!! 奴らを旅籠殿の所へ向かわせるな!! この戦、奴らの殲滅が勝利であるぞ!!」
轟くような声を聞いた全員が一つ『応』と声を上げのだった。




